日本に異世界から島が転送されてきた
数年前の作品の加筆版です
30年前、小笠原諸島を上から押し潰すように出現した島により日本は大きく変わることとなった。
異世界から島がまるごと転送されてきたのだ。
その島の名前はベルナー島、あちらの世界の戦火から逃れるために島ごと飛ばしたらしい。転送先がたまたま小笠原諸島上空だったのだ。
その島の住人は自らをリレリウム人と名乗った。彼等の説明によるとベルナー島はリレリウムという国の一部だったらしい。
彼等は人間とほぼ変わらない姿をしているが、人間と違って髪が淡く緑に光り輝いている。
それに体のあちこちにシマウマのような縞模様があった。
しかしそれよりも更にはっきりとした違いがあった。誰もが魔法を使えたのだ。
彼等の防御魔法によりこの国は魔法結界に守られ、世界一平和な国となった。
毎年100人程を無作為に選んでは殺し合わせて遊ぶゲームを国が許可するというおぞましい契約と引き換えに。
柵木滝斗が知っているのはこれだけだった。非常にあやふやで、遠い国のどうでもいい出来事のようだ。
なぜならリレリウム人がベルナー島から出てこないからだ。時たまテレビに出ては何やら凄そうな演説をするぐらいで、後は殆ど姿を見せない。
至るところで見かけるリレリウム民衆統轄局の職員すらも、簡単な魔法がいくつか使えるようになる特殊な指輪を支給された日本人で構成されている。
滝斗達一般人には魔法もリレリウム人もよくわからない存在でしかなかった。
日常が全く変わらないかと言えばそうではない。
新種の果実や野菜が店に並ぶようになり、様々な新しい技術が普及した。空には防御魔法の紋章が時たまネオンサインのように輝いている。
日本は大きな転換点を迎えたのだ。絶対的な力を持つリレリウム人の支配下に置かれることで。