第5話
そして、戦闘が始まった。
この義勇軍での戦いは、最前線ほど新人が担当させられる。
敵の攻撃が止んだら、ボクたち新人が敵に突っ込んでいくんだ。
元正規軍の上層部は後ろでふんぞり返っているだけ。
あれしろ、これしろって。
これは経験者による未経験者の屠殺だった。
プーサンはマジメにやろうとするボクを止めた。
「バカ、死にたいのか!」
こんな戦闘が何回か続いたある日の夜のことだった。
塹壕堀りで疲れていたボクはぐっすりと眠っていたのだが、プーサンが揺すって起こした。
「おい、逃げるぞ」
「?」
寝ぼけていたボクは、彼が何をいっているのかわからなかった。
「敵に殺されるならまだしも、味方に殺されるのはイヤだ」
「そうか…じゃあ。今まで、ありがとう」
ボクがまた寝ようとすると、彼がいった。
「バカ! オマエも逃げるんだよ!」
「え?」
色々考えてみたが、やはりそれはできなかった。
「ボクは残るよ」
「何いってるんだ。殺されるぞ」
「だって、義勇兵登録証も渡してるし」
「そんなものどうでもなる!」
そういうとプーサンはマジメな顔をしていった。
「オマエはいいヤツだ。飯をくれたし、オレの先輩ごっこにも付き合ってくれた。だからオマエには死んでほしくない。今まではラッキーだったけど、ここにいたらいつか死ぬ。登録証なんかのために命を捨てるようなことは止めろ。オレと一緒に逃げよう」
彼は真剣だった。
本気でボクを心配してくれていた。
ボクは彼と脱走することにした。