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坊っちゃんとロタ好き執事  作者: さもてん
9/16

アルの決意

「どうしたんだ?アル。最近よく黄昏てるけど。」


声を掛けてきたのは友達のケイレブ•クラエスだった。


彼は半年ほど前から学園で出会い、よく行動を共にする仲までになった。


そんなケイレブに「最近執事がショタロリ好きだって判明したんだけど、どう接すれば良い?」と聞くのはちょっと気が引ける……。


学園の噂話の出回りは恐ろしく早い。いつ何時誰に聞かれたかわかったもんじゃないのだから、大切な話の時は慎重に言わなければならない。(とエドワードが言っていた。)


「……いや、何でもない。」


「またあの執事の事か?」


「………!」


まさかあのケイレブからその言葉が出るとは思っていなかったものだからつい過剰に反応してしまった。


「ははーん。当たりだな。」


「………まだそうだと言ってないだろ?」


「お前が眉間にシワを寄せてる時は大体お前ん家の執事だからな。好きだよなぁ、あの執事のこと。元主人のお嬢様の家に乗り込むとこさぁ。」


「気のせいだ。それに今は真面目にクビを検討している所だ。」


「え?………本気で言ってるのか?」


「俺がお前に嘘ついたことあるか?」


「ないな。」


ケイレブはバカだ。

前にエジプトで栽培されたという『西瓜すいか』という果物の種を腹に残すと根が生えるという話をしたら本気でそれを実践しやがった。


2日後、腹を壊して「やっぱりアルバートの言う通りだった!やらなければよかったぁ!」と酷く後悔していた。


俺は取り敢えずエドワードに頼んでケイレブの執事に「ただの食べすぎです。」と伝えてそっと薬を飲ませてやった。


それを知ってたか、俺にすっかりと懐いてしまったケイレブ(11歳)。


ケイレブはバカだか、全てに置いて素直だ。


嫌いな物は嫌い、好きな物は好き。

裏表なく、ハッキリとしていて、一緒にいて居心地が良い。


けれど、どことなくこういうところだけは鋭いのだ。野生の勘か?


「なんかあったのか?アルの為なら何だってするぜ?」心配そうな瞳でこちらを覗き込む。その姿は犬を連想させた。


「じゃあ、一つだけ頼まれごとをしてくれないか?」


俺はその優しさにドロドロに浸かるとしよう。


☆★☆☆


「お、おい。いいのかよアル。学校抜け出してきちゃって。」 


「学校が終わってからだと執事が来てしまうだろ?」


「違ぇよ。優秀で真面目だと評価されてるお前がこんな事バレたらどうなるか分からないぞと言っているんだ!」


どうやら心配してくれているようだ。

けれど……


「大丈夫だケイレブ。優秀で真面目だと言われているからこそ、心配されず放って置かれるんだ。事実、腹が痛いと先生に言ったらすんなりと抜けれたろ?」


「……それは、そうだけど。」


そしてもし二人なら、怪しまれてもお互い同じことを言えばなんとかなる……と言うのを悪ガキ時代からの経験で知っている。


「戻りたいのなら、戻っていいぞ。ただし俺は行く。」


「………はぁ?ここまで来て、引き下がれるわけないだろ?」


それでこそ、ケイレブだ。


二人で歩く事十分、目的の建物に到着した。

俺の屋敷が三個分入りそうなほど広い、アリス嬢の屋敷だ。


☆★☆☆


「それで?一体私になんの用かしら?」


18になり卒業を迎えたアリス嬢はケイレブという客人がいる前であることにも関わらず、猫を被ることなく無愛想な面持ちでどっかりソファに座っていた。


「突然のご訪問をお許しください、アリス嬢。」


「えぇ許すわ、許してあげるわ。貴方が無礼者だってことは前々から知っているからね。」


言葉の毒を呼吸するかのように放つに俺は眉をピクピク動かしながら答える。


「……あいも変わらずなご様子で安心しました。」


「あいも変わらず?貴方がくる前はもっと気分が良くてよ?」


「それはお互い様でしょう」


「………いちいち癪に触るわね。こんのクソガキ。」

扇でブォンブォンと仰ぐと、彼女の髪の毛が宙に舞った。


そう、宙に舞うほど彼女の髪の毛は短くさっぱりに切られてボブになっていた。


淑女として髪をばっさり切るだなんてあるまじき行動だ。婚約者もこの姿をみたら泣く事だろう。


しかし彼女にそうさせた原因の一端は自分にあることは分かっていたので、俺は極力丁寧な言葉遣いで彼女の機嫌を損ねないように努めた……否、努めようとはしたが無理だった。



だって合わないんだよ、性格が。


あー言えばこー言う。


こー言えばあー言う。


どれだけこちらが気を遣ってもその気をツバと共に飛ばし返してくる令嬢だ。

だからムカついてしまうのだ。


「な、なんか俺が知ってるアリス嬢と違くないか?」ケイレブがぽそりと俺の耳元で呟く。


そりゃあ驚くだろうよ。俺も初めて化けの皮が剥がれた時は驚いた。


ケイレブは執事の話をしても黙って聞いていてくれた。このいう気の利く所も、俺は気に入っている。


「それより貴方。学校は?まだやっている時間でしょう?」


「抜けてきました。」


「まぁ、問題児ねぇ………って、なんでこっちに来るのよ!先生が訪ねてきたらどうするの!!」


「そこら辺は俺達に責任を押し付けてもらって結構です。どうしても、エドワードがいない時に話したいことがあって……ですが、貴方様はご卒業なされた身ですから中々。」


「たしかに、エドワードと仲良く家に来られたらぶっ飛ばしてたわ。」


「ハハハ……」


本当にこのタイミングで来て良かったと改めて思った。


授業時間は90分、ここに行き帰りを合わせて20分、ここの部屋に通され、アリス嬢との茶番劇で10分。


俺達にはあまり時間がない。


俺はかいつまみながらエドワードとの間に起きた一件をアリス嬢に相談した。


☆★☆☆


(あぁ、ようやく知ったのね。)


アリスが思ったのはそれだけだった。

何やら深刻そうな面持ちで何を話すかと思いきや、なぁんだ。なんてこともない相談内容だった。


「貴方はそんな下らない事をグタグタと悩んでいるの?」扇をパタリと折りたたむ。


「え………。」


「私が知った時は貴方みたいに悩んだり腹を立てたりしなかったわ。」


嘘である。超警戒マックスで一週間はエドワードと口を聞かなかった。


「……どうしてそんなに簡単に割り切れるんですか?」


彼は今、私と同じ悩みにたどり着いた。


だったらキチンと教えてあげなくちゃね。


「好きだから。」

アルバートはその黒い瞳が揺れた。


サラサラとした髪といい、幼なげな……けれどその可愛らしい容姿はエドワードがついて行きたくなるには十分過ぎる理由ショタだった。


「好きだからその人の趣味も受け入れらたし、私的にはラッキーと思ったもん。エドが小さい子が好きなら私としては都合が良かったしね。」



「…………俺は、エドワードとの接し方が分からない。」


俺はアリス嬢のように受け入れきれない。割り切らない。


あの時、エドワードに裏切られた気がしたのだ。


他の人の趣味はどうでもいい。人それぞれだと思う。そう思っていたけれどそれがまさか身内で、しかもその対象が自分だったのが余計にそんな気にさせた。


この形容し難い感情をなんと言えばいいのか分からず、俯く。


「普通でいいのよ。エドワードは変態だけど、そこら辺はちゃんとしてるんだから。………私に手も出してくれないほど。」


「……エドワードに、酷い事を言った。」


『お前には失望した。』


『気持ち悪い。』


『俺をそんな風に見ていたのか?』


あいつは俺にそう言われてどう思ったのだろうか。

少なくとも、いい感情は抱かなかっただろう。



「はぁ。」


アリス嬢の大きなため息が聞こえた。


「そんなに迷うくらいなら、返しなさいよ。エドを返して。」


ギロリと睨みながら冷たく言った。

俺は怒りでカァッと顔を赤くしてムキになって言い返した。


「違う!そのいう言う事を言う為に来たんじゃない!!」


二人の間に険悪が雰囲気が香る。


「ちょっと、お二人とも落ち着いて下さい。」

ケイレブが俺たちの間に入ってくる。


「同じよ!!その程度の覚悟でエドを私から取ったのなら、貴方に彼は勿体ないわ!!」


「はぁ?なんだとこの」「アルバート、よせ。」

ケイレブはなぜか俺の方ばかり怒る。



そうこう言ううちにアリス嬢は続ける。

「私が一緒にいたかった時間を貴方は持っているんだから!

貴方はまだまだ、やり直しが何回も出来るんだから、いつまでもクヨクヨしてる場合じゃないでしょ!!」


「……………。」「……………。」


俺たちは二人で呆然としてしまった。


アリス嬢の言葉は乱暴で、横暴で、どこか鼓舞してくれているような不器用さが垣間見えた。


☆★☆☆


「エドワード。話があるから……って何してるんだ?」


「あ、いえ特に何も。ところで話とは何でございましょうか?」


見たところ要らない物をまとめているようだった。普段のゴミなどと一緒に使わなくなった衣服やものを捨てていた。


「いや、それが終わってからでいい。話があるから僕の部屋へ来い。」


「………はい。」


シュンと項垂れながら執事は返事をした。


★☆☆☆



(全く、行きたくない。)


流石にもう旦那様と奥様に話してしまっただろうか?

そうしたら一貫の終わりなのだが……


私が去った後、アル様はどうなってしまうのか。


またバーで金をドブに捨てる生活に逆戻りだ。何も知らない親の元で何も知らない子供がとんでもない事をしでかすの様を何度となく見てしまっている。


…………『あの子』のように。


私は同じ間違いはしたくない。でも私では出来ない。なぜならあの本を捨てれなかったから。



だって仕方なくないですか?


限定品ですよ!プレミアですよ!?


他の本は涙ながらにようやく捨てれたけどあの本だけはどうしてもダメだった。


表紙の天使と目が合うたびに、捨てようとしていた気持ちがしゅるしゅると失われていく。


(もしクビになったとしてもアル様のことは諦めない。)


別の信頼できる執事を使おう。そうすれば私がいなくても事が運ぶ。そうだ、そうしよう。


「はぁ………。」


思わず出てしまったため息に苦笑しながら私はアル様の部屋へ歩き出した。


ゴミ箱にはあのプレミアな本を残して。




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