いざ、反撃
「確かに、貴方様のおっしゃる通り、私は昔ヤンチャしていたことは間違いではございません。」
「……ふん、そうだろうとも!」
まずは相手の言い分を認めてしまう。認めてくるとは思わなかった相手から、ほんの少し動揺が見られる。
「けれど違う点がございます。」
「あぁ?」
「私はドラックは致しておりません。例えヤンチャな私であってもそこまではわかっております。」
「で、でも、酒はギャンブルをしていた事実は違わないだろう!!」
「ハハ、よく裏で酒やギャンブルをしてそうな顔だとよく言われますが………ただ、私はパーティを開きすぎてしまっただけです。」
まるで物語を語るような口調で俺は話をつづける。
「あれは、私がまだヤンチャ全盛期だった頃、私はパーティの手前で突然倒れてしまいました。元々体が弱ったのを知っていながらも遊び呆けていたからでしょう。長い闘病とリハビリの末、私は今のような健康な身体を手に入れることが出来ました。」
「それが何だと言うんだ!皆様お聞きの通りアルバート・バイルは貴族失格です。没落貴族です!!こんな下品なパーティはすぐに終わらせましょう。」
「私は、あの闘病を経験したからこそ、もう2度しないと誓えます。その先で待つ場所こそが没落だからです。私はそう決めた日から勉学に勤しみ、首席で合格することが出来ました。」
「………ッ!」
「私、アルバート・バイルのことを信用出来ないと言うのも仕方がありません。ですからこれから見ていて下さい。私がバイル家に相応しい人間になれるかどうかを。」
辺りに静寂が広がる。
群衆にはこれが11歳の少年だと思えなかった。
「本来ならばこのような恥ずかしい昔話は避けようと思っていたのですが、貴方様のお陰で胸の内を明かすことができました。ありがとうございます。」
敵対相手に礼を述べる俺の姿を見て相手はたじろぐ。
「……そろそろ、パーティもお開きの時間ですね。お帰りのお客様は見送りをさせていただきます。エドワード。」
「はい。」
分かっていたようなタイミングでエドワードは俺の近くまで来た。
「頼んだぞ。」
「御意」
濁しに濁し、さてさてやっと終わったぞ!だなんて思っていた時だった。
「〜〜〜っっ!何良い感じに終わらせてんだよ!!」
先程の貴族A様が大声を張り上げた。
「変な服きやがって!女か!!!」
……あ"?
ケンカ売ってんのかゴラ。
俺だって出来るならこんなフリフリでヒラヒラな服着たくなかったに決まってんだろ?
そんな言葉をグッと抑える。ここで騒ぎを起こすわけにはいかないからな。
「あ"?」
俺とは別の声が近くから小さく聞こえた。
その声の主の方へ視線を向けると、エドワードがいた。
そしてこちらに向き直るととてもとても綺麗な笑みで「私にこの方を送らせてはいただけないでしょうか?」と言った。
本当はエドワードに上級貴族の方を送っていただきたかったのだが、まぁ仕方ない。
騒ぎの元凶をこのままにしておく訳にはいかないからな。
一つの言葉で承諾するとエドワードはそれはほれは綺麗な笑みで「ささ、参りましょうか。」と言った。
無事……とは言い難いが、なんやかんやなパーティは幕を閉じた。
帰りにケイレブや招待客の貴族様達は俺に労いの言葉をくれた。
招待客の中には少なからず、哀れみや軽蔑の視線を浮かべる者もいたが、まぁ全体的に見て良しとしよう。
ふぅ、俺もようやく寝れる。
しばらく忙しかったからな。
では、夢の中で会いましょう。
スヤァ
PS:その後、学園で貴族Aが全く話しかけてこなくなったのはなぜだろう?