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ほのかな夢と「あの子」の詩

作者: 時雨奏多

ずっと前から詩を書いてみたいと言っていた、「わたし」と「あの子」。別に誰かに見てもらいたいわけじゃないし、叶えようと思えばすぐに叶えられる夢。


でも、「あの子」はいつも、夢を現実にしたがらなかった。「あの子」を傷付けたくなかった「わたし」は、ずっと、ずっと言われるがまま。一緒にいられるなら、何でも我慢できたんだ。


夜が明けると、「わたし」だけが目覚めて動き出す。心に密かな詩を書き留めながら、今日を迎える。夜になれば、「あの子」と「わたし」が向かい合う、そんな日々。いつまでも変わる気配のない日々。そのうち、この秘めた詩を一緒に書ける日は来るのだろうか、と思いながら過ごすだけだった。


時が経つにつれて、「私」は何もかもが変わっていった。姿も、声も、そしてこの思いも。なのに「あの子」はずっとそのままで、透き通るような笑顔を見せる。

それを見て怖くなっていく「私」が、確かにそこにいた。永遠にここにいられる確証はないけど、「あの子」をひとりにしたくないし、ひとりになりたくない。

考えれば考えるほど、無情に時は過ぎていってしまう。


ずっと前から詩を書いてみたいと言っていた、「私」と「あの子」。別に誰かに見てもらいたいわけじゃないし、叶えようと思えばすぐに叶えられる夢。

叶える時は、今しかないのかもしれない。「あの子」の目には涙がにじんでいた。



「世界は眩しくて 晴れやかで

 愛する人々がそこにいて

 雨降るときも 風吹くときも

 明るい希望を願うだけ


 いつか遠い未来の今日に

 この詩を届けられるなら

 ふたりで生きたこの証

 刻んで どうかいつまでも」



昔、誰かに聞いたことがある話。ふと気付いたら目の前に「あの子」がいて、夢を伝えてくる。それを一緒に叶えると消えてしまうんだって。



気付けばそこには、「私」がひとり。誰が流したかもわからない涙の跡が広がる。きっと「私」のものじゃない。


誰も知らない、おとぎ話のような話。「あの子」と「わたし」しか知らない、本当の話。

この詩だけが、ほのかな夢とを紡いでいく。「私」が「わたし」であるために。


そして、死んでも忘れないために。

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