第二話
「土左衛門ってしってるか?」
傑「なんだよそれ?」
「土左衛門ってのはな、水死体の事を言うんだぜ
水でぶよぶよになってて、まるで土左衛門っていう力士に似てるんだ」
そんな会話、子供の頃したっけな、、
そんな話、なぜいま思い出したんだろう、、
土左衛門
そう、目の前にいる者
体重なんて50キロで身長なんて158センチくらいしかない妻
そんな妻が倍以上に膨れ上がっており
色は青白く
首から上は
見るに耐えない
右目は膨れ上がっており
顔の左側が潰れて
原型を留めてなかったが
すぐに妻だとわかった
左手の薬指には、結婚指輪がはめてあった
娘は…
直視出来なかった、
外的損傷が激しく、地元の漁師が船で漁に出ていた時海に浮かんでいる妻を発見
その時に頭部の大部分は破損したらしい
娘はそこからかなり離れた浜辺に打ち上げられていた所を発見された
当時もとても暑く、死体の腐敗がかなり進行ていた
死因は溺死と判断
警察の調べによると事件性はなく
自殺と結論付けた
育児ノイローゼとでも思われたのだろうか
自殺、
そんなわけないだろ
自殺なんてするはずないだろ
そう、警察に訴えたりは
しなかった
それよりも
妻と娘が死んだ事を
認めたくなかった、信じたくなかった
だが、涙は流れず
ただ、ただその死体を見つめていた
悲しくて、泣きたいはずなのに
なぜか泣かなかった
その日は警察の事情聴取やら手続きなどをさせられ
家に帰った
なんの手続きだったかは覚えていない
家に着くと
本当は最初から妻と娘は存在してなくて
全て俺の妄想だったなんて、思うほど
静かだった
暗い部屋に
かすかに香る
妻の匂い
衣服の柔軟剤の匂い
それを嗅いだ瞬間
今まで溜まって涙が
止まらなかった
泣いた、泣きじゃくった
もう、妻と娘に会えない
一生
あの笑顔は戻ってこない
俺は床に座り
ただただ泣いた
気づいた頃には夜中だった
妻と娘がいなくなってから
ほとんど何も口にしていなかった
疲れた、
今までの疲労と精神的ストレスが一気に身体にたたみかけた感じだ
その時に
コロコロ…
目の前に球体の物が転がってきた
そこに目を配る
サッカーボールだった
俺はそのサッカーボールを手に取り
眺めた
傑「サッカーボールなんて、うちにあったっけな、
ん?待てよ、」
おかしい、サッカーボールなんて買った覚えなんかない、
ましてや、妻も買ったなんて言ってない
仮に買うとしても娘にサッカーボールなんて買うのか?と疑問に思う
買うとしても柔らかい空気のボールならまだわかるが
娘はまだ10ヶ月くらいだ、ボールはまだはやいだろう
だかまだ疑問がある
このサッカーボール、新品ではなく、とても汚い、サッカーボールの縫い目の糸もほつれていて、指で押すと空気が抜ける感じがある
傑「なんでこんな汚いサッカーボールがうちにあるんだ?」
わからない
わからないが、なにかある
傑はなにかを疑い始めた
その時、妻との会話を思い出した
傑「そういえば、うちの庭の壁でサッカーボールで壁当てして遊んでる中学生がいるって言ってたな」
傑「それで迷惑だから俺に注意してきてって
言っていた」
中学生、
そのワードが頭から離れない
モヤモヤする
傑「そのほかにも、庭の向かいのアパートの2階でタバコを吸ってそのタバコをうちの庭に捨ててるって言っていた」
なにかが引っかかる
傑「このまえは、そいつらはそのアパートの下でもタバコを吸っていたのを見たことがある。
二人共金髪でガラが悪い、いかのも不良って感じだった。」
俺は他にも何かを見落としてないか周囲を見渡した
家の中はいたって普通
俺は妻と娘が居なくなった日から
家の物を動かしたりしていないし、
ほとんど、外に出て
探し回っていたから
家の変化には気づいてなかった
だがふと
庭のほうに視線を向ける
洗濯物が取り込まれていない
妻がいなくなって洗濯物はずっと放置したままだった
俺は庭に出る
洗濯物...
おかしい
妻は必ず夕方には洗濯物は取り込む人だ
絶対に放置なんてしない
妻が一人暮らしをしていた時に下着を盗まれた事があって
それ以来必ず夕方には取り込む
それが取り込まれていない
おかしい
下に目を向ける
そこにはまだ干されていない洗濯物がかごに入ったままだった
今は乾いているがしわくちゃになっており
少し匂う
洗濯物を干す途中だったのか?
つまり
妻は途中で干すのを辞めたことになる
いや、中断したのか
中断をしてでも
やったこと
そういえばたしか、
居なくなった日にLINEたときは18じくらいだったか、
仕事が遅くなるってLINEし、
その返信がなかった事を考えるとその時間にはもう
家にはいなかったのか
それと汚れたサッカーボール
ガラの悪い中学生
俺はある仮説を立てる
その中学生がサッカーボールを庭にわざと落とし
それを洗濯物を干している妻が見つけ
そのサッカーボールを拾い
玄関までその中学生届けようとした
ってことか
俺は嫌な予感がした
俺は最初から自殺なんて信じちゃいない
この証拠を警察に提出すれば、、
いや、仮に裁きが下ったとしても
この国には糞みたいな少年法がある
そんなんじゃだめだ
俺はその中学生の事を調べることにした
三話に続く....