第4話 異世界転移
銀次郎視点
この4話の終わりでようやく異世界に行きます。
資材と特殊能力の選別が終わったので、
転移能力の付与が可能なのか確認するため爺を呼び出す。
事前に聞いていたのだが神棚や仏壇等の前で
爺を呼び出すイメージをするだけでいいそうだ。
〈爺の部屋へ移動〉
銀次郎が入室すると爺は真剣な目で5秒ほど注視する。
「そろそろ来ると思っておった。詳しく話すとしよう。
まず結論から言うと付与できるのは最低限の次元転移。
しかも1日1回の使いきりの回数制限つきのものじゃ」
なんだか思っていたよりしょぼいなと銀次郎は思った。
チート能力を通常の転移者の2倍獲得できる今の状況なら、
自由な転移能力ぐらい余裕だろうと秀夫が言っていたからだ。
「お主には分からぬだろうが、ワシが異世界転移に使用している魔法は、
神にしかできぬ超難易度の複合魔法なんじゃよ。
本来ならお主に付与する最低限の魔法すら人間には扱えないのじゃ」
「ならなんで俺はできるんだ?」
「次元転移の魔法は体と魂にとんでもない負荷がかかり、
普通の人間はそれに耐えられずに消滅してしまうのじゃ。
先程体と魂の強度を測らせてらったのじゃが、
お主の強度はとっくに人間を超えておったからの。
これなら次元転移にも余裕で耐えうると判断したのじゃ。
・・・ふむどうやら納得してくれたようじゃの。
では異世界に行く準備が出来たらまた呼ぶがよい」
白い部屋から戻ってきた銀次郎は出張を伝えに行くことにした。
〈大和田組所有のビルに移動中〉
コン コン
「どうぞ」
「失礼するぜ兄者」
銀次郎が入室したのは組が所有するとあるビルの一室であるが、
日本でありながらまるで異世界のような雰囲気を醸している。
何故ならば、どこぞの王族が好みそうなアンティークに囲まれた部屋で
毎日のように王子様が優雅に紅茶を嗜んでいる不思議空間があるからだ。
「誰かと思えばギンか。何かようか?」
銀次郎のことをギンと呼ぶこの男は銀次郎の2歳年上の兄で正義という。
華麗に白スーツを着こなし、細身ながらも筋肉質な体の上に、
金髪翠眼で見目麗しい顔が乗っかったイケメンである。
どこぞの国の王子として漫画に出てきても違和感はないだろう。
銀次郎とは血の繋がらない兄弟ではあるがこうも容姿が違うものか。
銀次郎が養子として引き取られる少し前まで大和田家は
日本人ではなかったのだから当たり前といわれればそこまでであるが。
「ちっとばかり他の国で仕事してくるから若頭殿に
報告でもと思ってな。一応俺補佐役ってことになってるし」
「・・・どうやら面倒事のようだな。詳しく話せ」
正義の目はまるで嘘を見抜く力でも持つかのように、見事に嘘を見抜く。
銀次郎は思った。これは正直に話さないと後で面倒になるやつだと。
〈事情説明中〉
「なるほど。異世界からの依頼か」
信じるのか。秀夫も大概ではあるがよくこんな話を信じられるものだ。
「ギンのことは信用しているから問題ないぞ」
デジャブである。その信用はどこから来るのだろうか。
「とりあえず出張期間は1ヵ月。延長したい場合は俺かヒデに言え。
あぁ、それとは別だが長谷川病院からまた再検査の案内が来てたぞ」
「どうせいつものあれだろ?断固として断るぞ」
以前銀次郎が銃撃され、長谷川病院に搬送されたことがあった。
銀次郎は自ら弾を抜き取り、1日で傷を再生して帰宅したのだが、
その噂を聞いた長谷川杏里という女医に目をつけられた。
余程体を調べたいのか頻繁にコンタクトを取りに来るのだ。
「そう言うと思ったよ。いつも通り処理しておくから
安心して仕事してこい。異世界土産も忘れずにな」
「それじゃあ俺は行ってくるから後の事はよろしく頼むわ」
買出しに行こうとビルを出ると何故か母・春江が待ちかまえていた。
「聞いたわよ銀次郎ちゃん。なんでも遠くの国まで出張だとか。
お母さん心配だから、これをお守り代わりに持っていきなさい。
あ!そうそう、くれぐれも開けるのは向こうについてからにしてね」
言いたいことだけ言うと春江は小箱を押し付けて去っていった。
大和田春江は突飛な行動をすることで有名な人物であると同時に、
決して意味の無い行動をする人物ではないことも知られている。
その後、必要物資を揃えた銀次郎は特殊能力の付与も無事に完了した。
いよいよもって後は異世界に転移するだけである。
「準備はいいかの?転移者用のガイドブックも用意しておいたから
向こうで確認すると良いぞ。きっと役に立つはずじゃ」
「OKだぜ爺、どーんとやってくれ」
そんなわけで銀次郎の異世界冒険は始まりを告げた。
更新未定