エドワードの秘密
前回の11歳の時のお話から始まります。
「トントントン失礼します。」
もう寝ている時間だと思うが、一つ大切な明日の予定を言い忘れていた私………エドワードは坊ちゃんの部屋をノックして中に入る。
「あれ……いない?」
資料集や書類が散乱した紙が机の上にある他、ベットの中に入った様子も何もなかった。
私の部屋に向かわれたのだろうか。
いや、まさかねぇ……………ハハっ
私は全力走り出した。
『走れエドワード』と本のタイトルが出来てしまいそうなほど全力で走った。
まずいまずいまずいまずい
あの部屋の本棚には秘蔵の美少女美少年写真集が眠っているのだ。さっきまで読んでいたので、バリバリ表紙が見えてしまう!!!
絶対に見られるわけにはいかないっっ!!
自室に急いで入り込み、叫んだ。
「坊ちゃん!!!」
坊ちゃんはこちらに振り向く、手にしているのは、まごうことなきお宝の本。
………時すでに遅し。
「あ……あの、……坊ちゃん……それは」
「エドワード。これは一体なんだ?」
低く、鋭く、冷ややかな声に思わずゾッとする。
ゴクリッ、生唾を飲み込み覚悟を決める。
こんな日がいつか訪れてしまうのではないかと踏んで、前々から準備していたこの言葉。
「さ、さぁ。一体なんでしょうね?もしかしたら前の執事仲間のファルコがイタズラで置いていったやつかもしれません。………ハハっ。」
我ながら完璧な答えだ。
「こんなに大量にか?悪趣味だな。」
「えぇ、そうなんです。ファルコは悪趣味な奴なんですよー。」
「そうかそうか、なら良かった。」
「アハハ……。」
変態だと罵られ、クビにされたらたまったもんじゃない。せっかく築き上げた信頼と坊ちゃんの未来がパーになってしまう。
ふー……危ない危ない。
「これを見ても言い訳出来ないもんな?」
そう言って見せたのは坊ちゃんが持っている私が最もお気に入りの美少年写真集。
その表紙にはデカデカ映っている少年に『エドワード様いつも応援ありがと♡』と描いてもらったサインがあった。
「はぅっっっっ!!!」
改心の一撃。
恐ろしい子。
「正直驚いた。お前にこんな趣味があっただなんてな。」
少し怒ったような、悲しそうな口調で私に言う。
「えっと……それは、その」
「気持ち悪い。」
空気が一変した。エドワードも目を逸らしてしまうほど、この言葉の効果は凄まじかった。
「あの時お前が言いかけたのって『そういうの』を俺にさせる為だったのか?失望したよ。」
「違います!!断じて違います!!!」
そこだけは、否定しておく!
「私は確かに小さな坊ちゃんやお嬢様を見ることが好きです。大好きです。ですが!!決していかがわしい事をするつもりは毛頭ありません!!ロタは傍目から楽しみ、想像に妄想を膨らませることに意味があります。
つまり!!ロタは美術品と同等の価値があると言っても過言ではないのです。」
「…………。」
見るまでもなく、坊ちゃんは引いていた。
でも絶対に性的な対象ではないことを必死で伝えた。
「私は執事家の長男として、結婚する身でございます。子も残す所存です。ですから安心安全です!!将来のことを考え、坊ちゃんに危害を与えるつもりは絶対にありません!!これだけは!どうか信じてくださ「分かった。分かったから。」
坊ちゃんはふぅと息を吐き、こめかみを抑えた。
「取り敢えず、今日のところはもういい。お前を信じてやる。………部屋に戻る。」
「お送りいたします。」
「いい、一人で戻れる。じゃあ、お休み。」
最後まで表情が変わらなかった坊ちゃんを見て、クビも近いとそう感じた。
でも坊ちゃんには悪いが、今はまだクビにしてもらっちゃ困る。
嫌でもあの人には彼の馬鹿親どもから自立してもらうだけの力を与えなければならない。
それまでは…………
「いや、ダメかもしれない。」
いつになく弱気にハァとため息を吐き、ベットに寝転んだ。
そのベットはほんわりと温もりを感じた。