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12 その後

「ミリオネアでの話を教えてくれるかな?」

「リディアから聞いていないのですか?」


「あの子が教えてくれると思うかい? どうして行く前に話をしてくれないのかと随分怒られたよ」

「あゝ、それは僕も言われました」


「仕方ないと思わないかい? 何十年も前の、それも確証の無い話をして、余計な心配をさせたくは無いだろう?」

「それを決めるのは、師匠では無いとでも言われたのですか?」

「まぁね」

「昔、クラウス様が、師匠は言葉が足りないと良く言われていましたね」


「あれは、故意にだよ。イルネラの街で出会った頃は、反応が面白くてね」


「それは聞かなかった事にします、、、只、僕も向こうで何があったのかは分かりません。

 リディアは精霊の王様と話して、これから先も何度か会いに来ると約束したのだと言っていましたね、ヒューイという男も、その約束があるから精霊王は、リディアを返したと」


「つまり、余計な心配だったと言う事かな」

「どうでしょうね、今だったからなの知れませんし」


「なる程、こちらにより強く惹かれる者か、、、余り面白くないね」

「それだけでは無いでしょう?」

「もちろん分かっているさ、それでも面白く無いものだよ、エリスもいずれ分かるさ」


「それでエリスは、楽しめたかな?」

「僕は、苦手ですね」

「おや」

「潮の香りも、暑いのも、ついでに社交もうんざりです」

「それは大変だったね」


 久しぶりに酒を飲みながら話す。出来ればもう少し話も聞きたいが、そろそろ森の人の所に返さなくてはならない。



「これは?」


「エリスが精霊の王から預かって来たものだよ、お前に預けておこうと思ってね」

「あちらは大丈夫だったんすか?」


「そうだね、私達が心配してあれ程近づかない様に、気付かれない様にしていたのに、結局、本人が解決してしまった、本当に人と言うのは面白いね」


主人(あるじ)らしく無いっすね」

「僕はね、どうも女性の心が分からないみたいだね、妻にも良く怒られる」

「そりゃ良かった、主人(あるじ)に苦手なことがあって安心したっすよ」


「あまり読み違えるのは嬉しく無いが、これに関しては、リディアのためにならないものを精霊の王が渡しはしないだろう」


ジャルドに緑色の小瓶を渡し、下がらせた後、昔の事を思い出す。


 二人目の妻であったアリシア。

 貴族院の令状に従い妻としても、自分にとっては単なる保護した相手のつもりだった。

 恵まれているとは言えない実家から救い出し、住む所を与え、充分な生活が出来れば満足するだと思っていたが、彼女はそれ以上の繋がりを求めた。

 それは、愛情ではなく執着の様なもので、哀れだと思っても愛しいとは思えず、結局、慰め役を他人に委ねた。

 それ故、酷い話だと思うが、子どもが出来たと聞いても自分の子だとは思ってもいなかった。


 それで良いと思っていたし、ウエストリア家には昔から血筋で無い者を育てる事が多かったので、気にも止めていなかった。

 ウエストリアの領主が緋色の瞳を持っていなければならない理由は一つだけで、他には無い。

 確かに広大な領地を収める資質は必要であっても、それはどうにでもなる事だった。


 結局、アリシアが次の領主となる者を産んだが、彼女は命を失った。今でもあの時の自分の選択が正しかったとは思えない。


「難しいね、特に女性は私が考えた以上の行動をとる時がある」

「だから面白いのではありませんか?」

「そうかもしれないが、、、あまり予測出来ないのは困るね」


 数日後には王都に向かう、気になる事がない訳では無いが、それもあと数日の話だ。

 娘の心は既に決まっていて、揺らぐことは無い。


 少し早いのは気に入らないが、それが彼女の選択ならそれでいい、父親としては、彼女が選んだ道を進める様にしてやればいい。


第4章はこれで終了です。

次から第5章、最終章になります。

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