近眼なプリンセス
眼鏡やコンタクトレンズが発明されるには遥かなとある世界。
んん、良く見えないなあ。
何か腹に一物あるのではなかろうか。
私は疑い深い。そうでなければこの世界を生き延びることは難しい。
あのものに出会うまではそう思っていた。
遠くのものはよく見えない。
近くのものもよく見えない。
私は近眼なプリンセス。
この世界の色も形もぼやけて見える。はっきり見えない。
あのものといるとどうしてこんな気持ちになるのだろう。あのものの声を聞くだけでどうしてこんなに胸が高鳴るのだろう。
あのものはとある国の王。キングなのだ。
大切なことは見えないんだよね。
わたしたちは手をつないだ。たしかな温もり。
あたたかい気もちが伝わってきた。
見つめあった。
お互い目は見えにくいけれど。
顔を近づけて見つめあった。
よく見えなかったものが。
今ならよく見える。
ふたりのあいだにプリンスが産まれた。