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大和田銀次郎の異世界冒険記  作者: メノクマ
第二章 ハラパン王国
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第5話 完了報告とショッピング

時刻が丁度昼すぎにさしかかる頃、冒険者ギルドの扉が勢いよく開け放たれた。

銀次郎を先頭にホモゴブリンから救出された一団が帰還を報告に来たのだ。

さっそくカウンターへ歩を進め受付嬢に話しかける。


「おう譲ちゃん。ちょっといいか?」


「おや、あなたは先程登録されたばかりの大和田さんですよね。

それと後ろの方たちは『ゲシュタルト兵団』の方々とお見受けします。

見たところパーティー申請とは違うようですが、何か御用ですか?」


「ゴブリン討伐依頼の完了報告。それとコイツ等の帰還報告に来た」


任務を請け負った冒険者が何の報告もせず日数が経過した場合、

死亡または未帰還とみなされて最悪の場合登録の抹消もありえるのだ。

そのため依頼失敗はもちろんのこと、長期に渡る依頼の場合も

中間報告を上げるのが冒険者の鉄則となっている。


「分かりました。先んじて帰還報告の方を受理いたしますね。

ふむふむ・・・これですね・・・完了いたしました。

続いて討伐依頼の完了報告ということで討伐証明部位の提出をお願いします」


「依頼にはない素材もあるんだがそれも買い取ってくれるのか?」


「そういった素材も随時買取を行っておりますのでご安心ください」


ゴブリン3匹の両耳と魔石、ホモゴブリンの頭部と陰部と魔石を取り出す。

指南書にはホモゴブリンの陰部は精力剤の材料として高値で売れるとあった。

見るのも汚らわしいがゴブリンの腰布に包んで一応持ち帰ったのだ。

指南書に書いてあるから大丈夫だよな。セクハラじゃないよなコレ。

銀次郎の心配をよそに受付嬢は淡々と処理をしている。大丈夫なようだ。


「証明部位の確認が完了しましたのでゴブリン討伐依頼は完了となります。

査定結果ですが両耳が10ゴッド、魔石が1個で20ゴッドとなります。

今回は3体分ということですので査定額は合計90ゴッドになりますね」


「ホモゴブリンの査定ですが頭部が100ゴッド、魔石が400ゴッド、

それと陰部に関しては状態がとても良いため2000ゴッドとなります。

ホモゴブリンの査定額は合計で2500ゴッドになりますね。

討伐依頼の報酬に買取金額を合計しまして2650ゴッドとなります。

どうぞ金額をお確かめのうえお受け取りください」


陰部の金額が予想以上に高い。これだけで生計を立てられるのでは。

ホモの陰部を専門に狩る冒険者とかパワーワード過ぎるだろう。

銀次郎がそんなことを考えていると受付嬢から話し掛けてきた。


「あの、つかぬことをを伺いますがよろしいでしょうか?」


「なんだ?俺に答えられることならなんでも答えるが」


「このホモゴブリンはどこで討伐されたのですか?」


「この町を出てすぐにある森だが、それがどうかしたのか?」


銀次郎がそういうと受付嬢は目線を下へ向け考えるそぶりを見せた。

何かまずいことでも言ったのであろうか。皆目見当がつかない。

すると後ろに控えていたゲシュタルト兵団の団長ボルトンが、

銀次郎に代わって受付嬢に事情を説明しはじめた。


普段はゴブリンしか出ない森に何故かホモゴブリンが現れたこと。

そいつの罠で捕らえられた自分達を銀次郎が救出してくれたこと。

ボルトンが詳細に説明してくれたおかげで受付嬢も合点がいったようだ。


「なるほど。おかげさまで要点を理解できました。

貴重な情報をありがとうございます。今後ともよろしくお願いしますね。

申し訳ありませんが私はこれからマスターに報告に上がるため失礼します」


受付嬢はそう言うと一礼をした後でカウンターの奥へ戻っていった。

すると辺りが急に騒がしくなったので銀次郎が酒場のほうを見てみると

ゲシュタルト兵団のメンバー達が無事を祝って酒盛りをしていた。

自分達の命と貞操が無事に済んで心底安堵したようだ。

ボルトンに飲みに誘われたがこれを固辞してギルドの外へ出る。




判断が鈍るため銀次郎は仕事中は酒を飲まないことにしている。

討伐依頼は完了したが、まだ現地調査が残っている。


活動を円滑にするためにも物価等を詳しく知る必要があるのだ。

冒険者ギルドに来る途中ざっと見た限りでは1ゴッド=20円ぐらい?

という印象だったが。直接確認しないことにはハッキリしない。


地元民であろうボルトン達に案内してもらう手もあったが、

路地裏など危険な場所にも入る必要があるかもしれない。

知り合ったばかりのやつらを巻き込むわけにはいかないのだ。


とりあえずゴンズが推薦してきた店を巡ってみる。


まずはここから一番近くにあるという宝飾店へ向かうことにした。

冒険者用に値段を低く設定したであろう指南書でさえ良いお値段。

土産も含めての大量購入を予定しているので大金を用意する必要がある。

恐らく宝石類を換金しないと手持ちが足りないであろうと踏んだのだ。




宝飾店に入った銀次郎を迎えたのは貴族っぽい人間や店員の訝しげな目線。

不釣合いな外見が問題だろうか。もしくは強盗と疑われているのか。

気にしても仕方ないので視線を無視して店の奥へ進み相場を確認する。


使われている宝石自体の質は悪くないようだがカットが甘い。

地球でこんなカットをしていたら大損で商売にならないだろう。

勝利を確信した銀次郎は奥にいた店主に話しかける。


「店主殿とお見受けする。見てもらいたい商品があるのだが

少しお時間をいただいてもよろしいだろうか?」


店主は一瞬値踏みするような目線を向けたが即座に表情を戻し返答する。


「わかりました。そちらの者に武器をお預けになって頂いて、

こちらの商談室でお待ちください。準備をしてまいりますので」


銀次郎は店員に武器を預けた後、すぐに商談室に入った。

店主が来る前にまず部屋を調べる。使われている調度品や家具はどうか。

部屋に仕掛けなどが施されていないか調べるのは基本中の基本。

武器など兵器の取引では油断が命取りになることを知っている。

宝石は高級品であるため念には念を入れたほうが良いのだ。


警備員がどこにいるのか。脱出路の確保はどうするか。

魔道具の設置場所はどこかなど必要な情報は把握できた。

あとは店主が来るのを待つのみである。


しばらくして店主が商談室に来たのだが何かを察したのか、

「ほぅ」と店主が小さく呟いたのを銀次郎は見逃さなかった。

これは商談相手を見分ける一種のテストだったのだろう。

商談室に招かれてただ座って待つだけの馬鹿ならボッタくれる。

そういう相手ならば遠慮する必要がないということだろう。


「俺は合格だろうか店主殿?」


「はて?何のことでしょうか?若輩の私めには見当もつきませぬ。

今回の商談も含めて是非とも勉強させていただきたいところですな」


ぬかしおる。正直言って銀次郎はこの手合いは苦手だ。

ちゃんとした商人であることは間違いないようだが、

こういう面倒な人間を相手にするのは疲れるのだ。

さっさと商談を進めて目的を遂げることにしたようだ。

双方が席へ着き商談が始まった。


「店内の品物を一通り見せてもらったが、良質なものを揃えている様子」


「なんのなんの。商人として当然のことをしているまでですよ。」


出すならこのタイミングか。銀次郎は人工宝石を取り出し、

テーブルの上に丁寧に並べていく。


「ところでこの宝石達を見てくれ、こいつをどう思う?」


「すごく・・・綺麗です。こんなに美しいカットは見たことがない。

それに色も濃くとても魅惑的な輝きを放っているようだ」


持ち込んだのは最高品質の人工宝石だ。色はもちろん内容物も

光の反射角もすべてが計算され最高品質の天然石と相違ない造形。

その道のプロでも見分けがつかない品質の上に、

この世界にはない最高のカッティングが施してあるのだ。

大事な商談でそのあたりを抜かるほど銀次郎は間抜けではない。


「実に素晴らしいですぞ!是非とも買い取らせていただきたい!」


案の定店主は食らいついてきた。あと残るは値段交渉のみである。

銀次郎と店主が攻防を繰り広げた結果、銀次郎がやや押されぎみとなった。

銀次郎はあくまで傭兵。熟練の本職に完勝できるほど器用ではない。

結果として銀次郎が入手できたのは120万ゴッド。

店主が即金で支払える金額分の宝石を売って取引は終了した。


「良い取引をありがとうございます。またのお越しをお待ちしております」


ホクホク顔の店主に背を向け、装備を売っている店に足を運ぶ。




店内には剣や槍といった武器や金属鎧などが一通り揃っているようだ。

値段も質もピンからキリまであり、オッサンがおススメするだけはある。


防具に関しては特に必要なものは見当たらない。

銀次郎が着用しているのは傘下組織の大和田重工が製作した特注品。

特殊な強化アラミドをふんだんに使用したボディーアーマーであるため、

流石にコレを越えるような物は見当たらない。


武器に関しては展示してある高級品の中に目を引くものが2つあった。

まずは過去の転生者の関与を匂わせる玉鋼製の打刀。

見栄えを重視したものではなく、刃が厚く実用的な一品だ。

良い物ではあるが、筋力に物を言わせる銀次郎のスタイルには合わない。


次は今まで見たことの無い金属でできたナイフ。

魔力を内封しているそれはどうやらミスリル製のナイフのようだ。

銀次郎達の世界には存在しない素材でできたナイフ。

一傭兵としては未知の武器であるこれが気にならないはずがない。

気になるお値段は30万ゴッド。迷わず即買いである。


店を出て次の目的地へ向かう。次は人々の生活に根付いた雑貨店。

そこならばこの世界のおおよその物価を把握できるだろう。




店に着くとまず目を引いたのがアレだったのだが銀次郎はすぐに納得できた。

打刀を見たときから予想していたことだが、塩が安価で売られていたのだ。

店主曰く大昔は高級品だったらしいが今はどこでも安く買えるらしい。

転生者が製塩に力を入れた結果広まったのだろう。そりゃやるわなと。

魔法で簡単に作れるであろう塩が高価となればこぞって作るに決まっている。

その結果どこかで製法が流出したのか安価で売られるようになったのだろう。


香辛料は高級品のようだが、野菜っぽいものや果物っぽいものは、

銀次郎達の世界とそこまで値段が変わらないように見える。


食器類などは木製や陶器が主で少量ながらガラスもあるようだ。

ただしこのガラスは不純物が多いのかあまり綺麗ではない。

製法や材料が違うのかも知れないが地球のガラスのほうが良品だろう。

透明度が高く綺麗な造形のガラス製品なら貴族が高値で買ってくれそうだ。


ここでは書物類は販売していないようだ。本屋があるのだろうか。

果物っぽいものをいくつか購入し、書物類について店主に尋ねる。

本などは本屋に魔導書などは魔道具店にあるが、

どちらも高級品であるため庶民にはあまり馴染みがないとの事。





本屋があったのは高級住宅街。貴族が住んでそうな場所である。

外観が既にやばい。明らかに規模がデカイし、いかにも高級な雰囲気だ。

いくら高級でもさすがに宝石より高いということはないであろうが。


中に入ると真ん中が大きな吹き抜けであり奥までずっと続いている。

左右には大量の本が所蔵されており、その2階も本で埋め尽くされている。

しばらく呆けていると司書っぽい店員が話しかけてきた。


「お客様。本日はどのような書をお求めでございますか?」


「魔族について詳しく知りたい。あとは歴史とかが分かる本はないか?」


「魔族については向かって右側2階の10-1に集中しております。

歴史であれば向かって左側1階の1-2からお探しなるのがよいかと。

私は店内を巡回しておりますので質問などございましたらお声掛けください。

それでは私はこれにて失礼いたします。知識の友に幸あらんことを」


そう言うと店員は去っていった。最後の台詞は意味不明だったが、

今はそれを考えても意味はないだろう。ここに来た目的を果たそう。


銀次郎がまず向かったのは歴史について。良さげな物を数冊手に取る。

やたら堅苦しく長ったらしいので買ったあとで読めばよいか。

次は魔族についての本を見るために右側2階のフロアに移動する。


まず手に取ったのは「ゴブリン進化論」という一冊。

分かりやすく挿絵があり、内容にも新鮮な発見がある良い物だ。

ふと著者が気になり確認して見ると銀次郎は違和感を覚えた。


この著者は歴史のフロアでも見たのだ。一旦本を閉じ周りを見て回る。

驚くべきことに店内にある膨大な書物の半数以上が同じ著者であった。

歴史の本にも記載されていた人物で、アウロフィディアの至宝とか

大賢者とか様々に呼ばれている偉人ナンディ・シットンネンだ。


シットンネンはハイエルフなので正確には魔族であるが、

人間族には友好的であり様々な恩恵をもたらしているらしい。

銀次郎はシットンネンに興味を持ち一度会ってみたいと思った。


値段は高かったが気に入った本を数冊購入して本屋を出た。

安いものでも一冊5万ゴッドほどする。庶民に縁がないわけだ。




本日最後は魔道具屋。荷物が一杯なのでたいした量は買えないが。

店内に入ると楽しそうな物が一杯ある。怪しげな薬品やら、

用途不明な魔道具やらが所狭しと置いてあるのだ。


もしかしたら例のアレがあるかも知れない。

店員に聞いてみたが残念ながらこの店にはなかった。

銀次郎が探していたのは魔法の収納袋。いわゆるマジックバッグだ。


超高価で希少なためほとんど出回ることがないらしく、

王侯貴族や大商人ぐらいしか所有していない品だそうだ。

店主との話に夢中になっているとすっかり日が沈んできた。

銀次郎はポーションと魔導書をいくつか購入し、魔道具店を出た。




一旦城塞都市を出るため門へ急ぐ。

門番が言うには夜になる前に門を閉める規則のため、

一度閉めてしまえば朝になるまで門を開くことはないそうだ。


話を了承し外へ出た銀次郎は暗がりの中ゴブリンがいた森へ入る。

内密に行う必要があるために人目につくわけにはいかない。

本日の活動が終了したため今から現世に帰還するのだ。

銀次郎は次元転移を発動し我が家へ帰還した。

一日の活動が終了し、荷物も一杯なので一旦帰ります。

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