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大和田銀次郎の異世界冒険記  作者: メノクマ
第二章 ハラパン王国
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第2話 盗賊とテンプレイ

ハラパン王国 カベドン辺境伯領 城塞都市テンプレイ

転移した場所から道なりに歩くことおよそ20分。

50メートルほど先で行商らしき旅団が賊に襲われかけていた。

だが銀次郎にはこの事態が予測できていたので、

彼が一団を助けるべく駆け出すのにさほど時間は掛からなかった。


なぜならば今のこの時期にこの付近を散策すると、

三割で賊に遭遇するとガイドブックに明記してあったからだ。

被害者を助けた場合は大概何かしらのお礼が貰えるとも。

何しろ銀次郎には金が無い。持ち物を換金するまで無一文なのだ。


二十人ほどの賊が獲物にジワリと迫る


「ぐへへへ命が惜しければさっさと荷物を出しなぁ」

「抵抗ぐぴゅ」ポトリ


いままで脅し文句を述べていた賊の一人の首が落ちる。

あまりに突然のことで誰も事態を把握できず呆然とする。

死角から忍び寄った銀次郎が手早く首をはねたのだ。

一団が状況を理解するまでの僅かな時間で銀次郎は更に

四人の賊の首をはね、次の獲物への攻撃を開始していた。


「なんだコイツは!野郎共ぶっ殺せ!」


首領の激を受けた賊が一気に襲い掛かるが銀次郎は難無く躱し、

冷静に一人一人首をはねていく。それは異様な光景だった。

三十秒も経たぬうちに二十人程いた賊の数が半分を切っていたのだ。

しかもそれを行った男は汗ひとつ掻かずにゆらりと詰め寄っている。

恐慌に陥りそうになった首領は僅かに踏みとどまり指示を出す。


「撤退だぁ!死ぬ気で逃げろ!」


首領が馬に乗り駆け出した頃には賊はわずか三人となった。

謎の男から40メートルほどの距離が開き、

どうにか生きながらえたと首領が安心したのも束の間。

なぜか部下二人と自分の腹に剣が突き刺さっていたのだ。


困惑の表情を残したまま首領の意識は闇に沈んだ。

賊の残した剣を銀次郎が力任せに投擲して殺害したのだ。


凄惨な現場をしばしの静寂が包みこむ。それもそのはずだ。

当初の賊の脅威は去ったものの旅団は警戒を緩められない。

なぜならば目前の謎の男が何者なのか誰も理解できないからだ。

下手に話しかけると自分たちにも被害が及ぶかもしれない。

どうしても先ほどの場面が脳裏に焼きついて足がすくむのだ。


銀次郎は困っていた。あれ?なんなのこの空気。

助けたんだからお礼ぐらい言ってくれてもいいんじゃないの?と


銀次郎は慣れない営業スマイルを作ったまま旅団の女性に近寄り話しかける。


「よう!嬢ちゃん達は見たところ行商のようだが大丈夫だったか?」


すると商人と覚しき女性は思わず「ヒッ」と後ずさる。

両手に巨大な刃物を持った血塗れの大男が

ぎこちない笑顔のままいきなり話しかけてきたのだから、

それが命の恩人であろうと驚いてもおかしくはないのだ。


その場に微妙な空気が流れる。銀次郎が困惑していると

旅団の代表らしき中年の男が声をかけてきた。


「いやはや、この度は大変申し訳ありませぬ。

せっかくのご好意で命を救っていただいたというのに礼も申さず、

娘が失礼な態度をとってしまいました。どうかご容赦を」


「私めはこのキャラバンの代表を務めております、

ブロディ=ゴールドマンと申します。こちらは娘のシルヴィアです。

大変危険な状況でしたがおかげさまで命を永らえることができました。

私共と致しましては最大限の感謝とお礼を示したく存じます。

つきましては是非とも謝礼を受け取っていただきたく」


「俺は傭兵だからな。無理のない程度でいいから金をくれればそれで良い」


「分かりました。それではこれをお納めください」


男が金の入った皮袋を渡してきたため銀次郎は笑顔で受け取った。

それから5分後。銀次郎が中身を数えている間に出発準備が整ったようだ。


「では我々はこれにて失礼をいたします。またご縁がございましたら、

その時はよろしくお願いいたします」


「おう!おっさんも商売頑張れよ」


馬車を見送った銀次郎はまた道なりに歩く。そこでふと気づいた。

町まで乗せてもらえば良かったのでないかと。しかしもう言えない状況だ。

せっかく颯爽と助けたのに今更そんな事言うのは格好悪すぎるのだ。




更に30分ほど歩くと分厚い城壁に囲まれた巨大な都市が見えた。

銀次郎はさっそく門の前に出来た行列に並ぶ。どうやらここは、

ハラパン王国の辺境伯が収める城塞都市でテンプレイというらしい。


門番いわく身分証の無いものは保証金が必要らしく、

銀次郎は行商からもらった金から40ゴッドを支払いテンプレイに入る。

城門を抜けるとそこにあったのは立派な街並みと人の群れ。

人目で活気がると分かる圧巻の光景だった。

銀次郎がしばらく呆けていると突然後ろから声をかけられた。


「おぅ兄ちゃん。見たところ冒険者のようだがここは初めてか?」


ふと振り返るとガタイの良いオッサンが満面の笑みで立っていた。

この男は間違いなく強い。銀次郎の感がそう告げている。

害意はない様だが目的が分からないためとりえず話を合わせる。


「俺に何のようだ?言っておくが俺は金目のものはもってないぞ」


「そうじゃない。ここには始めて来たように見えたからな。

右も左も分からないだろうから案内してやろうかと思ったんだよ。

つっても、もちろんタダじゃないがな。10ゴッドでどうだ?」


「なぜ俺なんだ?俺なんかより商人に声をかけたほうが良いと思うが」


「目的は2つ。まず一つ目はつながりを持ちたかったからだ。

見る人間が見れば分かることだがアンタが放つ武の匂いは尋常ではない。

若くしてその領域まで上り詰める逸材をそのまま野放しにはできねぇ」

「こう見えても俺はこの町の顔役の一人でね。自分で言うのもなんだが、

不屈のゴンズといえば、顔が広くスラムにも顔が利くって有名人だ。

俺と知り合いってだけである程度のトラブルは回避できるんだよ。

早い話が俺と仲良くするのはアンタにとってメリットがあるってことだぜ」


「二つ目は牽制だな。町のやつらにコイツは俺がツバつけてるから

手を出すなってアピールする必要があったからな」


「なぜアピールが必要なんだ?俺にはそういう趣味は無いぞ」


「ゴロツキ共が門から入ってくるおのぼりさんに目をつているのは

アンタも気付いているだろ?もしアイツ等がアンタにちょっかいでも

かけようもんなら大惨事になるのは目に見えてるからな」


「初対面なのに失礼なやつだ。気の優しい紳士かもしれないだろ?」


「いやそれはないな。アンタなら証拠も残さずに皆殺しにするだろ。

相手の報復も視野に入れて付近一体を掃除する可能性だってある。

スラムにはスラムなりの秩序ってもんがあるんだよ。

それを乱されるのは困る。まぁ理由はこんなところだな」


嘘をついている様子は無い。話を聞く限りでは悪い話ではないようだ。


「銀次郎だ」


「ん?」


「俺の名前だ。親しいやつにはギンって呼ばれることもあるが、

まぁ好きに呼ぶといいさ。フクツノゴンズさんよ」


「ギンか。呼びやすくていいな。俺もゴンズって呼び捨てでいいぞ」


「じゃあ早速案内を頼もうか。ほらよ10ゴッドだ」


「毎度あり。リクエストはあるか?行きたい店があるなら寄っていくが」


「何分こんな都会は初めてだからな。ゴンズに任せて良いか?」


「ギンは冒険者だろう?なら俺のおススメの店を紹介しながら、

最終的に冒険者ギルドへ向かうルートはどうだ?」


冒険者ギルド。テンプレ中のテンプレ。異世界ファンタジーといえば

とりあえず出てくる謎の団体。物語の主人公は必ずといっていいほど

序盤で訪れることでも有名だ。異世界は猫も杓子も冒険者ギルドである。

神が用意したスタートライン。これは行かなければならないのだろう。


「それで頼む。ところでひとつゴンズに聞いておきたかったんだが」


「なんだ?俺が醸し出すダンディズムの秘訣についてか?」


「違ぇよ。お前俺とつながりを持ちたいって言ってたよな?」


「ああそうだな。間違いないぞ」


「ならタダで案内してくれても良かったんじゃないか?」


「いや、初対面の人間をタダで案内とか怪しすぎるだろうが。

端金でも料金を要求する奴のほうが相手にとって敷居は低いだろ」


「それもそうだな」


その後銀次郎はゴンズの案内で町を巡り冒険者ギルドへ到着した。

更新未定

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