どぶ板のネズミ亭
とんだことになってしまった。まったく、商人ってやつはただじゃ起きないな。
ジャスティンが押し付けていった三枚入りのクッキー袋から一枚取り出して口に入れる。悔しいくらいうまい。くそう、どこで売ってるんだこれ? 絶対買いに行くぞ。
目の前では若い騎士に交じってあの二人が走っている。すでに息切れしかけているみたいだが遅れてはいない。それだけは褒めてやろう。
それにしても、ジャスティンには一本取られた。
たしかに言いっぱなしって言われリゃその通りだったな。さっきから気分が悪かったのはそのせいか。すとんと落ちたせいかすっきりした。
今後なにしたらいいんだとか、そのくらい自分で考えろって思ってたんだが、俺も駆け出しのころは先輩冒険者に教えてもらった覚えがある。言葉が足りないってのは過保護より始末が悪いのかもしれない。
さらに、初心者を見放さないのも先達の務めとくるとは。生暖かく見守るとか、簡単に言うが結構大変なんだぞ。
ああ、頭使いたくねぇ。脳筋に考えさせんなっつーの。
ま、仕方ねぇ。頼まれたんだから面倒見てやるか。冒険始めたばっかりのベルよりは手がかかんねーだろうしな。
そんなことを思いつつ、先を行く騎士たちについていく。
さっきジャスティンが娼婦から「怪しい奴らがどぶ板のネズミ亭から出ていった」と聞いたと話してくれた。行先は渡し場付近に多数ある倉庫じゃないかとも。
最初はそこに向かうつもりだったんだが、通り道にその何とかいう酒場があるって話になり、立ち寄って主人に心当たりを聞こうと言うことになって、今はそっちに向かっている。こまごまして行き止まりが多い裏通り、土地勘がない俺にはどこをどう走ってるのかさっぱりだが、騎士の中にナナト出身の奴が何人かいるので大丈夫だろう。
周りの建物があからさまに胡散臭くなる。不思議と人気が感じられないが、きっと町に向かったのだろう。食事がタダってところで行かない理由がない。この辺りの者は仕事もなく、飢えていると聞いた。
まあ、人がいないのはこちらにしてもありがたい。人目を気にせず行動できるしな。
多分この辺り、そう思う場所に近づいた時、ふと、異臭に気づいた。
他の奴らは気づいてないようだが、ダンジョンに入ったことがある冒険者だったら一度は嗅いだことがある臭い。
腐臭と血臭だ。
「野郎ども止まれ!!」
叫んで駆けだしたのと同時に、先頭に追い付いたゴードンとクラークが悲鳴をあげた。
こういう予想は当たっても嬉しくないな。
真っ青な顔のクラークをゴードンが支えている。
先ほど悲鳴をあげたのとは別の騎士が吐きそうな顔でハイネックの襟を引き上げて口と鼻を隠している。
その騎士の足元には赤黒く変色した無数の足跡があり、何かを引きずったような跡もあった。足跡は扉が壊れて開きっぱなしになっている大きな店から続いている。
『どぶ板のネズミ亭』
古い建物なのにそこだけが新しい看板には大きな崩れた文字で店の名が書かれていた。ねずみらしきシュールな絵が添えられている。あれだったら俺が描いたほうが上手だな。
開けっ放しの扉の奥からは先ほどの異臭が濃く流れていた。店の中は臭いが充満してそうだ。入りたくはないが、情報を得るためには仕方ない。
ランドと目を合わせる。
「お先にどうぞ」
「そう来ると思ったよ」
ため息を吐いたあと、中に入る。
ぴちゃ、と音がした。何かと思ったら側で転がった酒瓶を踏む。酒だよな、うん酒だ。よかった。血かゲロだと思ったからちょっとほっとした。俺だから転ばなかったが、ほかの奴だったら危なかったぞ、と。瓶を壁に向けて蹴り、奥に行く。
ホールは広かったがテーブルも椅子もなくがらんとしていた。
奥にカウンターがあり、そこから厨房に続いている。上に行く階段もそっちにまとめられていて、まあよくある作りの店だな。カウンターの近くにちょっとしたステージがある。見たところ楽器はないから使うときは持参するんだろう。
夕暮れが近いからか、店内は薄暗い。申し訳程度に高いところにある窓からは薄い光が差し込んでいるが、建物が密集しているためか明かりと呼ぶほどではなかった。たぶんその暗さはこの店に似合うのだろう。ジャスティンに店のことを話した娼婦も店のことを褒めてはいなかったようだしな。
しん、と静まり返ったホールには人影がない。扉が開けっぱなしだったので休業ということはないだろうが、店員はどこにいるんだ? 厨房から出てくる奴もいないようだが……。
ぴちゃ、ぴちゃ、と濡れた足音が響く。
これ本当に全部酒なのか? と眉を寄せつつよく見ると、木の床に溜まっている水はところどころ赤黒かった。そりゃまあこれだけ臭ってリゃ、何もないわけないよな。
「おーい、どうだ?」
後ろからランドの声がする。どうやら俺の指示待ちらしい。
「胸糞悪いぞ。ついてくるか?」
「正直、遠慮したいところだな」
「同意見だ。気が合うな、相棒」
「誰が相棒だ。心の筋肉と呼べ」
「やなこった」
緊張感のないやり取りに笑いが起きている。仕方ない、こいつらも同じ目に遭わせてやろう。
店内に入った騎士たちは一様に顔をしかめていた。
「くせぇ。なんだこの臭い?」
「床がぬかるんで気持ち悪いな」
「うおう、滑った!」
ぴしゃ、ドデン!と音がする。間抜けが転んだようだ。
目を向けると、カウンターの脇でゴードンが床に尻をついている。運よく濡れたところにつかなかったようだが、手は水たまりに浸かっていた。ぎゃあと叫んで手を振っている。運がいいのか悪いのかわからん。
「大丈夫か?」
近づき、手を差し出すと、情けない顔で捕まった。手が震えている。まあ初心者にこの臭いはキツイわな。しかも触っちゃってるし。
「無理するな。外で待っててもよかったんだぞ。クラークはどうした?」
「クラークなら、たしかそこに……」
立ち上がりながら目で探している。
「あ、あれ? さっきまで一緒にいたはずなんだけど」
きょろきょろとあたりを見回すゴードン。
視線を追うように目を動かしていると、カウンターの近くで何かが動くのが視界に入った。ちょうど大きな樽があったので、動かなかったら気づかなかっただろう。
「そこにいるじゃないか」
スカウトだから素早く隠れたのかもしれない。
言いながらカウンターの裏を見ると。
腕まくりをした毛深い男がじたばた暴れるクラークの体に覆いかぶさって喉と口を押えているところだった。
「クラーク!」
俺はカウンターを飛び越えて男を蹴倒した。勢いづいて棚にぶつけたのはご愛敬だ。頭上の酒瓶が降ってきて男に当たったのも俺の知るとこじゃない。
クラークは喉に手を当てて咳き込んでいる。
「し、死ぬかと思った……」
泣き出しそうな声を出す。聞けば何か動いた気がしてカウンターに近づいたら、突然足を取られてそのまま引きずりこまれたのだとか。伊達に偵察の専門家スカウトではないようだが、見通しが甘い。修行が足りん。
でもまあ、俺を含めた騎士たちが気づかなかったとこに気づいたのは褒めてやろう。
「よく見つけたな。えらいえらい」
しゃがんで、座り込んだままのクラークの頭をぐしゃぐしゃにしつつ、倒れている男を見る。
気絶しているのは俺が蹴ったせいじゃないぞ。瓶が悪い。こいつの運も悪い。ダブルだな。
腕の剛毛に目が行っていたが、よく見ると全身毛深い。子鬼かよと思ったがちゃんと人間だった。全体的にがっしりしてるが、背丈はジャスティンより少なそうだ。なんせ腿から下がない。生々しい傷口から見てごく最近なくしたのだろう。この足でよくクラークを引き倒したもんだ。痛まないのかね?
近くに転がってる酒瓶で傷口をつつくと、ウシガエルが叫んだような音がして男が暴れだした。おっといかん、この酒瓶、割れてたのか。
「すまん、うっかりだった」
謝ったのに男はプルプル震えている。まあ先に手を出したのはこいつだろうから罪悪感なんてこれっぼっちも湧かないがな。仕方なく低級の回復ポーション(間違ってもダシはやらん)をやると、男は勢いよく飲みほした。
「てめぇら、冒険者かと思ったら騎士か? 俺の店に何の用だ?」
「ということはお前がこの店の店主か?」
「そうだ。もっとももう店はできそうもないがな」
男は頷くと、腕を使って上半身を持ち上げ、カウンターにもたれかかるように座った。
「畜生、やられた。話がうますぎると思ったんだ……」
ぜいぜいと荒い息をしている。足の付け根付近が縛られているが、切断面からゆっくりと出血していた。自分で止血はしたようだが、太ももにはでかい血管があるからこのままいけば助からないだろう。ダメもとで、回復魔法が使える騎士を呼ぶ。神官レベルに近いとランスは言っていたが、それでも血と痛みが止まる程度しか回復できなかった。まあ話を聞くだけだからこれで十分か。
「何があったか話す気があるか?」
「……、ないと言ったら?」
「そのときは魔術師を呼んで記憶をさらうまでだ。あんなこともこんなことも晒されるがそれでもいいんなら黙ってろ」
「……、さすが騎士、外道だな」
「なに、お前ほどじゃない。噂は聞いてる」
「噂を信じるとは、うぶな騎士様だな」
「可愛いことを言うな。照れる」
肩を竦めたら店主は楽しそうに笑った。足はなくなったが痛みがないので楽になったようだ。
舌も滑らかになったのでしばらく雑談しつつ、ランスを目で探す。異臭に愚痴をこぼしながら、店内を探っている騎士たちの中にいるがちと遠いな。
「そこの小僧たちは騎士、じゃねえな。冒険者か?」
店主が俺の後ろにいる二人に気づいた。先ほど首を絞められていたクラークは一瞬身を縮めたが、頷いている。ゴードンだけが一歩前に出て俺の横に立った。
「夕べここで世話になったんだが、オレたちのことを憶えて、ないよな」
「ちっ、履いて捨てるような初心者の顔なんざいちいち憶えられるかよ」
「ダーレスさん、だったか? そっちは忘れてもオレは憶えてる。冒険者の心構えだぞとか言って仲間の裏切り方と酒の味を教えてくれたじゃないか」
「そうだろう? 俺は優秀だったからな」
「仲間の懐は自分のものだから常に気を付けておけってのは、仲間は信頼しろと言われ続けてたオレには斬新だった。オレたち駆け出しには先輩冒険者の言葉、胸に響いたぜ」
「そうだろう。冒険者は生き残ってなんぼだからな。自分が一番ってことよ」
「で、ブルータスさんとグレイスさんはどこにいる?」
気楽な会話ののちのさりげない問いに、ダーレスの体が固まった。
「なんのことかわからんな」
「嘘吐くなよ。オレたち駆け出しはあんたたちが話してるのを遠くで見てるしかできなかったが、さすが大きな店の店主は違うんだなって話してた。すごく仲がよさそうだったじゃないか」
ダーレスの顔から一気に血の気が引き、じわじわと滲む汗が全身の剛毛から滴って床に染みを作っていく。今にも震えだしそうだったが、堪えているのがわかった。腐っても元Dランク冒険者ってところか。
「な、なんのことかさっぱりだ」
「おかしいな。さっきオレにいろいろ教えたと言ったじゃないか。オレが酒場なんて場所に来たのは昨日が初めてだから、夕べ参加した大蛇退治派の集会は間違いなくここだったってことだ。店の名前知らなかったし、この町に来て日が浅いからここだって言えなかったけど、ダーレスさんのおかげで確認できた」
言いながら、ダン、と男の右手の近くに足を下ろすゴードン。踏まないぎりぎりのところだったが、ダーレスの顔が歪んだ。
「リチャードさん、昨日、オレたちがいたのはこの店で間違いない」
俺は冒険者らしい顔つきになり始めたゴードンの背中を叩いた。
ホールから厨房奥の店員用休憩室に移動する。二階に宿泊できる部屋がいくつかあるらしいがあまり奥に行くのも面倒だ。
こじんまりとした部屋だったが、見張り以外の騎士と俺らが全員座れる程度の場所はあった。正直あの臭い場所にいつまでもいたくなかったからよかったが、ここも結構臭う。
一体全体なんだってんだ?
足がないので騎士に抱えられて連れてきたダーレスは食卓らしいテーブルに置かれた。文字通り置いた感じだ。ゆっくり流れる血が机に溜まって隙間から流れている。回復魔法が聞いているからか容体は安定しているが、あまり時間はないかもしれない。
「最初見たとき、こいつらは上客だなと思ったんだ」
諦めたのだろう、ダーレスは苦い顔で話し始めた。
二人がどぶ板のネズミ亭に来たのはつい最近。大蛇がナナトに現れるようになってすぐのことだった。
美女と魔術師の二人連れ。
女のほうはいかにもヤレそうだし、男のほうは金をたっぷり持ってそうだった。
金になる、そう思ったと言う。
「奴らは『この辺りで一番人が入りそうな店だな』と言った。しばらく一緒に飲んでたら、ものすごいいい気持になってな。気が付いたらこの男の為なら手を貸すのも悪くないと思ってた。正直、悪くないどころかこっちのほうが乗り気だったと思う」
男はブルータスと名乗り、握手を求めてきたそうだ。そのあと世界が変わった、そうダーレスは言った。
「手を握られた瞬間、ブルータスさんのすることに何でも協力したい、いや、させてくれ、そう思った。自分は選ばれた人間なのだと、な。その夜はグレイスさんと過ごしたが、あれはすごかった。娼館の女なんか比べ物にならない女だった。虜になったよ」
変化は次の日からだった。
ブルータスが一人また一人と客を連れてくるようになったのだ。
最初のうちは宿も使うと言うのでこれはいい儲け話だと喜んだダーレスだが、人数が増えるにつれて不安にもなってきた。たしかにどぶ板のネズミ亭はいかがわしい客が多い店だし、そういうのが集うってのも看板になってる。だが日を追って増えていくいかにも訳ありな冒険者ははっきり言って怖い。自分もそうだからわかるが、脛に傷がある冒険者ほど何をするかわからない。
「だがな、不思議とそいつらはおとなしかった。仲良くなったわけじゃないから多少のいざこざはあったが、ブルータスさんとグレイスさんが顔を見せるだけで解決した」
そんな二人と一番懇意にしているのは自分だと思ったら気分がよかった、そういうダーレスは遠い目をしている。
ドラゴンの威を借る何とか、だな。
「何日か経つと見るからに冒険者ではない者や駆け出しっぽい奴らも来るようになった。そう、そこの二人みたいなのがな。」
言いながらゴードンとクラークを見る。クラークは無意識に喉に手をやりながら目を伏せたが、ゴードンは舌打ちしながらダーレスを睨んでいた。
「その時になって初めて、こいつらが大蛇退治派を名乗っていることや、ブルータスさんとグレイスさんが旗印になってることを知った。これは本当だ。俺は大蛇なんて気にもしてなかった。そりゃ渡し場が止まって迷惑だと思ってるが、それだけだ。生きようが死のうが気にならない。気になるのは今日の稼ぎくらいだ。だから夕べはたくさん客が来て店はてんてこ舞いだったが気分がよかったよ。イスとテーブルが邪魔で避けたくらいだ」
なるほど、それでホールががらんどうだったのか。
「何人くらいいたかわかるか?」
「数えてねぇな。まあ300近かったとは思うぜ。うちのホールは椅子が150しか入らねぇ」
さっき冒険者ギルドで石になったビキニアーマーの女の話と一致するな。
あれ、そうなると数が合わない。
「クラーク、町に出ろと言われた人数は憶えてるか?」
クラークは突然話を振られて驚いた顔をしたが、指を折ってうんうんと唸りながら答えた。
「えっと、ボクらは最初毒を入れるようにと呼ばれていたので正確な数はわからないけど、50人くらいだったと思います」
300-50か。
「ゴードン、娼館の姐さんは100人くらいの冒険者が出ていったって言ったんだったな?」
「あ、ああ。オレたちは直接聞いてないけど、ジャスティンさんがそう聞いたって言ってた」
「ふむ」
300-50-100は、いくつだ、150か。
俺が脳筋だからか、計算が合わない気がするのは?
「足りねぇな」
横でランドが呟いた。
「俺の記憶が確かなら、300人近い冒険者がいたのに、ここから出ていったのは煽動半含めて約150。残り150は数え違いで実は150人じゃないのか?」
よかった、俺のせいじゃなかった。
まあ夕べのロイ騎士の報告だと200程度ってことだし、ビキニアーマーの勘違いかダーレスが話を盛ったのかもしれんよな。
カタカタカタ、と音がした。
見るとダーレスがものすごい勢いで震えている。音は足の断面が机の板を叩くものだった。
「い、いや、今朝残っていたのは200人よりたくさんいた。いたんだよ……」
カタカタカタ、カタカタカタ……。
音がどんどん大きくなり、ダーレスの体の震え方が異常なほど大きくなる。
「いたんだよ! 出ていった100人は隣にいた奴を殺せた奴らだ」
「なんだって!?」
「あいつ、ブルータスが命令したんだ。隣にいる奴を殺せ、殺せない奴らは処分するってな。だから奴らは殺い合いをして半分以下になったんだ。隣にいた奴以外を殺した奴もいる。退治派でも戦士でもねぇ、うちの店員まで殺しやがった!」
「だけど死体がないじゃないか。血だってそこまでは……」
「あああ、あれは、あれはな……、喰われたんだ」
「食われた?」
「そうだ! でっかい蛇がどこからともなく現れて、死体と血を全部啜ってった!これで力が出る、蛟になる、そして奴らに復讐する、そう言ってたんだ!」
「復讐するって、蛇がか?」
「間違いない、そう言ってた。俺はカウンターの裏に逃げ込んだんだが、見つかっちまって引きずり出された。ギラギラ光る目が俺を見て、お前は使えるかと言って、俺の足を……」
急にダーレスの体が弓なりにはねた。息遣いが荒くなる。目は大きく開き、よだれが垂れ、全員が痙攣していた。足がないので逃げられないようだが、忙しなく手を動かしているのが不気味だ。
騎士たちとゴードンたちが思わず一歩下がった。
「鉄黒は、いるか!?」
突然ダーレスがきょろきょろしながら叫んだ。
「鉄黒がいないとこの先は話せない!鉄黒はいないか!?」
鉄黒? ああ、あいつか。
「ここにはいないが俺はそいつを知ってるぞ」
ナレノハテになっちまったがな。
「今は依り代のジャスティンが商会から動けない。だから俺が代理で来た。それなら話せるか?」
「お、おお!よかった」
ダーレスはほっとした顔で俺の側ににじり寄った。
「ブルータスさんから伝言だ。渡し場の三番倉庫に来いと。望むモノをくれてやると言っていた」
「三番だな。わかった」
「確かに伝えたぞ」
言い終えると、ダーレスの体は背骨がなくなったようにぐにゃりと折れ、大きな粘液の塊になった。
「やれやれ、人間は使い捨てかよ」
見慣れてきてしまったそれに回復魔法をかけさせ、魔石にする。石と一緒に、ビキニアーマーの女の時と同じような蛇の皮が出てきた。
回復役の騎士は魔力切れで倒れそうになったが、隣の騎士に支えられた。騎士たちは大きなナレノハテを見て呆然としている。
「でかい蛇がデカい蛇を殺すってか」
人を蛇の喧嘩に巻き込むなよな。
俺は魔力の回復ポーションを渡し、ため息を吐いた。
読んでいただいてありがとうございます。
だんだんラストに近づいているので話を書くのが難しくなってます。不定期になってしまいますが、お付き合いいただけるとありがたいです。




