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前編

   

「お姉ちゃん、この宇宙船で私たち、本当に自由になれるんだよね?」

「大丈夫よ、アンナ。それより、あなたも体を固定しなさい」

 心配そうな妹に、優しい声で応じる。

 ここは宇宙船の貨物室で、茶色の木製コンテナが所狭しと置かれていた。私は体を支えるために、そして妹に手本を示す意味も兼ねて、左右の木箱の間で手を突っ張ってみせる。


「そうだよね。賢いエミィの情報だから、間違い無いよね……」

 妹が仲間の名前を口にしたので、反対側の壁際に視線を向ける。

 二人の仲間が私たち姉妹と同じく、木製コンテナに挟まれる格好で体を固定していた。エミィがリサを宥めている点まで、こちらと一緒だった。

「ううっ、なんだか怖い……。宇宙に出るの、初めてだから……」

「あなただけじゃないわ、リサ。みんな初めてだから大丈夫。みんな一緒だから何も怖くないわ」


 ボーイッシュな髪型のせいか、リサは男勝りだと誤解されやすい。でも実際は甘えたがりで、とても臆病な少女だった。

 一方エミィは、くりっとした瞳が可愛らしく、丸っこい輪郭も含めて童顔だ。まるで成長が止まったかのように数年前から背も伸びておらず、外見的には幼いけれど、大人びた性格で包容力もある。私は時々エミィに母性すら感じるほどだった。

「ねえ、お姉ちゃん。エミィが言ってるの、当たり前だよね? 私たち、この星で生まれたんだから……」

「しっ! リサに聞こえるわ」

 そもそも「みんな初めてだから大丈夫」というのは理由になっていないのに、それでも言い包められてしまうのが、リサという少女だった。

 私が苦笑すると、アンナも同じ表情を浮かべる。そんな妹を見守りながら、私は少し罪悪感を覚えていた。

 自分一人が助かるために、妹や仲間を裏切っているのだから。

   

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