曲げたくないもの
ᕕ( •̀ ỏ•́)ᕗ ʖˋʖˋʖˋ〜♪♪"
次の日
「よっ!ごめんなぁ昨日休んじまって。寂しくなかったかぁ?」
この場に似合わないあっけらかんとした声で俺の背中を叩いてきたのがケイレブだった。
俺は周りの視線を背中に感じながらもいつも通りに話した。
「聞いてくれよぉアルぅ。」
「名前を伸ばすな。」
「そんか冷たいこと言うなよぉアルぅ〜。」
「伸ばすなって、あとビブラートもつけるな。」
「あのな、昨日馬車での帰り道でさ子猫をみつけたんだけどさ、こいつがめちゃくちゃそっけなくて無愛想なんだよ。黒い毛並みでなんかお前そっくり♡」
「はぁ?」
まるで昨日のことがまるでなかったかのようにケイレブは話し続ける。
不思議でしかなかったのだが、ある瞬間に気付いた。
(あそっか、こいつ馬鹿だった。)
西瓜の種を食べたら腹から根が生えてくると信じるほどのお馬鹿だ。
昨日俺が言った言葉なんて本人はあまりよく理解していないのだろう。
でも、その時の俺はたしかに彼の短絡的な所にとても救われていた。
「だからソイツの名前をアルにしたんだー♪」
「は!?………お前マジでふざけんなっ!」
いや、振り回されていたと言った方が正しいだろうか。
エドワードとケイレブのお陰で、学校で塞ぎ込んだり傷ついたりすることは少なかったと思う。
けれど、そうだなぁ。ケイレブと一緒にいない時のほんのわずかな間には直接罵られたり、物がなくなっていたりなど些細な嫌がらせは続いた。
こりゃあもうイジメの一種になるんじゃないのか?いや虐められたことがねぇから分かんないけど。
とにかく、そんなアホな事で学校を休んだりしたくなった。こんな事で休んでいると奴らに思われたくなかった。
「アル、すまん明日休むわ。」
ケイレブが昼食中に言った言葉はやけに大きく聞こえた。
どうやら叔母が彼の家に三年ぶりに訪れるらしい。
「あの人のこと、あんまり好きじゃねぇんだよなぁ。でも、やっぱり親族だからみんなで迎えなきゃいけない。」だそうだ。
「…………そうか。」と答えるだけでいっぱいいっぱいだった。
「お前………大丈夫か?」
ケイレブはどこか不安そうにこちらを見る。
急に静かになったことに戸惑っているのだろう。
明日、ケイレブがいなくなったら俺はどうなるんだろう。
今日までの些細な嫌がらせがヒートアップしてしまうのか。
物を隠されてしまいには机と椅子を教室から捨てられて、「お前の席、ねぇから」なんて言われてしまうんじゃないか。
……なんて、らしくない後ろ向きなことを考えてしまう。
「あぁ、平気だ。」
無理矢理笑みを作って言った。
こんな子供騙しなことで俺は絶対に屈しない。
屈したら、休んだりしたら、負けな気がした。