The 3 knots 『SMOKIN' BILLY』
「・・はい・・はい、分かりました。
ではこれより捜査を開始します。
では・・。」
上司が通話を切った事を確認すると岬はM-apの通話アプリを閉じる。
「正式にあの動画ハイジャックの捜査指令ですか?
岬先輩?」
次脇 岬が通話を終えて、タバコに火をつけたタイミングを待ってたかのように後輩の高橋 一善が聞く。
「そう。
私に指令が来るとは思っていたから、もうすでに調べ始めてはいるけど・・ふう。」
話してる途中でうんざりしてきてタバコを大きく吸い、吐き出す。
高橋はタバコの煙が宙に舞うのと、浮かない岬の表情を確認してからやっぱりかと思い聞く。
「その感じだと、難航してるんですか?」
岬は高橋を一瞥するとまた深くタバコを吸い、吐き出した煙をぼんやり眺めながら答える。
「その時間に違法な接続の痕跡はないんだって。
どのサーバーからも、国外からも。」
「あんな大規模な動画ハイジャックだったのに!?
M-ap装着者全員と、テレビなどの地上波も全てですよ!?
しかも日本だけではなく世界同時ですよ!?
単独犯では物理的に無理で組織的犯罪じゃないと為し得ない位の規模なのに痕跡がないんですか!?」
高橋は驚いて前のめりになる。
「一般家庭からの接続はもちろん、企業サーバー、M-apに至るまで全く。
異質極まりないよね。」
岬はため息に言葉を乗せるように答え、タバコを持ってる左手で雑に頭を掻く。
タバコの灰は岬の肩にはギリギリ落ちず、地面に静かに着地する。
岬は刑事という職業柄不摂生な生活になりがちな中、キューティクルで綺麗なロングヘアーを維持している。
しかも女優並みにスレンダーなスタイルだからスーツが凛々しく似合う。
目は切長なので目の大きさによる目力はないが、不思議とその瞳にはいつも力強さがある。
男ならつい二度見してしまうようなルックスなのに、本人は全く色恋沙汰には興味がなさそうなのは本当にもったいない。
高橋はそんな事を客観的に思いながら、手に持ってる缶コーヒーに視線を落とす。
缶コーヒーのラベルをぼんやり見ながらどう捜査するか考えてたら、岬がぼそっと呟く。
「本当に神の仕業なのかもね。」
そう言ってから足を組み変えて、体を起こし頭を壁に預けてから、また呟く。
「神ってさ。
何者なのかしらね。」
世界同時に起きた動画ハイジャック。
主犯とされる神と名乗る者に繋がる証拠は煙の先。
次回、The 4 knots 『the day is my enemy』
神と名乗る者はただの犯罪者か、それとも。