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転生した酒呑み、家出して領地をつくる

 子供を食い物にする両親。

そんな恵まれない境遇に産まれても、僕は何とか大人になった。がむしゃらに生きて、なんとかまっとうな社会人になったけど、やっと就職したのはブラック企業。

耐えるために私生活では逃げるように酒に溺れていた。酒が僕の救い。なにより愛していた。


  精いっぱい日々を過ごしていたら、そんな自分を愛してくれるひとに出逢えた。でも、愛していたひとに裏切られて。


…ふと、弁明する相手に嫌気がさして家を出て彷徨って、アパートの近くの川を眺めていた時だった。


ふいに誰かに背中を押されて、浮遊感を感じて、そこから何も覚えてない。


 気がつけば赤ん坊になっていた。

知らない世界に生まれ変わった。アニメ好きの友人に聞いたことのある異世界転生というやつだろうか。

産まれてすぐに三人目の僕を産んだ負担で体の弱かった美しい母は亡くなった。たくさんの人々に愛された人だった。

母に瓜二つだった僕は家族に疎まれた。

僕。

母の容姿を受け継ぎ輝く銀の髪、透き通った菫色の瞳で母を知る人たちに母を思い出させた。

母を愛していた家族は僕を敬遠した。

使用人たちも父や兄たちにならい僕をないがしろにした。このままではまた不幸になるそう思った。

何とかしなければ。また、不幸になる。


僕の名前は、梅ヶ谷真白うめがやましろ

タカマガハラ国クサナギ領、領主、梅ヶ谷侯爵家三男。

今世こそは、幸せになりたい。

三歳で前世の記憶が思い出された時に、神様との出逢いを思い出せた。

『前世で不幸だったそなたに、現世では幸せになれる力を、運命を授けよう。』

「だれ?」

『我はタカマガハラの創造神。』

「かみさま…?」

『そなたの不幸は我が妻のノロイ。せめてもの罪ほろぼしにそなたの守護を我が受けたまろう。』

僕の不幸は神様の奥方様のせいらしい。

よくわからないけど。

でもそれなら。

「僕は引きこもって呑み続けたい。誰にも傷つけられたくいない。」

『そなたは、愛される運命にある。それでも信じられぬなら相応の力を授けよう。』

「でしたら、農業、魔法そして、錬金術の能力が欲しいです。」

『そなたの望むままに。アイテムボックス、創造魔法の能力も授けよう。きっとそなたの役に立つ。』

愛されている、それを忘れるなと神の声を最後に僕の意識は沈んだ。


梅ヶ谷真白、僕の三歳の誕生日。今日も最低限の食事しか与えられなかった。

栄養不足でか僕は意識を失った。

それがきっかけだったのか、僕は前世の記憶を取り戻した。愛した人に裏切られ、何者かに殺された最期を。神との出逢いを。

誰にも愛されない。

生きるために僕はこの家を出なくては。

使用人たちは愛されない僕の養育費を搾取して僕の命の灯火は明日をも知れない。

そこから、僕は動きだした。まずは、成長するため食事の確保。乳母に教えられた最低限の知識で魔法を鍛え、狩りをする。最初は、小さな鳥。そして兎。鹿、猪。魚を釣ったり、山菜、茸の勉強をしたりした。本を読み漁り、錬金術を開花させた。領地でも、魔物の蔓延る打ち捨てられた領主館の裏山に結界をはり錬金術でゴーレムをたくさん創造し、屋敷を建てた。田畑を造り、果樹園を造り、そばで僕の世話をするホムンクルス、沙雪を作成して、六歳の誕生日の少し前に僕は家を出た。誰にも気にされることはなかった。


僕は自由になった。


隠れ家に着いた。快晴、気分は上々。

「屋敷は中央に。畑や田んぼは南側に。東に葡萄棚。西には梅畑。北には何もないけど…。」

囲うように鉄製の柵で囲みこんだ。田畑や果樹園の世話はゴーレムたちがしてくれる。

酒蔵を造ろう。まだまだ未成年で呑めなくても。

成人したら楽しく呑める環境をつくりたい。

ビール、ワイン、ウイスキー、日本酒、焼酎。ラムやジンも好き。カクテルも良いね。

いろんなゴーレムを造って農業や酒造りに従事させた。

幸せになるための僕の新たな人生を自分自身でかたちどりつくっていく。

僕は今世こそ、幸せになるために楽しく生きていくのだ。

「北には酒蔵をつくろう。成人までの楽しみになる!」

自然と満面の笑顔がうかんだ。



梅ヶ谷侯爵サイド


「そろそろ真白も六歳になるな。」

と、侯爵、梅ヶ谷橙也うめがやとうやが言った。

離れで暮らす、末の息子が最愛の妻に瓜二つで見るのが辛かった。でも、愛していることに変わりはない。

「ましろ、このごろみかけません。」

長男のあおい)十歳が言った。

「ましろ…。いない。」

次男の(あや)八歳が言った。

離れに暮らしていたはずの侯爵家三男の気配が感じられないことに家族は気づいていた。

使用人たちは慌てた。愛されていないはずの侯爵家三男を、主人たちが気にしだしたことに。搾取し、いつからいなくなってしまったのかわからない真白のことに必死に嘘を重ねる。

「ぼっちゃまは流行り病で儚くなられ…。」

と、執事が主に伝えると侯爵はおおいに悲しんだ。

「最愛の妻の忘れ形見のあの子が妻に似すぎて目をあわせることもできなかった。」

「ましろ。、かわいい。まま、にてて、おもいだす。つらくて。でも、だいすき。」

兄、碧の言葉に弟の朱もウンウンと頷く。

「何故、危篤になった時、いや、病にかかった時点での報告がなかったのだ。なんとしても、治してやれたかもしれぬのに。」

侯爵が嘆く。

「あの子の遺体は、どこに葬ったのだ。 』

主人たちの気持ちを汲めずに、三男、真白を養育するための費用を着服していた使用人たちは、ただ押し黙ることしかできなかった。

本当は真白は生きて、楽しく生きていこうと隠とん生活を送ろうとしていることにこの時はまだ誰も気がついてはいなかった。

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