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第69話 事態は振り出しへ

「中川さん、私の傷、治してください……!」

奏は一体、悪い夢でも見ているのかというような気分だった。

髪がほどかれていて、血色の悪い顔をしていたから最初はわからなかった。だが、間違いない。彼女は先日銃撃されたという少女、白川小春そのものだ。

「…いやぁ。一発で意識不明になるほどの銃撃治すなんて、無理です。知らなかったですか?『修繕』の才能<ギフト>は、そこまで万能じゃないんです」


中川の能力は、傷を治せると言っても全て完璧に治せるというわけではない。話によれば、彼女はあの銃撃で一発で昏倒したという。今もなお、動けているのが奇跡なくらいだ。

実際、立っているのもやっとなほど、その足取りはフラフラしていた。


「完璧に、治してもらわなくても大丈夫です。せめて…せめて動けるくらいに……」

「っと。あなた相当無理して歩いてたでしょう。悪いことは言わないから、せめて病院に。一体どこの病院に運ばれてるんですか?」

ふと、足を崩した少女が中川の方へと倒れ込む。呼吸が荒く、汗もかいている。こんな状態で放置は出来ない。

「この近くの病院って言ったら、ほぼ中央病院っしょ。あとその様子だと君脱走してきたでしょ?傷と出血で頭もフラフラな状態で。事情があるのはわかるけど、病院戻んないと命が危ないよ?」

「……です。みんなが、危ないんです。もしかしたら、奏さんたちも……」

「それでも無茶はダメだ。そもそも君何で入院したかわかってる?すぐに治療しないと、命だって危ないし、その後の生活も……」


「私見たんです。誰かに……紬さんが襲われるの……!血を流して、紬さん、倒れてました。だから……っ!黙って見てないで、私、行かなきゃ……」

「だからと言って……!」

広夢が何かに気づいたように、その表情を変える。

「広夢さん?」

「いや。悪い、この子の傷、治してやってくれ京太郎。多分ありゃ言っても聞かないタイプだわ」

「はいはい、わかりましたよ。あなたも大概言っても聞きませんからね。はぁ、人の話通じない人だらけで困りますねぇ」

呆れたという調子ではあるものの、中川はそのまま少女…白川小春に才能<ギフト>を使用した。


思っていた以上に、傷は深かった。

中川の力だけでは、それこそ歩くことが可能な程度に治すのが精一杯だった。

だが、それでも彼女は安心したように、中川たちに向けて笑顔を見せた。

「良かった……。これで、動けます」

「とりあえずすぐ病院戻ること。表向き治ったように見せかけただけで、中は全然まだまだ傷だらけなんですから、すぐ戻ってくださいね」

「はい、わかりました」

「走っちゃダメですからね!!!」

すぐに走る構えを取った小春を、慌てて中川が制止するも、彼女は早歩きで病院を目指した。


「……しかしこれで。調査は振り出しですか」

「出来れば現場にいたであろう人達に話だけでも聞きたいんですだけどねぇ」

「というか小春ちゃんに聞けば良かったんじゃないです?」

「……あっ。そういえばそうでした」

「真面目にやりなさい。こんなことをしているから私達の評価は年々落ちていくんです」

「耳が痛いねぇ」


「さて、病院の方まで来たわけだが……。わざわざ待ってくれたとはありがたいね、紬」

「こちらこそ、すぐ来てくれてありがとうございます……!!」

「ああ。ピンチだと聞いてこっちに来たんだが、様子を見ればすぐにわかる。何かあったのか?」

「それがですね……」

紬から華月に告げられたこと。それは、六条鳴海らしき人物に会ったこと。そして、小春が病院からいなくなった事だった。

「はぁ!?いなくなった!?」

「今から、病院の方に事情を聞こうかなと思ったんですけど、六条鳴海がどこに潜んでいるかもわからなくて」

「なるほどな。なら、とりあえず病院の方へ行こうか」


合流した6人は、再び中央病院に向かって歩く。

正直、何度もお世話になりたくはない場所だったが、小春がいなくなったと言われれば確かに緊急事態、ピンチだ。

足の遅かった優芽を出来るだけ置いて行かないように、彼らは急いで走った。のだが。

「はぁっ……ごめん、疲れちゃって……」

普段からそこまで運動をしているわけでもないであろう優芽にとっては、今日これだけ歩き回っただけでも、かなり体力に深刻なダメージが入っていた。

息を切らし歩みを止める優芽に、手を差し伸べる一人の人物がいた。

「じゃオレの背中!運んだげる!!」

「え?そんなことして大丈夫?あたしそんなに体重……」

驚く優芽に、悠希はそれでも気にしないといった様子で、笑いかける。


「安心してくれていい。悠希のバカ力は本物だから。それに、今離脱されると困る。いつ六条鳴海に成り代わられるかわかんないから本当にやめてね」

「『悠希のことは信頼してくれていいよ。今離れて欲しくない』って言ってるね」

「勝手に意訳つけるのやめろって言ったよね」

「いやカズの言い方が伝わりづらいのが悪いっていうかとにかく早く行くよ!!!」

悠希は優芽を背中におぶりながら、それでも普段と変わらない調子で紬たちの後ろを歩いて行った。

「悠希君、だっけ?いい能力持ったよな。それに、それを生かす方法も自分で知ってる。…正直羨ましいよ」

夏生がぼそっと、吐き捨てるように呟いた。


「能力の活かし方など自分でどうとでもなるものだ。僕も役に立たないといえば役に立たない力だしな。いくら無限に再生するといっても、知り合いや友達が僕より先に老けていくのはやはり辛い」

「華月さん、そう言って普段はそういうの気にしないたちじゃないですか」

「気にしないふりくらいいくらでもできる。半世紀近く生きてればな。人間ってのはな、歳をとるごとにそういう感情を自分で何とか鈍麻させて生きてくものなんだ。全部の感情引きずってたら潰れるぞ」

「はぁ、そうですか……」

相変わらず、『半世紀生きている』などと言われると、この外見なのでどうにも全く実感のわかない紬だった。

「(妹さんが、もう母親みたいな見た目してたら、確かにちょっと気持ち悪いかもなぁ……)」

かつて対峙した華月の姉という女性の顔を、紬は脳裏に浮かべていた。

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