46:プログラミングって魔法と似ているものなの?
「イヨヒくん、一緒にゲームをやろうよ」
ボクが泣き止んだ後、チオリと一緒にゲームをやろうと誘った。
「いいの? でもボクは遊ぶ方法なんて全然わからないよ」
「大丈夫、ちゃんと教えてやる。ゲームはすごく楽しいよ。一緒にやるともっと楽しい」
「そうか。チオリはゲームが好きだよね」
あっちで一緒に冒険していた時から、チオリはよくこの世界のゲームの話をしていたね。あの時はあまり意味わからなくて、想像しにくかったけど、チオリはなんか楽しく語ったから、本当に楽しいものだろうね。
「うん、もちろん、大好き。それにやるだけではなく、自分で作ることも楽しいよ」
チオリはちょっと自慢げな顔で言った。
「ゲームを作る? チオリが?」
「そうだよ。実はあたしが自分でゲームを作ってる」
「ゲームって、自分で作れるものなの?」
「当たり前じゃないか。作る人がなければ、ゲームはどこから来るのか? ゲームを作るのは神様ではなく、我々人間たちだ」
「あ、確かにそうだよね」
なんか遊戯のことになるとチオリは特に熱心だよね。
「でもどうやってゲームを作るの?」
「いろんな技術が必要だけど、パソコンやスマホでのゲームなら一番大事なのはやっぱりプログラミングだね。これはあたしの唯一の特技だ。これしか才能がないと言われるくらい」
「チオリの特技? いや、チオリはいろいろ才能あるはずよ。剣や魔法とか」
「いや、こっちの世界での話だよ。まあ、確かにあっちの世界ではあたしがチート勇者になったね。でもこっちではあたしの剣術は凡才だよ。ただ趣味レベルだ。プログラミングの方はなんか上手くやっていけるようだ」
「プログラミングって何?」
難しそうな単語だけど、どうやらチオリの大好きなものみたいだから気になる。
「ちょっと説明しにくいけど、要するにあっちの世界での魔法と似ているものだな」
「は? どういうこと? プログラミングってこの世界の魔法ってこと?」
「えーと、そこまででもないが、基本的な原理などは案外似ているよね。ただ魔法は魔力を使うのに対し、プログラミングはパソコンを使う」
「そう? なんかわかったような、わからないような……」
「まあ、あたしもあまり上手く説明できない。えーと、要するに、あっちの人間が『魔力』を持ってるから『魔法』を使っていろいろ楽しいことができるよね? それと同じように、ここでは『パソコン』があるから『プログラミング』を使い熟せたらゲームなどいろいろが作れる」
なんか難しいし、今のチオリの説明もなんかまだあまり要領が足りない気がする。でもなんか少しはわかってきた。
「えーと、つまり……、プログラミング=魔法ってこと?」
「まあ、大体こんな感じかな。詳しくは興味があったら後で教えてあげるよ」
どうやらそんな風に認識すればいいみたい。
「うん、是非」
まだよくわからないけど、とりあえずなんかボクも興味が湧いてきた。魔法と似ていると言われたら尚更だ。
「本当にチオリはプログラミングとゲームが好きだね」
「うん、あたしの将来の夢はゲームプログラマー」
「プログラマー?」
「プログラミングの使い手って意味。プログラミング=魔法なら、プログラマー=魔法使いだね」
「なるほど」
魔法使いってボクみたいに? ならボクも『プログラマー』になれるのかな?
「将来の夢か……」
「うん、イヨヒくんもここで何か将来やりたいことを見つけないとね」
「ボクのやりたいことか……」
「昨日、父さんのお見舞いに行ってきた時にもこんな話をしたよね?」
「あ、そう……だね」
そういえばそんな話もしていたな。
「あの世界にいた時も、あたしは『まだ元の世界で将来やりたいことがあるのだから、どうしても必ず戻ってみせる』と思っていた。ひょっとしてあの神様もわかってくれただろうね。結局無事にここへ帰ることができた」
「そうかもね」
ボクもチオリも神様に感謝だね。
「まあ、でも以前あっちに召喚された勇者の中にも、元の世界へ帰らずにあっちの世界で暮らしていくことを選んだ人がいるよね」
「人の考え方はそれぞれだから、そんな考え方はわからなくもないけど、やっぱりボクならきっとあそこを選ばないね」
「あっちで何か夢を見つけたから、かもしれないよね」
「あ、そうかも。ボクも……元の世界にいた頃、偉大な魔道士を目指して努力してきたよ。でもここに来たから魔法は使えなくなった。あそこに帰るつもりはないし。だからそれはもういい。だからボクは……ここで改めて何かやりたいことを探してみるよ」
「うん、そうだよね。それでいいよ。イヨヒくん」
「ボクも本当にここの学校に通えるの?」
学校に通ったらいろいろ勉強することができるし、たくさんの人と知り合うこともできる。
「母さんに任せておいたから、心配ないと思う。それに明日はそのために東京に行くでしょう」
そうだよね。明日ボクたちは東京に行くのだ。国籍改竄のために……。
「そうだよね。本当に緻渚さんには感謝している。楽しみにしている」
なんか悩み事は一件落着みたいな感じだね。今までチオリはいつもボクのことを気遣ってくれていて、何か悩んだら助けようとしているから。これからもチオリと一緒にいられて本当に心強い。
「さあ、それよりゲームをやろう」
「あ、うん。わかった。やってみるよ」
ゲームはとりあえずチオリの好きなものだからとりあえずやってみたいね。
「あの……」
2人は一緒にゲームをやろうとしたら、緻羽ちゃんは入ってきた。
「緻羽……」
「姉ちゃんたちここにいたのか」
「うん、ゲームをやろうとしているよ」
「ゲーム? 姉ちゃんがいつもやってるもの?」
「うん、イヨヒくんも一緒に遊ぶって。緻羽も一緒に遊ばない?」
「はーい。チハネも一緒に遊びたい!」
こうやって3人一緒に昼までゲームやっていた。これはボクにとっては初めてのパソコンゲーム。案外楽しかった。チオリはゲームが好きっていう理由はわかってきた。
それにしても、一緒にゲームをやったら仲良くなれる気がする。この2人は本当に仲のいい姉妹だ。そしていつの間にかボクもこの家族の一員になったみたい。




