タレントスクール
双麻タレントスクールに謎の少女は居た。滝斗は真っ先に彼女のそばをキープした。
お笑い芸人というのは顔の面白さが優先される。
なのでアイドルのように美しい彼女は誰にも相手にされていない、面白いギャグが言えると思われていないのだ。隣に陣取るのは容易だった。
「黙っていればアイドルのようだ。こんな彼女から次々と面白い言葉が飛び出すとは思えない…」
滝斗は思わず口に出してしまう。
「何か言いましたか?」
「すまない、単なる独り言。俺は柵木滝斗だ。君は?」
「私は利根川由加里…」
滝斗はこの美しい女を有名にしていきたいと思った。こんな天才が埋もれているのはもったいなさすぎると。
そこに庭徳四郎が近寄ってきた。
徳四郎はタレントスクールでは一番人気だった。売れるのは間違いないと誰もが噂している。
徳四郎のすぐ後ろには国藤みえと頼永克政、大西 オトミがぴったりとくっついている。金魚のフンみたいだった。
背後のメガネの女、オトミが口を開く。
「この人達も私達のグループに入れちゃいましょうよ」
小太りの男の克政も勝手にそれに賛成する。
「いいねえ、六人組お笑い芸人グループなんて珍しいもんなぁ」
背の低い女のみえは何も言わなかった。ずっとうつ向いてモジモジとしている。
徳四郎がわざわざ滝斗に顔をぐいっと寄せて言う。威圧的だった。
「…だ、そうだ。君達も俺のグループに入らないかい?」
断りきれない空気になってきていた、滝斗は徳四郎のグループに入ることになった。由加里もそれに巻き込まれる形でトントン拍子に参入した。