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いよひ 〜異世界幼女姫だったボクは日本美少女勇者の故郷で平和に暮らす~  作者: 雛宇いはみ
2.3章 〰北陸新幹線と超巨大都市東京のお話〰 〜
54/64

54:転生幼女と一緒にお風呂に入る羽目になったよ

 「イヨヒくん、あたしはお風呂(ふろ)終わったよ。次はイヨヒくんの番だね。緻羽(ちはね)があっちで待ってる」

 「うん」


 チオリがお風呂から()がって、ボクを呼びに来た。


 「チオリ、その服は?」

 「あ、あたしの着てる服? これは浴衣(ゆかた)だよ。日本の伝統的な衣装。つまり、日本人が昔からよく着ていた服装だよ。昔の日本人はこれを着て出掛けることも多かったけど、今の時代では(まつり)の時やホテルとかで寝る時に着ることが多いみたいだよ」

 「そうか。なんか似合うよ」


 綺麗な服装だ。チオリが着るととても可愛い。ボクもこんな服を見たらなんか着てみたい。


 「イヨヒくんと緻羽の分も準備しておいたよ。お風呂から上がったら着て」

 「本当?」


 やっぱりボクも着られるよね。ボクなんかはこんな服を着てもチオリみたいに可愛くなれないかもしれないけど。


 「なんか嬉しそう。やっぱりイヨヒくんは可愛い服を着るのが好きだね?」

 「うん、子供の頃もそうだったし。男になっていた時は全然こんな感じではなかったけど、今体が女に戻ったから」

 「イヨヒくん、精神は女の子に戻ってるってこと?」

 「それは……」


 不本意だけど、その通りだよね。でも変わらないものもあるよ!


 「まあ、一部だけだよ。でもやっぱり女の人と一緒にお風呂に入るのは抵抗感あるよ」

 「そ、それは仕方がないよね。気持ちがわかると思うけど、やっぱりこれから慣れないと困るね」

 「うん、わかっているよ」

 「それより、ほら。これはイヨヒくんの浴衣(ゆかた)。今早く緻羽のところに行ってね」

 「わかった。緻羽ちゃんがあっちで待っているよね」

 「浴衣(ゆかた)の着方はわからなければあっちの人に手伝ってもらってもいいよ。実は着方わからない人も多いよね。特に外国の人。イヨヒくんは外見も外国人に似ているからきっと聞きやすい」

 「うん、ありがとう」




・―――――・ ※




 そしてボクは一人でお風呂の前の着替え室に入ってきた。


 やっぱり周りの人はここで服を脱いで裸になる。全部丸見えだよ。ボクは自分自身と緻渚さん以外に女の裸を見たことなかったので、今もなんか慣れていなくて体が震えている。


 そんなボクを周りの人が見ているようだ。そもそもボクの姿は目立っているし。不審者みたいな行動をしたらもっと怪しまれるよね。ボクも早く脱いで中に入らないと。


 「イヨヒお姉ちゃん、やっぱりここに」

 「緻羽ちゃん!」


 ボクがもじもじしている間にいつの間にか緻羽ちゃんがこっちに歩いてきた。しかもスッポンポンの姿で! まあ、こんな場所だから当たり前だけど。


 「なんか遅いから」

 「あ、ごめん」

 「イヨヒお姉ちゃん、なんで視線はあっちに向いてるの?」

 「いや、その……」


 だって緻羽ちゃん、裸だから! 今直視するのはなんか(まぶ)しすぎるというか……。


 「まあ、とりあえず……」


 今目を逸しているから、緻羽ちゃんはどんな顔をしているかわからないけど、声や雰囲気から感じられた。きっとニヤニヤ笑っている。何かやばいこと企んでいる。


 「ここでチハネが脱がしてあげるね」

 「要らないよ! すぐ自分で脱ぐよ」


 やっぱりこの子は……。緻羽ちゃんも緻渚さんも母娘(そろ)ってボクに対して積極的だ。チオリだけは普通でよかった。




・―――――・ ※




 「緻羽ちゃん、そこ勝手に触るな!」


 お風呂に入っている途中、緻羽ちゃんのスキンシップは激しい。


 「イヨヒお姉ちゃん、肌綺麗。さすがお姫様」

 「お姫様って、昔のことだよ。それに今までずっとあれだったし。てか、あなたこそなんでこんなに平気なの?」

 「女の子同士だからそんなに照れる必要がないよ」

 「それはそうだけど」


 緻羽ちゃん、緻渚さんと同じようなこと言っているね。それより、この子もボクと同じく元男だったよね? よくも『女の子同士』って、きっぱりと言うね。しかも元騎士だよ。それなのに、お姫様とこんなにスキンシップしていいの? 


 「緻羽ちゃん、なんで恥ずかしくないの?」

 「なんで恥ずかしがる必要があるの?」

 「なんでって……。その……」


 ボクが他の人に聞こえられないように、声を小さくした。


 「緻羽ちゃんもボクと同じ……その、中身の問題があるのではないか?」


 それなのに、なんかあまり照れそうな様子はない。仲間(・・)だと思っていたのに!


 「まあ、正直全然恥ずかしくないわけではないよ。最初はどうなるかと心配していたけど、なんか意外と落ち着ける」

 「そうか」

 「やっぱり、体は女の子だし。しかもまだ(おさな)い。幼女だよ! ヨウジョ」

 「自分で言うか!? この転生幼女! でもまあ、確かに。実はボクも今思ったより落ち着いていられるみたい」


 ボクは周りの人の裸を見るとまだ恥ずかしくてつい反射的に目を()らしたけど、取り乱したわけではない。元男として抵抗感や罪悪感を持っているものの、今体が女の子であるおかげか、意外と自然と感じている。


 でも逆に、もし今男の人のを見たら……。いや、()めよう。ここは女風呂だ。想像するだけでなんか頭が沸騰(ふっとう)しそうだよ。


 「とはいっても、やっぱりチオリと一緒に入るのはまだ……」


 チオリはまだボクが男だと認識しているから。ボクもチオリの前では、いつもより自分が男だと感じてしまう。


 「そうか。好きな人だから大事な時に取っておきたいよね?」

 「またそんなこと! 別に、それは違うからね」


 ボクのチオリに対する気持ちは、やっぱり緻羽ちゃんに(つつ)抜けだ。最早(もはや)誤魔化(ごまか)す余地はないかも。これからもこんな(ふう)揶揄(からか)われていくのだろうね。


 だから実はこのことについて素直に緻羽ちゃんに打ち明けたら? でもまだそう簡単には……。


 「チハネはイヨヒお姉ちゃんの恋を応援しているよ」

 「もう、だからこの話は……」


 やっぱり言えないよ。応援してもらえるのは嬉しいけど。まだ不安だから。


 「イヨヒお姉ちゃん、素直じゃないね。うふふ」

 「おい、緻羽ちゃん……。まったく」


 緻羽ちゃんはどさくさに(まぎ)れて、ボクに抱きついてきた。


 もちろん、お互い服着ていないから肌と肌は……もうこれ以上の説明は必要なさそう。


 「変なところ触るなと言っただろう!」

 「痛っ!」


 ボクは軽く緻羽ちゃんの頭を(こぶし)で叩いてみた。この転生幼女、本当に油断はできない。


 「イヨヒお姉ちゃん、(ひど)い! 幼女(いじ)めるの? 幼女は優しく扱うべき存在だよ」

 「……」


 だーかーら、『幼女』って自分で言うの!? 中身は違うくせに。もういい。これ以上突っ込まないぞ。


 結局今回のお風呂でなんか緻羽ちゃんはすごく満喫(まんきつ)しているが、それに対してボクはなんか随分疲れてしまったよ。




・―――――・ ※




 「ただいま……」


 お風呂が終わった後、ボクと緻羽ちゃんが部屋には戻ってきた。チオリもこの部屋の中に待っている。


 「イヨヒくん、お風呂はどう?」

 「うん、問題ないよ。それにこの服……、ボクも着てみたよ。どうかな? 変かな?」


 お風呂の後ボクも緻羽ちゃんも浴衣(ゆかた)に着替えた。着方はやっぱりよくわからなかったから、あっち風呂場で偶然会った人に手伝ってもらった。


 「二人とも浴衣(ゆかた)よく似合うよ。可愛いね。特にイヨヒくん」

 「そ、そう? でもやっぱりチオリの方が……その、似合うよ。綺麗だよ」


 褒められて照れたので、ボクも照れ隠しのために褒め返した。


 「イヨヒお姉ちゃん、顔真っ赤」

 「緻羽ちゃん!」


 この転生幼女さん、お願いだから揶揄(からか)うのは()めて!


 「姉ちゃんも顔真っ赤」

 「ち、緻羽! 別に赤くなんて……」


 どうやら揶揄(からか)われたのはボクだけではないようだ。


 「2人ちゃんとドライヤーで髪を乾かしてね」

 「はーい」

 「ちょ、ちょっと緻羽ちゃん、ボクの顔にドライヤーを向けるのは()めて!」


 この転生幼女様は本当に揶揄(からか)いと悪戯(いたずら)好きだよね。でも彼女の楽しんでいる顔を見ると、ボクもなんか笑顔になってしまう。


 「2人がこんなに中がいいところを見て、あたしも嬉しいよ」


 ボクもとても嬉しい。こんなに2人と仲良くできて、今はなんか本当に3姉妹になったようだ。


 でもチオリにとってボクが弟だよね? これって『姉妹』と呼べばいいの? まあそんなことはもうどうでもいいか。


 いろいろ大変だけど、大切な2人と姉妹になれるなんて、今ボクは本当に幸せだよ。この世界に来てよかった。


 これからもよろしくね。チオリ、緻羽ちゃん。


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