行きたくなけりゃ
朝、体を起こそうとするが中々動かない。ため息ばかり募りまるで熱になったかのような倦怠感に襲われる。
学園に行きたくない。
結局エドワードが起こしに来るまで布団でウダウダしていた。
「アル様!今日も学校ですよ。早くおきてくださいな。」
新妻よろしく、せっせと動くエドワードを見てコイツに大黒柱の亭主関白は駄目そうだなぁなんて、密かに思っていた。
「美味しいですか?」
「…………うん。」
もぬもぬとエドワードに手渡されたサンドイッチを食べながらコクリと頷く。
その姿をみてエドワードはニコニコニコニコと笑みを浮かべていた。
「……何が面白い。」
「いえ、ただ食べているアル様が可愛なぁと見ていただけです。」
「………ッッッ!!」
唐突な言葉に思わず鳥肌が立つ。
「男に可愛いなんておかしいだろ。」
「いえ、私は手は出さないものの!小さい子供なら男女問わず愛でれます!!」
ドヤっと言わんばかりの顔で彼は胸を張る。
やっぱり重症だなこりゃ。。。
奴のロタ好きを受け入れたものの、やはり時々本当にコイツは俺の事をそういう目で見ているんじゃないかと少し怪しんでいたんだが……
今の俺にはもうわかった。
コイツはただの根性無しのド変態なんだって。
☆☆☆★
「坊ちゃん、大丈夫ですか?」
エドワードの心配そうな声が馬車の中に響く。
学園が始まった初日以外、ほとんど馬車の中ではエドワードとたわいもない会話をしている。
けれど今日はさすがにそんな気持ちなれずボォっとしていたことに対してエドワードは違和感を覚えたようだ。
「………あぁ、問題ない。」
エドワードが何かいいたげな様子でこちらを見つめる。
そろそろ学校が見えてきた。
ざわめくような、逆に安心するような複雑な気持ちが俺の身体中を巡る。
学校までついてしまえば、俺は腹を括るしかない。行きたくないとかそんな小さな理由で奴らに休みだと思われるのが嫌だ。
学校の前で馬車が止まる。貴族が多いこの学校は馬車を駐車するルート専用の場所がある。
「じゃあ、行ってくる。」
アルは立ち上がり馬車の扉に手をかけようとした時、長い黒いスーツを纏った足が間に入った。
「………行儀が悪いぞ?」いつもはエドワードが俺に言う聞き馴染んだ言葉を言った。
「坊ちゃん……本当に、大丈夫ですか?」
「………大丈夫だ。何度も言わせるな。」
困ったような泣きそうなような表情でエドワードは茶色の綺麗な瞳を一度揺らした。
あーもー、そういう心配をしてくれる気持ちは嬉しいけどお前が言ったんじゃん、孤独は悪くないって、だから俺は学校の中でケイレブがいなくても孤独をエンジョイしようとしてるんだよ。
「……坊ちゃんがそうおっしゃるのでしたら」
エドワードが足を退かそうとした時に、俺は足からぐらりと彼に倒れこんでしまった。
いや、正確には咄嗟に隠れてしまった。
窓の奥には、俺と同じクラスのやつがいたからだ。しかもそいつは最近俺に対して率先的に嫌がらせをしてくる奴だ。
彼は俺よりも爵位が高い。だから俺も中々反撃が出来ず困っているのだ。
気にしないように努めように思っていたのだか、この時はなぜかできなかった。
微かに震える俺はエドワードの目にはどう映ったのだろう。
呆れたのか、それとも哀れに思ったのか
どうせなら発破をかけてほしい。
「坊ちゃんなら大丈夫です。頑張って下さい。」って。
そしたら俺は嫌でも進むことができる。
そんな微かな期待を抱いていたがエドワードが取った行動は全く違っていた。
「坊ちゃん。」
俺の背中に手をかけながら彼は言った。
「今日は、一緒に出掛けませんか?」
タイトルでなんとなくわかっちゃいますね笑