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起きたら名族[改訂版]  作者: Dearboy
孫家の人質編
7/10

第6話 「守るべきモノ。 覚悟と希望と」

 さて、朝飯を食べ終わった。

次は勉強の時間だ。 俺は内政と軍略。 蓮華と雪蓮は算数と道徳。

 この頃は小説なんかはあまりないので、僕らの時代の国語なんかはない。

その為か、勉強は算術(算数)や軍略、内政なのが中心となる。


 流石に俺は算数は大丈夫なので、主に内政、軍略を勉強する。

これが中々難しい。 ようは人の生き死にを学ぶのだ。

この時こうなったから、こうしましょう、ああしましょう。

これはこう対処しましょう。 等、テンプレを学び、人と知略を競い合う。

平和な日本で生まれた俺には些か難しいものであった。


「まぁ、何にせよ支度しないと」


 支度と言っても、竹簡数冊と硯と筆だけだけどな。

あと今日は建業周辺の地図を持っていかないとな。


 支度を終え、蓮華の部屋へと足早に向かう。

途中部下やらお手伝いさんに挨拶される。 流石に袁家の毒はいないみたいだな。

一武官だし、取るに足らないということなのだろう。


 そんなことを考えながらも、蓮華の部屋の前に着いた。

既に中は騒がしく、2人とも揃っていることが読み取れる。

流石にもう泣いていないようだ。 が、何か言い争ってるみたいだな。

とりあえずノックして中に入ろう。


「入るぞ~……何やってん??」


中に入ると言い争いとキャットファイト。 つまり喧嘩してる訳だ。


「「何でもないっ!!」」


 声をかけてすぐにお互い手を離して、こちらの向き直る。

そしてこの澄まし顔である。

せっかくセットしてあった髪がグチャグチャになっているので、手招きして手櫛で整えてやる。


「2人とも女の子なんだから、手を出さずに口で喧嘩なさい。

いずれは孫家を背負って行くわけなんだし舌戦の練習だと思って、ね??

それと雪蓮は年上なんだから、力も上だし、手を出したら勝つのは当然でしょ。

またやるようなら、今度から真名で呼ばずに字で呼ぶからね」


というと、2人とも焦って、絶対に手を出さないと言ってきた。


「ならばよし。 さっ、出来たから勉強しよう。

今日は途中から張昭さんが来てくれるらしいからそれまでは自習だね」


 その言葉にギクリとし、ギリギリと首をこちらに動かす雪蓮。

顔にはそんなの聞いてないとしっかりと書いてあった。 自習が嫌なの?

それとも張昭さんが嫌なの?


「まぁまぁ、とりあえず座って。 で、この書簡に目を通して」


と書簡を雪蓮の目の前に差し出す。

タイトルは猿でもできる計算。

うぇっとした表情。

書簡で拒絶反応とかかなり重症だな。


「まぁ分からない所は蓮華か僕に聞いてよ。

むしろこれ位はできるようにならないと、炎蓮さんになんてとても届かないよ」


と炎蓮さんをだしに出す。

少しでもやる気を出してもらわないとな。

その言葉に思う所があったのか、嫌々ながら、1ページめくる。

とても分かりやすいはずだ。 だって書いたの俺だし。

解説も書いたし、図も分かりやすく書いておいたし。

分かりやすいように難しい文字や言い回しはしていない。

いずれは学校を開くつもりなので、試験的に作ったのだ。


雪蓮を見るとすらすらと解いている。

うん、問題は無いみたいだな。

蓮華の方も問題は無いみたいだ。

俺も勉強しよう。

今日は孫子だな。

生前(?)にたまにネットとかで調べていたがイマイチ分からないままだった。

まずこの時代で戦わずに勝つなんて綺麗事は無理だろう。

出来るなら反乱は起きない。 乱世になんか陥らない。

そんなことを考えながらも書簡に目を落とす。


 孫子はイマイチだが、連環の計とか、離間の計とかの方がわかりやすかった。

陣形とかはむしろここの人より詳しいし、その効果も知っている。


あとは自分に先祖が、山本勘助だったこともあって、風林火山は覚えた。

もう本気で調べたからな。

まぁこれは孫子に載ってるけどね。 まぁ、天才には敵わないけどね。

軍師になるつもりはないし、僕の場合は治世に力を出せばいいと思う。

折角未来の姿を知っているのだから、なぞって行けば、それなりになる。

鍛えているのは自衛の為だし、英雄になんてなるつもりはないし。


とにかく今は心得だけでも


「手に入れる」


急にぼそりと呟いてしまってか、2人がこちらを見て、何か言った?? というような顔をしている。

何でもないよと言って、慌てて書簡に噛り付く。

でもやっぱり孫子はちんぷんかんぷんである。

体は子供、頭脳と精神は大人なこともあって、そううまくいかないと否定してしまうからだ。


空城の計とか本当にうまく行くのか??

なんて疑問に思うし、心理としては面白いと思うけどね。

まぁあらゆる状況や罠を仕掛け策とするのだから、うまくいった場合の効果は計り知れない。

それは歴史が証明している。


おっと、 また脱線した。

とにかく今は、書簡の孫子に集中しよう。


 しばらくして張昭さんが来た。

張昭さんはこちらを見てすぐに良々、ちゃんとやってるなと頷いて、視線をずらして、目を皿のようにしてひん剥いた。

 自分が見ているのは夢か幻かと言わんばかりに目を一生懸命をこすり、頬を思いっきり引っ張った。

そうして今ここにある光景は現実であると認識すると、涙を流しながらも喜んだ。


「張昭さん、現実ですよ。

夢じゃ有りませんから、どうぞ彼女の出来栄えを見てやってください」

「えぇ。えぇっ!雪蓮様もやっと、勉学に興味を抱かれて……私はもう感無量で!」


その言葉にうわぁと若干引く雪蓮。

こらこら、元はと言えば逃げてた貴方がいけないんですからね。


「雪蓮。 この反応を見ただろ。 たったこれだけで喜んでくれるんだ。

こんな簡単に。 本のちょっとだけで変わるんだぞ周りは。

自分が変われば周りが変わり、周りが変われば世界が変わる。

雪蓮、自分が変わるには時間がかかる。 毎日少しずつ変えて行けばいいんだから」


その言葉に嬉々として聞きいる3人。

少し間があったがコクリとうなづいた雪蓮をみて、引っ張って来た会があったと思った。


「私、不肖張昭もお手伝い致します」


とやる気満々の所を挫くようで申し訳がないのだが、それでは意味がない。

やらされるのとやるのでは意味が違う。

これは実体験だが、やらされるのではモチベーションは下がる一方だが、一度やると決めたことは、下がってもまた自分であげることができる。


「いえ、張昭さんは問題を作ってもらうだけにして貰って、雪蓮には自分で計画をかけて達成して貰った方がいいでしょう」

「何故です!!やっとやる気になっていただいたのに」

「見てください雪蓮のこの表情。 これが持続出来ると思いますか?? 答えは否です」


俺に言われて雪蓮を見やると、あちゃーっと表情をする張昭さん。


「雪蓮、計画は自分でかけて出来るよな?

目標は毎回張昭さんがここまでってやってくれるから、そこに行くように少しづつ勉強する位簡単だよな?」


と助け舟を出すと首をぶんぶんと縦に振る。

まぁ最初はできないと思うけど、そこは彼女に意識を高めてもらうとしよう。


「出来たらご褒美をもらえるように炎蓮さんに言っておくから、絶対に約束だよ」

「「ご褒美!?」」


何故か反応する蓮華。

いや当然か。 この年なら、ご褒美とは甘美な響きだろう。

当然ながら、雪蓮や蓮華の想像しているようなものではない。

雪蓮にはある意味ご褒美だが、甘えたい盛りの蓮華にはDVでしかない。

ここまで言えば分かるだろう。


雪蓮に対してのご褒美は、炎蓮さん直々のしごきである。


蓮華のご褒美は、俺が考えておくとしよう。


「ん。 蓮華も欲しいか??」


と頭を撫でる。 するとポーッとした表情になった。


「叶に撫で撫でして貰うからいい」

「ん??そんなんでいいのか? いいぞいくらでも。 これ位ならお安い御用だ」


すると机をダンっと叩き立ち上がり、いきなり涙目になる雪蓮。


「ずるいずるい!! いっつも蓮華ばっかりっ!! 叶! 私の頭も撫でなさいっ!!」


驚いた、そんなこと思っていたなんて。

まぁ俺はいいけどさ。 でも―――


「雪蓮」


と真剣な表情を作る。 少し驚いたのか顔を赤らめ逸らす。


「にゃ、にゃにお」

「―――届かない」


そう身長差的に届かないのだ。

忘れないで欲しいが肉体年齢は5歳にも達していない。

頭なんて大人の腰の位置だ。

一方雪蓮は、成長も早いおかげも有り、俺よりも頭2個半程上なので、精々おでこ位までしか届かないのだ。


ところで3人とも、何でずっこけてんの?? 笑えるところでもあったのか??


「こ、こうすれば届く??」

「ん、もう少し屈まないと撫でれない。 そう、それ位」


起き上がった雪蓮の頭を優しく撫でる。

んー、姉妹揃ってくすぐったそうな顔は正に猫だ。


「この天然ジゴロ。 将来がとても不安でたまりません。」

「ん??張昭さん何か言いました?」

「いーえ、なんでも有りません。 それよりも、採点しましょう。

3人とも、答案をこちらに。 砂糖吐きそうなので、早々にお願いします」


張昭さんが何を言っているか分からない。

ごめんなさい。

こんな時どんな顔していいのか分からないよ。

取り敢えず、笑えばいいと思う。

そうだよね? 間違ってないよね??


全力の笑顔で、答案を渡す。

張昭さん、顔赤いな。風邪か??

しばらく手元を覗きながら、2人をわしゃわしゃと撫で続ける。

そのまま10分経ったか、微妙な頃終わりましたとこちらを見て愕然とする張昭さん。


そりゃそうだ。

既に2人は俺の膝の上で夢の中へ行ってしまわれた。


「張昭さん、僕のどうでした??」

「三十六計は分かるのに、孫子は何故分からないのか疑問に思います」


やっぱり駄目か。


「ですが、大まかにあっているところは増えてきました。

この調子で精進してください」

「やった!」


と小さくガッツポーズ。

張昭さんをみると微笑ましいというような表情で、何か恥ずかしかった。


「前から思っていましたが、軍争はそこそこ出来てるんですよね。

他は今ひとつなのですが。 この際しっかり学んで、軍師になった方が良いのではと、勧めたい位です」

「いやいや、僕は張昭さんや韓当さんにはまだまだ勝てませんよ」


その言葉にムッとしたのか、当たり前ですと叱られた。


「いくら神童と言われても、貴方に語られたら、困っちゃいますよ」

「ですよね。それに―――――」

「なんです??」

「これでも僕は袁家の跡取りですから、軍師にはなれないと思います。」


とその言葉にしまったと言わんばかりの顔ををして、すぐに平伏した。


「出過ぎたことを申し上げて申し訳ありませんっ!!」


その姿を見て、少しさみしく感じた。

10にも満たない子供に頭を垂れる大人たち。

これが日常。これが常識。

そう分かっていても、納得できない自分がいた。


「やめて下さい。僕の教師は貴方です。

僕の事を案じ、道をするそうとしてくれた貴方が頭を下げる必要は有りません。

それに僕は今は人質なのですから、もう少し粗雑に扱ってもいいのですよ」

「それはなりませぬ。貴方は私共と違い、高貴なお方。 粗雑などには扱えません」


全く、どうすりゃいいんだよ。


「なら今回の件は不問に。 これからも今まで通りに接して下さい。

出ないと首を刎ねる。 というのは如何ですか??」


と、その言葉に涙を流しながら、更に頭を床に擦り付ける。


「有り難き幸せで御座います。 これからもよろしく、袁術様っ」


ひまわりのような笑顔だった。

俺はこの笑顔を沢山見る為。

守る為に、世界を変えよう。

来たる乱世に大輪の花を咲かせよう。

サブタイトルは以前あげたモノではありません。

単純に私が忘れました。

申し訳ない。


今必死にサルベしながら改稿したり、手直ししながらあげています。

恐らく建業編が終わったら辺りから新たに書き直した話になります。

これは予告した通り黄祖の所為です。


それでは今日はこのあたりで、皆様また来世。

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