60:ここでもまた一緒に北斗七星と北極星を見上げる
星を眺めながら歩いていたら、ボクはつい羽咋駅まで辿り着いた。
家から歩いてこの駅に来たのは今回3回目だね。でも自分一人で来たのは初めてだ。いつもならチオリと一緒だから。
今でもあの北斗七星と北極星が見えている。やっぱりチオリの言った通り、あっちと同じだ。どうして同じなのかな? 神様なら理由を知っているかもしれないよね。
金沢や東京と比べたらこの町は静かであまり何もないけど、ボクはこの町のことが好きになったと思う。
ボクは今駅に来た理由は……実は特にないかも。ただそもそもこの町の他の場所はまだあまり知っていないからね。今日散歩に行ってきた浜辺にもまた行ってみたいけど、道はまだよく覚えていない。でもこの駅なら2回来たことがあるから、道はもう大体覚えている。
とはいっても完全に道を覚えているわけではない。迷子にならないためにやっぱりまだスマホが必要だね。チオリからスマホの地図の使い方を教えてもらったおかげで、やっとボクも自分でここまで来られた。
チオリは今友達と楽しんでいるのだろう。いつ家に帰ってくるのかな?
電車から降りて羽咋駅から出てきた人々はいっぱいいる。ボクはあまり目立ちたくないから駅の近くまでは行かない。ただ駅の前でしばらく佇んでいた。特に用があるわけではないから、ボクはその後家に帰る。
・―――――・ ※
「イヨヒくん?」
「チオリ、帰ってきたか」
家に帰ってきた後ボクはまだ家に入らず、しばらく家の辺りで散歩していた。もちろん、チオリの帰りを待っていたのだから。案の定こうやってチオリが家に帰ってきたら、家の前で会った。
「家の前で何してるの?」
「空を見上げているよ。今日星空が綺麗だからね」
本当はチオリの帰りを待つためだけど、空が綺麗ってのも本当に理由の一つだ。
「あ、確かにそうだね」
「あっちは北斗七星だよね?」
ボクは空を見上げて北斗七星の方に指差した。
「そうだ。まだ覚えているよね。以前あたしの言っていた通り、星はあっちの世界と同じだ」
「そうだよね。それと、北極星も」
「うん」
またチオリと星空の話ができて嬉しかった。
「ね、今ちょっと散歩したくない?」
「今? でもチオリは帰ってきたばかりで、疲れていない?」
「いっぱい食べたから、むしろ家に入る前にまだちょっと歩きたいかもね」
「そうか。うん、わかった。ボクも一緒に」
・―――――・ ※
「夜の海も綺麗だね」
結局ボクたちは、今朝も行ってきた千里浜海岸まで歩いてきた。
「うん、でも今海風が強くてちょっと大変だよね」
「そうだよね。でも今チオリの髪の毛が風に靡いている姿は美しい光景だよ」
やっぱり、チオリが可愛くて見目麗しい。この長い黒髪がサラサラ強い風によって流れているところを見るのが好き。
「今イヨヒくんの髪の毛の方が長くて綺麗だけどね。こんな長い銀髪ツインテールを見て本当に眼福だよ」
「……っ!」
ボクはチオリを褒めるつもりで言ったけど、逆に褒め返した。でもボクの目にはやっぱりチオリの方が可愛くて綺麗だよ!
「イヨヒくんは、今こんな長い髪にすっかりと慣れているようだね」
「うん、最初はいろいろ面倒くさいとは思っていたけど、やっぱり切るのがもったいない」
子供の頃もわたくしの髪は長かったけど、お姫様だからあまり自分で手入れする必要がなかった。長い髪をいつも綺麗にすることはこんなに大変だとは知らなかった。
「あたしもやっぱりイヨヒくんの長い銀髪ツインテールがすごく気に入ってるよ。だから絶対切っちゃ駄目だよ」
ボクの長い白銀色のツインテールを優しく撫で撫でしながらチオリはそう言いつけた。
「わかっているよ。もちろん」
不思議なくらいに自分がこの髪を大切にしている。言われなくたってボクはこの髪を切るつもりはないよ。チオリもボクの髪が気に入っているみたいだから尚更。
「そういえば、チオリは髪を短く切らないの?」
今のボクの髪ほど長くはないけど、女性らしく首の少し下までは伸びている。短いポニーテールができるくらいはある。
「あたしには長すぎる? やっぱり変かな?」
「いや、全然変ではない。むしろこれがいい。こんな長くて綺麗な髪はもちろん似合うと思うよ」
チオリはいつもあまり女の子らしくない服を着ているのに、髪だけはちゃんと女の子らしく長く伸ばしている。それはちょっと意外かも。
「今なんか『こんなダサい格好には似合わない』とか思っているの?」
「え? なんでそんなことを!?」
チオリに心読まれたの!? 別に『ダサい』って、そこまで考えていないけど、確かにボクは本当に『似合わない』とか思ってしまっている。
「やっぱり。イヨヒくんは今あたしのあっちこっちをじっと睨みつけながら言ったのだから何となくね」
「なるほど。あはは……」
さっきボクはチオリを見つめていたのか。無意識に目が勝手に行ったね。
「実は一度短く切ってみたこともあるけど、その時は母さんも父さんもなぜか『この世の終わり』みたいな顔になって……」
「そういうことか」
気持ちはわかるよ。チオリみたいな美少女が髪を切るなんてすごくもったいないことだから。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
・―――――・ ※
その後ボクたちは一緒に歩いて家に戻ってきた。
ボクが帰って寝室に入ってきた時、緻羽ちゃんはすでにぐっすり眠っている。そもそも寝る前にちょっとこの転生幼女を説教するつもりだったのにね。それは後でいいか。今気分がいいから見逃しておいてあげる。
ボクはこの世界に来てからちょうど一週間後の今日も、いい思い出のできる日だったね。
そしてもうすぐ夏休みは終わり、ついボクも学校に通う日が来たる。学校楽しみ。
2章は終わり、これから学校生活の話に入ります。




