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いよひ 〜異世界幼女姫だったボクは日本美少女勇者の故郷で平和に暮らす~  作者: 雛宇いはみ
2.4章 〰目の前の広い海と遠い空のお話〰 〜
58/64

58:なら今夜一緒に……

 「チオリは深昼(みひる)とは仲がいいようだね?」


 海岸まで行って散歩して、途中で深昼という友達と会って別れた後、やはりボクは彼のことが気になって仕方ないからすぐチオリに訊いてみた。


 「うん、小学生の頃から知り合ってたよ。いつも一緒に遊んだり勉強したりしていた。深昼はあたしより勉強できる子だから」

 「そうか。頭がいいよね」

 「でも別に教えてもらうばかりではないよ。数学だけあたしの方が得意から」

 「そうだね。チオリは数学好きだよね」

 「運動のこととかもね。深昼は昔あたしよりずっとちっちゃくて弱かった子だよ。今身長追いつかれたけど」


 チオリは身長のこと随分気になっているようだな。ボクもその気持ちわかるかも。むしろチオリより気になっている。


 「そうか。やっぱり普通の男の子はそうだよね。青春になるとだんだんと身長が伸びていく。例外はボクくらいかな」


 そう考えるとなんかまた落ち込んでしまう。


 「いいんじゃないか。ちっちゃい方が可愛いから」

 「……」


 チオリにとってそうだろうね。もしかしてボクがちっちゃくてよかったかもね? つい楽観的にそう思ってしまったけど、なんかこんなことでたとえ勝ってもあまり嬉しくないかも。


 「ね、それなら深昼……。いや、何でもない」


 今『なら深昼よりボクの方がいいとか思ってる』って訊きたいところだけど、さすがにこんな直接な質問はやばいよね。変だとお思われたらどうする?


 それに『可愛い』とかで評価するなんて。まさかボクと同じように、深昼もいつも子供扱いされているよね? ならちょっと安心かも。


 「イヨヒくん、さっきからなんか深昼のこと気になっているようだね?」

 「え? まあ、そうだね」


 確かにさっきからボクはずっと深昼のことばかり考えて、頭から離れない。なんでだろうね。


 「もしかして、イヨヒくんは、深昼のこと……」

 「はい?」

 「いや、何でもない。深昼のことはどう思うのかな?」


 今なんかちょっと気まずい雰囲気(ふんいき)になっているようだ。チオリは何を言おうとした? もしかしてボクが深昼のことを警戒していると気づいたの? ボクはそんなこと考えては駄目だよね。彼はチオリの友達だし、これからボクの学校の友達にもなるのだから、これからボクも彼と普通に接しないと。それに悪い人ではなさそう。


 「いい人だと思うよ。やっぱり、ボクも深昼と仲良くなれたらいいね」

 「うん、心配しないで。イヨヒくんはきっと仲良くなれるよ。深昼だけでなく、他の学校の友達とも」

 「そうかな。そこまで自信がないけど、ボクは頑張る」


 チオリと一緒にいられたらそれだけでも随分嬉しいとは思ったけど、やっぱりここでできるだけたくさん友達を作ってみたい。いつもぼっちだった昔みたいなのはもう嫌だ。たとえ仲良くなれなくても敵を作らない。誰かと争うのも嫌だから。




・―――――・ ※




 そしてボクたちは家まで帰ってきた。その時……。


 「あ、深昼からのメッセージだ」

 「え?」


 さっき会ったばかりなのに、何か用なのかな? つい気になってしまう。なんか嫌な予感が……。


 「今夜一緒に晩ご飯を食べたいって」

 「へぇ!?」


 なんかいきなりだね。なんで? まさかこの人は本当にチオリのことを……。


 「あたしが帰ってきたことを深昼は友達に伝えたらしい。そうしたら早く会いたいって。だからみんなと晩ご飯に」

 「あ、なるほど」


 2人きりではなく、他の友達と一緒のようだ。なんかホッとした。


 「でも、どうしようかな……」


 せっかく友達の誘いなのに、チオリはなぜか躊躇(ためら)っているようだ。


 「行きたくない理由でもあるの?」

 「そうじゃないけど、ただイヨヒくんも一緒に行けたらいいと思っている」


 なるほど、どうやらチオリはボクのことを考えているようだ。一緒に行って欲しいの? 本当にいいの?


 「ボクのことは気にしなくてもいいよ」

 「もしイヨヒくんも一緒に行きたいのならメッセージで深昼にそう伝えておくよ」

 「大丈夫なの? ボクが一緒でも?」


 誘われていないのに……。


 「もちろんだよ。みんな同じ学校で同じ学年の友達だし。もしかしてイヨヒくんと仲良くなれるかもしれない」

 「そうだね」


 確かにこれから一緒の学校に通う人と仲良くしておいた方がいいかもしれない。でも……。


 「でもやっぱり()めておこう」

 「え? なんで?」

 「みんなチオリといろいろ話があるはずだよね。ボクが邪魔しては悪いよ」


  もしこれは本当にただチオリと深昼2人だけなら、ボクは是非(ぜひ)邪魔しに行く気になるかもしれないけど、たくさん友達と一緒ならあまり気にしなくてもいいか。


 みんなチオリのことを心配して早く会って話し合いたがっているはずだ。それに異世界に行ってきたことは秘密だから、ボクが一緒にいたら誤魔化(ごまか)しにくくなるはず。


 「邪魔とかそんなことないよ。大丈夫だよ」

 「ううん、やっぱり遠慮しておく。それに家に緻羽(ちはね)ちゃんもいるし」

 「そうか。なら仕方ない。じゃ、ごめんね。今夜だけは一緒に家で晩ご飯食べられなくなる」


 そういえばこの一週間晩ご飯はずっとチオリと緻羽(ちはね)ちゃんと一緒だったね。でも毎日はさすがに無理だよね。別に今日一日くらい……。チオリがいないとちょっと寂しいかもしれないけど。


 「いいよ。毎日一緒だから」


 こういうわけで、今夜の晩ご飯はチオリと別々っていうことになった。


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