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ある歴史家の書 ―最強の帝国―

 現在では誰もがその名を崇める聖魔王ベルフレア。彼の偉大なる魔王がこの世界に降臨したベルフレア暦元年より以前は、俗に『暗黒の時代』と呼ばれている。

 戦争が絶えず、世界中の国々がある1つの国家の顔色を伺う抑圧された時代。それこそが魔王が降臨する以前のこの世界の日常であった。


 そんな闇の時代、世界最強を誇り、武力で世界の頂点に立っていた国家こそが、旧・グランベル帝国である。

 かつての領土をそのまま魔王が支配し、現在では聖魔王国ベルフレイアと呼ばれる今は亡きこの帝国は、しかし聖魔王国とは似ても似つかぬ悪の帝国であった。その強大な武力を以て他の国々を威圧し、常に自国の利益のみを追い求め、領土拡大という名の侵略戦争に明け暮れていた。


 現在でも、小説などで『帝国』という国が侵略戦争を好む悪の国家というイメージが強いのは、間違いなくこのグランベル帝国に怯えていた日々の記憶が未だに我々の血に刻まれているのであろう。


 そんな『悪の帝国』ことグランベル帝国が誇った世界最強の武力とはどれほどのものだったのかと言えば、騎士団長は強化魔法が付与された武具を装備し、宮廷魔術師らは中位の攻撃魔法を自在に使いこなし、各地には多数のミスリルゴーレムが配置されていたとされる。


 ここで多くの人々は首を傾げただろう。どうしてその程度の‘低級な”戦力で最強を名乗る事が出来ていたのかと。人によっては失笑すら出るかもしれない。


 確かに、今では強化魔法が付与された武具などは当たり前のように武器屋に並んでおり、中位の攻撃魔法などは学生時代に習う程度のものだ。ゴーレムは再生が容易な自然物質を用いたマッドゴーレムやストーンゴーレムが主流であり、わざわざ砕けたらそれまでの金属、それも低位の魔法金属であるミスリルを使うなど非効率極まりない。


 しかし、これを低級だと感じるのは我々が現代に生きているからに他ならない。現代では当たり前となっている技術はこの時代にはまだ存在し得ないものであった。

 現代人である我々には信じられないことだが、強化魔法を武具に付与するのは極めて高度の魔法技術とされていたし、中位魔法こそが人間が生涯で修得できる魔法で最高峰のものだと考えられており、最高位魔法とまで呼ばれていた。

 そして今では学生にも簡単に砕かれる低級の魔法金属でしかないミスリルは、当時は一線級の魔法金属であった。付与魔法の込められた武具もなく、中位魔法が最高位魔法であったかつての時代ではミスリルを砕くのは常人には不可能であった。ミスリルゴーレム程度でも最強の兵器と恐れられていたのだ。我々には想像もつかない時代である。


 そんな正しく『最強』の国力を誇り、永劫にその繁栄が続くと思われていたグランベル帝国は、しかし突如滅びの時を迎える事となる。


 ――魔王ベルフレアの降臨である。

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