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悩める聖女


「何をやっているのだ?カノン・サークレット。」


「っ!!」



 びっくりしたー!こん棒振り回すのに集中しすぎて周りの気配に気付けなかったー!!

 なんと後ろにブルー先生が腕を組んで怪訝な顔で立っていた。



「いくら平民出とはいえ、淑女がそのような格好でこん棒を振り回すなど…ぶふっ……失礼。いや、もし悩みでもあるならこの私に話してみるのも一つの方法ではあるぞ?」



 制服姿でこん棒を振り回す女生徒がツボに入ったのか、こらえ切れなかった笑いを押し隠して生活指導でもあるブルー先生が私を心配してくれているらしい。奇っ怪な行動をする生徒を見つけたら、それは先生なら普通は心配する事案だ。

 悩みか…。素直に相談して良いものかどうか。

 なるべく乙女ゲームルートを回避するため、積極的には友達も含め他人に接点を作らないようにしている。美形男子を攻略した所でBLルートしか道はないし、いやぶっちゃけ見る分にはいいんだけど自分がとなると、所詮見る専ですのでね。我が心のバイブルの恋愛指南書、源氏物語とか本当に奥が深い。

 ライバル悪役令嬢も下手に絡んではイベント発生になりやすいだろうし、あと異世界に来てまで女のごたごたに巻き込まれるのは正直めんどくさい。私は平和主義なのです。

 そのためお悩み相談なんてできる相手は今のところいない。それをふまえて、ブルー先生のこの提案には少々グラッときた。攻略キャラではないというのもポイント高い。それに転生前、女の身の私にはこの男性特有の生理現象は不可解すぎて、男性のブルー先生ならもしかして良いコントロール方法を示してくれるかもしれない。でもカノンが実は女子生徒ではなく男子生徒であるというのはトップシークレットなので、う~、どう説明するべきか。



「あの…、悩みといいますか…、その…聞いていただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ!遠慮なくいいぞ!」


「あふれる渇望を押さえ込むにはどうすればよろしいでしょうか?」


「……う、ん?」


「常にではないのですが、押さえようもない程の熱をもて余す時があるのです…。どうすればこの熱を押さえる事ができるか…今試行錯誤中でして。」 



 抽象的に且つ要点は押さえて男性の生理現象について尋ねてみたが…いかがでしょうブルー先生。

 真剣に考慮してくれているブルー先生をじっと待つこと5分。重々しく口を開いてナイスアイデアをくださった。



「赤の洞窟に魔物討伐に行くか?」



 魔物討伐!?



「力が漲り過ぎて発散場所を求めているのだろう、魔物討伐で力を使えば、夜もぐっすり眠れて、清々しく朝を迎える。身体の不純物を落としていけば、熱も落ち着いてくるだろう。」



 ありがたい助言に納得。なるほど、カノンくんが起き上がらない位、魔物討伐で体力を消費してこいと言うことですね!運動会後とか洒落にならないくらいの体の疲れに、ただただ休養を欲する肉塊と化していた過去を思い出す。教師時代には国語教師にまでなぜ強制参加種目を作るんだと運動会プログラムを丸めたものだ。



「キミ1人では心配だから、まずは私が付き合おう。明日が丁度学園も休みだからな、朝から早速行くか?」


「はい!よろしくお願いいたします!」



 自分のレベルの高さが果たして魔物討伐でどこまでやれるのか、やはり実際やってみないことにはわからない。今のところ学生らしく学園と寮での生活しかやっていないので、実戦となると…

 わくわくしかない!!!

 いきなり降ってわいた魔物討伐イベント。このゲームは乙女ゲームながらRPGも売りだったらしいので、それなりに強い魔物も用意されているはず!ファンタジーぽくなってきた事にも期待が膨らむ。ああ、今日眠れるかな、いやいや明日の為にも早く帰って寝て体調万全にしなくてはいけない!



「明日朝、何時も通りの時間で校門まで来るといい。レベル的には大したことない一階層を回るつもりだが、油断はせず、怪我のないように。では明日!」



 自分の考えに没頭していた私を尻目にブルー先生が明日の注意事項を丁寧に説明してくださった。家に帰るまでが遠足ですね、わかります。

 突然降って沸いたRPG要素に胸を高ぶらせ、明日の準備をせねばと、私もその場を後にするのであった。







 

 聖ホーリュウ学園では、全寮制でしかも完全個室というなんとも豪華な金遣いで造られた寮が6棟並んで建っている。1年棟2年棟3年棟と、それぞれ男女の寮が別にあるため、一種の豪華な団地を思い浮かべてしまうあたり自分の庶民な頭は平民聖女に感覚的には近いと思う。これでもし庶民の感覚の私が高貴な身分のキャラに転生していたらどうなっていたのだろか。庶民臭い公爵令嬢様…それはそれで需要ありそうかも。



「えーと、動きやすそうな装備は~。」



 私に与えられた部屋は、1階の一番左端だった。覚えやすい!最近なんとなくわかったんだけど、位が上の家柄程階が上層部階らしい。私が教師なら、それは平等性にかけるのでは?と疑問を感じる所だが、何しろここは異世界だ。階級社会が強い世界なんだろうな。

 自分の部屋に戻り、早速明日の準備を開始することにした。



「聖職者の衣…ひらひらしてるな。黄金聖女の衣…目立つわ。」



 アイテムボックスをあさって試着を繰り返すが、アイテム数の多さに辟易してきた。もっとこう普通な見た目の装備ないかな~、ステータスは多少下がってもいいから、ん?カノンの服?どれどれ。



「あ~、普段着かいっ!」



 いたって普通の平民少女が着るようなステータスは上がらないが安らぎは100%アップな洋服だった。学園に入る前にカノンが愛用していたシンプルなデザインの動きやすい服なので確かに馴染んでいて動きやすい。下手に防御力の良すぎる装備より、こういった戦闘ど素人を全面に出した格好が普通かな。よし、これに決めた。

 愛用普段着を装着し、鏡の前でターンをして確認。さすが主人公可愛らしい。こんな可愛らしい私ですが、明日はバッタバッタと魔物退治を全力で楽しむ所存です!



ブルー先生の下ネタ相談室

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