1話 電子世界への入り口
「あー、やっと終わったー‼」
俺は企画書を作り上げると背伸びをした。
俺の名前は安藤直人、比較的ホワイトな会社で働くピチピチの30代だ。
「さて、そろそろインストールは終わっているかな」
わざわざ仕事を家に持って帰ってまでしたのには理由がある。VRゲームが普及しているこの世界で新たにあるゲームが発売された。その名は「The another World」通称TAWだ。
TAWはシンプルな名前とは想像がつかないほど高度な技術が沢山使われている。
初回販売の時は手に入らなかったが、発売2回目の今回は高い倍率の中で見事勝ち取ったのだ。
「水分補給よし、室温よし、玄関の鍵も閉めた。よし、始めよう!」
俺はウキウキしながらVRゴーグルをかぶるとベットに横になった。ホームページにあるTAWのアイコンを選択する。
目の前が光に包まれる。
眩しさに目を閉じ、開けてみるとそこは何もない白い空間だった。
「こんにちは、そしてようこそプレイヤー様。この世界にあなた様が来たことを歓迎します」
目の前には白髪に白いドレスという全身白ずくめの女性がいた。
「あなたは?」
「私は正義と命の女神エンと申します」
そういえばゲーム内ではAIの女神達が分担して管理してあると説明書に書いてあったな。
しかし、正義と命の女神か…これは厄介なことになったな。
「ここでは冒険を始める際のステータスを決定します。あなたはどんなことを楽しみますか」
くっ…こうなったら運任せ、男は度胸だ‼
「‥……です」
「はい?」
「PKプレイヤーになるつもりです」
「………はい?」
うわっー!沈黙が怖い!笑顔が固まってるよ‼
いや、もう後には引けない。俺がやりたいのは悪人プレイなんだ!
「私が正義と命の女神と知っての発言ですか」
「もちろんだが」
「‥冗談ではすみませんよ」
「覚悟してます」
あぁぁー、どうしよう‼
これでステータスがゴミレベルにされたら…。
「プッ‥クスクス」
「へっ?」
「アーハッハッハ‼‼」
何だいきなり!急に笑いだしたんだが。
「クスクス、いい度胸ね。あなたのような人を待っていたの」
そう言うとエンは姿を変えた。
白髪は夜を連想させるような深い黒色に、純白のドレスは彼岸花が刺繍された黒い和服へと。
「…きれいだ」
俺は思わず見惚れてしまった。
彼女は俺のつぶやきにクスリと笑った。
「では改めて挨拶をしましょう。私の名前は混沌と死の女神ゼロです。さぁ、あなただけの混沌を見せてください‼」
こんにちは、こんばんは。
新米作家の食い倒れ達磨です。
処女作なのでぜひ、応援よろしくお願いします。