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イクス・アイズ~未来が見えるので、すべてを救ってもいいですか?~  作者: 八十浦カイリ
第四章 異能力者たちは踊り狂う
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第109話 全てを知る者

「何、で……?小春が……!?」

倒れ込む少女の姿を見て、紬は改めてあることを思い出す。

自分たちが出会った時の姿である小春が、ここにいるはずがないのだ。


「……んんっ、なんだ……?」

小春の姿をした何者かと、目が合う。確か、名前は。

「えと……六条鳴海、さん。だよね?なんで、この街に来てるの?」

「ああ。悪い……今、痛みで立ち上がれないんだ。支えてくれるか」

鳴海はそのまま紬に肩を貸してもらう形で、そのままゆっくりと立ち上がる。


「出来れば、そっちの男も連れてってもらえるか。気失ってるみたいだけど」

「…その前に連絡だけしてもいい?私、晩御飯買いに行ってるから」

「同居人でもいるのか」

「色々あって小春と華月さん泊めてるから。…というか。あなたたちは流石に泊めてけないから、後で事情説明したら、帰ってもらうからね」

「……そりゃ、そーだわな。オレは紳士なんで、わざわざ期待はしなかったけど」

目を覚ました広夢は、相変わらずの軽口で紬に向けて対応する。

そして紬は二人を一瞥した後、改めて背を向ける。


「いや、流石に男の人泊めてはいけないでしょ」

「……俺に性別とかないけど。というか、こんなに何度も見た目変えてたらもう自分で男だか女だかわかんなくなる」

「えっ、そうなの!!?????」

改めて、この六条鳴海という人物がどういう人間なのか、よくわからなくなった紬であった。

「…そうだ。久遠寺紬」

「どうしたの?」


「お前、まだ新島華月を信用するつもりでいるのか?」

その一言の真意は、紬にはまだわからなかった。


「……で」

「……はい」

戻ってきた紬は、広夢、鳴海と一緒に何故か華月の前に正座をしていた。

「買い出しの割に随分遅いと思ったら、晩御飯の他に人間2人拾ってくるやつがいるとはな」

「私だって拾ってくるつもりはなかったんです」

「何、別に責めるわけじゃないさ。ちょっと予想外のことが起こったもので、皮肉の一つでも言ってやろうと思ってだけさ。何なら正座もせんでいい」

「明らかに歳も立場も上の人間が、『そこに座れ』とか上から目線で言って来たら、そりゃ正座になると思うけどな」

「そういうことを言ってるんじゃない。……はぁ。今の段階でも随分厄介なことになってるが、更に厄介なことになりそうだと今が痛くなってるところだよ」

こめかみを抑える華月に、思わず申し訳なくなる紬だった。


「で、そういえばどういう事情だったのかな」

「…その件なんだが、ちょっと白川小春と久遠寺紬。あんたたちだけに聞かせたい。そこの2人は席を外してくれ」

「君のことは疑っちゃいない。構わないよ」

そう告げて素直に華月は席を立つ。が、広夢はあまり納得していない様子だった。

「ぶっちゃけ、オレ君がどういう身分なのか全く知らないんだけど。というか、わざわざかつての白川小春と同じ顔してる人間なんて、気になってしょうがないだろ」

「それに関しては大した事情はない。…あんたこそ何者だ」

「警察の異能力対策課って言ったらわかるかい?ま、こんな立派な名前ついてるけど、厄介な犯罪の対処させられる避雷針みたいなもんだし、大した仕事はしてないけどね。ただ…ちゃんとした身分ではあるんだよ」

広夢は面倒そうに、髪を弄りながらそう話した。


それを見てひと睨みした後、鳴海は小春の方へと視線を移す。

「あー…えっと。広夢さんの言ってることは本当だよ?一緒に事件に関わったこともあるし……」

ただ実のところ、小春は広夢のことをよく知らなかった。

少し…どころかだいぶ喧嘩腰な所のある彼を、むしろ少し苦手に思っているくらいだ。

「なんで私の近くの男どもは喧嘩っ早いのばっかりなのかなぁ……」

もう少し平和に事を動かせないのかと、紬は頭を抱えた。

「それじゃあ仕方ないな。それに今起きてる事って警察も追ってるんだよな?」

「追ってるけど、全然成果は上げられてない。むしろ主力の何人かが失踪して大混乱って感じ。うちの課の人もやられたしね」


人々が突然怒りだし、人によっては暴れた者まで現れたという今回の事件。

そして、何名かの人間が失踪したという、関係がないとは思えない案件。

そもそも、広夢が鳴海と知り合ったのは、自分の仲間であるはずの女性に殺されかけたのがきっかけなのだ。

「あの女も警察の仲間なのか?」

「うん。本来はその人間が大切に思っていた人間に、攻撃を加えたって報告がいくつかあってね。探偵事務所の方はそのへん掴んでない?」

「特に掴めてないけど、わたしの仲間も一人、いなくなっちゃってる」

コンビニ前での久遠寺奏の襲撃などもあって、すっかり疲弊していた小春たちは、気づけば何も掴むことが出来なくなっていた。


「ただ、一哉…私のとこの失踪した仲間が私の姉…久遠寺奏。おそらく、鳴海さんが会ったのって久遠寺奏だと思うんだけど、同じ状態なら、今頃誰かに襲い掛かってる可能性も……」

一哉に他人を傷つけるような異能力はない。でも、今や拳銃やナイフといった武器は簡単に入手できる時代。そういったものを使えば、簡単に人を傷付けられる。

「それで、そういえば鳴海さんは、どうしてこの街に戻ってきたの?前のわたしと同じ顔の人がいたら、混乱も起きるだろうし……」

小春は何度も不幸体質もあってトラブルを起こすこともあり、良い意味でも悪い意味でも近所でそれなりに知られる人物だ。

だからこそ、その小春と同じ顔の人物がいるということは、それなりに騒ぎの種にもなりうる。

夏生や優芽との連絡を絶っていたのだって、それが理由なのだろう。


「この街で色々と事件を起こしているのが、『Avalon』なる組織であることは知ってると思うが……」

「あー、聞いたことだけはあんね。当然小春ちゃんも知ってんだよね?」

「知ってる…けど。目的も何もわからないし、何故かわたしのことを狙ってる、というくらいで……」

何を目的としている組織なのかは、全くわからない。でも、何か大きな事を起こそうとしているのだけは、小春も理解していた。

「確か、神の力とか言われてる、すごい能力を集めて何かを……何か?」


「俺はそいつらの目的を知っている。そしてもう一つ伝えておかなければいけないことがある」


「新島華月は、全てを知っている」

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