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約束


 今日は一日中魔物学を叩き込まれた頭が、勝手に脳内対魔物戦闘シュミュレーションを始める放課後。

 頭を冷やすために学園内を散歩することにした。

 一日中同じ科目を受けるって結構キツいな。効率良いのか悪いのかよくわからない。私的にはせめて同じ科目は2時間分位で留めてほしい派である。

 教える方も詰め込み授業はキツいだろう、私なら断りたい授業スケジュールだ。

 そうだ、こんな時は花を見に行こう。

 花は良い。綺麗に咲く花を見るのは心の健康の栄養になる。レッツ脳内デトックス。

 さて、どこの花を見に行くか。校内には4ヶ所も花見スポットがあるから迷うなぁ。

 うん、今日はあそこにしよう。











 花見に向かう先は学園の中央。

 実は入学式の日にアクアリータとエルフェンに会った場所には、あれ以来訪れていなかった。いきなり攻略対象キャラとライバルキャラに会ったものだから、少々避けていたのもある。

 中央の薔薇園は近付くにつれ、芳しい香りが届いてくる。はぁ~アロマテラピー。

 薔薇の香りを堪能しつつゆっくり歩を進めると、更に香りが濃くなってきた。

 濃い香りと共に現れはじめた薔薇を確認。

 ここは普段結構見物客が多い場所だが、今日は人影もなく一人占めできるようだ。

 しっかし薔薇だけでこんなにも種類があるのすごいよねぇ。色や形、香りも様々。きっとこの世界でも、薔薇愛好家による品質改良の熱は凄まじいのだろう、だなんて浸っている時だった。




 カランッカラン




 足元に何やら落ちてきた。落ちてきたというより、投げられたような気もするけど。

 足元のモノを確認すると、なんと小型ナイフ大の短剣だった。誰だ刃物を人に投げる危ない人物は!

 とりあえず手に取ることはせず観察すると、柄の部分に家紋が刻まれていた。このラッパのマークは見覚えあるぞ、えーと、あれだ、あそこ…



「ラッパのマークのせ…」


「えぇ~い!早く手にとれ!!」



 おっといけない著作権、とお口にチャックしていたら右奥茂みからトーラン・モンタールが凄い勢いで出てきた。

 ああ、そうだそうだ。このラッパのマークの家紋はモンタール家のものだった。

 とりあえず言われた通りに短剣を拾うと、「よし!拾ったな。」と不敵な笑いを発しだした。



「学園再開の6日後、夕の4時刻第4演習場にて待つ!」


「?」



 何を言っているんだろうこいつは。連休終わってから学園で待ち合わせだ?ん?もしかして攻略ルート入った!?やはりどんなに避けてもゲームのシナリオは回避できないというのかっ!



「その様子では【手合わせの儀】を知らないな。」



 仕方のない奴だなぁと、腹立つ顔で説明をし始めだした。



「学園には生徒間での無闇な争いを避けるため、公正に試合として許されるための習わしがある。勿論両者の合意の元にという前提だ。そのためにはまず、【手合わせの儀】を行うんだ。」



 どうやら学園公認で生徒の喧嘩を許してるということらしい。

 だからラムーシュらは学園で魔法ぶっぱなし合戦をしてたわけだ。学園が許してるというのは、学園を守るディアナ先生がいることも強いだろう。



「【手合わせの儀】というのは、家紋が入った品を相手に受けとってもらってから成り立つ。だから受け取らなければ【手合わせの儀】は拒否することも可能だ。」



 なんだか西洋の決闘の申し込みに手袋投げつけるやつみたい。

 しかしそうなると、家紋を持っていない平民諸君は喧嘩を受けるしかできないということ?なんたる不平等!

 しかもさっきトーランは、家紋のついた短剣を私に早く手にとれ!と言ってきた。だから拾っただけなのに、ほぼ強制ではないかこのやろう。



「なんの勝負をするんですか?」



 仕方がないから相手になるしかないが、勝負内容はなんだろうか。普通に拳で勝負か魔法を交えての勝負か。どちらにせよ負ける気がしない。



「休みの期間、俺は物凄く魔力を上げ強くなる!」



 自主練宣言?



「だから今度はお前の魔法壁を破る!」


「なるほど。」



 この間の合同授業で私の結界魔法を崩せなかったのが悔しかったから、休みの期間でパワーアップして私を負かしたいというトーラン君。



「わかりました。」


「フン!自信満々か!」



 も~、めんどくさい男だな。

 勝負を了解したらしたで一言多いトーランと妙な約束をかわしていると、まさかの第三者が乱入してきた。



「カノン・サークレット!」



 今度は誰だと声のした方を見ると、小さな光る物体が飛んできた。ナイスキャッチしたのは懐中時計。それもアカルナ王家の炎を纏ったドラゴンモチーフの家紋付き懐中時計。



「私も申し込んでいいだろうか。」



 誰か【手合わせの儀】のちゃんとした作法をこの二人に教えてやってはくれないだろうか。強制的に手に取らせる行為は決して正解ではないからね!


 左奥の繁みから現れたのは勿論アカルナ王家の次男坊様。一応此方に伺いをたててる辺りはトーランよりましではある。

 エルフェンの登場にはトーランも驚いたようで、目を見開きながら「考えることは同じか…」とかブツブツ言っていた。

 

 物凄く澄んだブルーの瞳でこちらを見つめ、側まで歩いてきたエルフェン皇子に気圧され、こちらまで相手を見つめ返すこと数秒。

 (トーランにOKを出した手前、エルフェンを無下にすることも出来ないか。)



「同じ場所時間で構いませんか?」


「ああ、かまわない。」



 連休明けに二人をまた落ち込ませる約束が決定してしまった。


 二人がどう特訓してレベルを上げてこようが、カノンの現在レベルに追い付くことはきっと難しい。

 実は最終数字なのかなと思われたカノンのステータスは、地道な魔物退治で地味に上がりつつあるのだ。レベル99が100に上がった時、どこからともなくレベルアップの音が聞こえて驚き転んでしまった。

 しかも連休中、私は危険地帯でレベルの高い魔物を相手にするはずだ。二人との力の差は縮まることはきっとないだろう。でもこの二人頑張って特訓するんだろうな。うん、自宅学習の成果がどれ程のものか楽しみにしていよう。

 


「勝負はこの間の合同授業と同じ、カノン・サークレットの結界を攻撃魔法で破ること。よろしいでしょうかエルフェン様。」


「承知した。」



 私は蚊帳の外に、2人が確認しあっている。

 これってどうなのかな?この2人の攻略ルートが一歩進む事態にならないだろうか?また完膚なきまでにプライドをへし折ってしまえば、好感度も駄々下がりになって攻略には程遠くなってくれる展開か。きっとそうに違いない。



「ハッハッハッ!約束したぞ!!せいぜい首を洗って待っていることだな!」


「では6日後に。」



 どこの悪役だと言わんばかりのトーランと、涼しげな目元を曇らせたアンニュイ美形顔のエルフェンが話を終わらせ、私を1人残し去って行った。

 

(めんどくさいなぁ)


 ため息1つ落とし、中断していた薔薇観賞で気分を落ち着かせるべく二人とは逆方向に足を向け奥へ移動。


 手には短剣と懐中時計。それを見るとまたため息1つ。 

本当月日が経つのは早いもので、気付けばメリークリスマス~ってきっと次の投稿では挨拶してるんだきっと。

はい!ノロノロ運行ですが楽しんでいただけると幸いです

( ^ω^ )


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