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04

 とんでもない暴論が飛び出してきたように感じた。思わず口を挟む。


「いくらなんでも、それはないのでは?」


 仮にも『本探し』なのだ。ならばやっぱり目的は、書物そのものにあると考えて然るべきではないか?


 そんな意見を言葉に乗せては見たものの、しかしリニアは困り顔をニヤリと動かして見せる。


「私だってそう思っていたよぉ。だけど実情はどうだい?

 本の内容に興味は無く、加えて基本情報も必要ない。じゃあ本を探してどうしようっていうんだい?

 カフヴィナの意見を聞かせてもらえるかな?」


 ぬ。


 改めて突きつけられた最初の疑問。その存在感を前にして、私は告げる言葉を見失う。


「ほぉら、分からないだろう? 私だって色々考えてはみたんだよ。

 ひょっとして本の装丁を知りたいのかなとか、はたまた重さとかページ数とか、もっとぶっ飛んだところじゃあ、うちの店でその本がどこに置かれているのか……とかさ」


 いや、なんか、それはもう無茶苦茶では?


「だけど、どの考えも今ひとつピンとこないんだよねぇ。だからこそ、興味深い。

 と、言うわけでお嬢さん。改めてお聞きするけれど、とどのつまりは何が目的で、その本を探し出そうと言うんだい?」


 そこまで言い切ったリニアは、質問を向けた先へと身体ごと向き直る。

 私もつられてテーブルに付いたままの彼女に視線を落とす。


 見れば呆けたような顔でじっとリニアを見つめるお嬢様。


 しばらくの沈黙の後、お嬢様が細々とした声を出す。


「す……凄いですわね、何だか良くわかりませんけど……」


 まあそうでしょうね。慣れた私からしても、それは妥当な感想と言えます。


「それで。本探しの目的、教えてもらえるのかな?」


 繰り返し問われ、お嬢様が困惑したように顔を歪める。


「ええと、その。実は……わたくしにも姉の目的が分からなくて……」

「ええぇ!? そんなことが有り得るのかい!?」


 リニアが素っ頓狂な声を上げた。お嬢様が慌てた様子で言いつくろう。


「ほ、本当ですわ! その、姉からの手紙には御本探しに役立つ? か怪しいいくつかの情報と、それから……」

「それから?」


 リニアがお嬢様の掛けた丸テーブルまで駆け寄り、またしても身を乗り出す。


「あひ」


 再会した顔面の圧力に気圧されつつも、しかしお嬢様はしどろもどろに言葉を紡ぐ。


「姉からの手紙には、その本を借りる必要はないことと、それから……」

「それからっ!」


 圧。圧が強いですって。


「ただ探し出せば良いと。見つけ出せたなら伝わるから、とだけ」


 たじたじと搾り出したお嬢様の言葉に、リニアは天を仰ぎながら──


「随分とふざけたお姉さんもいたものだねぇ」


 か細く静かに、そう呟くのだった。








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