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坊っちゃんとロタ好き執事  作者: さもてん
12/16

いざ、やっかみ

「疲れた………。」


舞踏会となる広場から少し離れた小部屋を避難場所としてエドワードが作ってくれていたのが役に立った。


お陰でグテンと休むことができる。


「お疲れ様でございます。お飲み物お待ちいたしましょうか?」


「……いやいらない。もう腹がタプタプだ。」


ご貴族様が話されることをうんうんと相槌を打ち、何か質問されたら当たり障りなくたださりげなく盛っておく。


興味深い話もあったが、そういう人に限って辺りを気遣い、風が吹くように颯爽と行ってしまう。


手元に残るのはマダム達だけだった。

そんなストレスをジュースで紛らわしていた。


「なぁエドワード。」ソファに寝転びながら訊ねる。


「はい。」


「お前が今まで指導してきた子供って何人だっけ?」


「貴方様を含めると5人ですね。」


「じゃあその中で、初めての社交界が一番良かったのは誰だ?」


執事は面食らったような表情の後、呆れたように言った。


「坊ちゃん……他のご子息様やご息女様6歳の時に社交界デビューを果たしているのですが……。」


そういえばそうだった。

6歳児と張り合おうだなんてなんか形容し難い恥ずかしさに襲われる。


「い、いいだろ。別に。」


体の向きをたい焼きがひっくり返るように変えてうつ伏せにする。






「アル様ですよ、一番なのは。」


俺の背中に響いたのは、甘い優しい言葉だった。


(……こいつ、俺の喜ぶことを熟知してるな。)


きっと他の子供達にも同じことを言ってるだろうに。


それなのに、体が火照るほど嬉しくなるのは何故だろう。こいつに褒められたからかな。


☆☆☆★


「よう!アルぅ」


休憩室から出てきた俺に元気よく声をかけたのはケイレブだった。


そういえば、こいつにも招待状出してたな。


「いやぁお前ん家あんまり来たことなかったんだけど、案外ちゃんとしてるな。」


「どんな家だと思ってたんだよ。」


「んー……実は汚部屋でしたぁ〜とかだったらウケるのに。」


「………。」


たしかにエドワードが来る前は酷かったなぁ。


掃除はちゃんとメイドがしているんだ。ただ、超やる気のない奴らだったな。


彼女らは俺のこと嫌い(理由は当主として相応しくないから。)


俺は彼女らが嫌い(理由は相手が俺のことを嫌いだから。)


だから俺はメイドをあまり部屋に入れなかった。



部屋の状態はどうなったかはご想像にお任せします。


エドワードが来て、メイドが総入れ替えして部屋が毎日ピカピカなのを見ると不思議な安堵感がある。


やっぱり、部屋が綺麗な方がいいなぁって。



「これはこれは、不良貴族様じゃないですか。」


声のする方へ振り向くと、そこには学園で顔は知っているが名前は知らない男子達が数名いた。



そんな事よりも………


「おい!誰が不良貴族だよ!!」


ケイレブがカッとして怒鳴る。


おいおいやめとけって、ここで騒げば周りにいる人達の注目の的にされるぞ。


「君じゃなくて、彼のことを指しているんだよ?ねぇ、アルバート・バイル。元ギャンブラーの不良貴族の成り上がりがパーティの主催者だなんて、恥ずかしいと思わないのか?」


彼らもそれを分かっているのか声を大きくして言う。


「…………。」


「その成り上がりのパーティに来ていただいた貴方はもっと恥ずかしいですね。」


「あぁそうさ、恥ずかしいな。招待状が届いてなんだと思って来てみればこんな腑抜けたパーティだったなんて。」


「ならお帰りになられたらどうです?生憎こちらは忙しい身でして貴方様に構っている暇がないのですよ。」


なっ……という声を出して名の知らぬ坊ちゃん達は形相を変えた。


おーこわいこわい。怒ってるぅ。


それにしてもどこで俺がギャンブラーの不良貴族だとバレてしまったのだろうか。


そうなったらエドワードと考えた「病弱で社交界に出られなかった秀才」の設定が成り立たないではないか。


「皆さま、聞いてください。ここにいるアルバート・バイルは裕福に生まれたのをいいことにギャンブルや酒、ドラッグを幼少期くら繰り返した俗悪です!僕は彼の同級生として彼を知っています。学園では上手く隠しているようですがここでは私がその化けの皮を剥がしてご覧にいれましょう!」


声高々に宣言するかのように話す貴族Aを見てどうするかと考える。


ここで慌てて否定すれば相手の思う壺だ。


かと言って認めてしまっては今まで築き上げてきた人間関係や信頼が崩れてしまう。


どう動くべきか




思考しながら視線を彷徨わせていると、遠くの窓際に立っているエドワードと目が合った。


エドワードはこちらを助ける素振りも見せずどう動くのか楽しみにしているような笑みを浮かべている。


『アル様ですよ、一番は。』


先程聞いた言葉が蘇った気がした。

(どいつもこいつも………。)


俺を試すように見やがって。



……いいぜ、乗ってやるよ。


スゥと息を吸い、姿勢を正す。

美しい姿勢は威厳を保たせるとエドワードは言っていた。


なんて言うかは全く考えていない。

いや、考えながら話せ。


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