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起きたら名族[改訂版]  作者: Dearboy
孫家の人質編
6/10

第5話 「袁術 in 建業 ~人質の定義とは~」

 あれから直ぐに建業にやって来た。

人質と言っても待遇は悪くなく、居候みたいなものだ。

週一で竹簡で手紙が届くから寂しくもないしね。


 あの後から雪蓮こと孫策は俺を追い回し、蓮華こと孫権は俺にべったりだ。

何かした覚えが無いんだが、懐かれたようだ。


 蓮華とはよく勉学をともに励み、雪蓮とはチャンバラをしている。

走り込みもしてるし、体力もそこそこついて来たと思う。

あ、そういえば真名を交換しました。

ここで住むなら家族だと、言われたので。

素晴らしい考えだと俺は思う。


 あと俺は勘違いをしていたらしい。

てっきりもう孫堅は一武官ではなく、中央のエース位だと思っていたが、まだみたいだな。

彼女は今、朱儁殿の元で、賊狩りをして功績をあげている。

官位がつくのはもう少し先だろう。


 それにしても、名族と一武官の交友関係とか、三国志の世界だと稀だと思うんだが。

曹操と夏侯兄弟位なら分かるんだが……やはりこの世界は三国志とはかなり違うらしい。

こんなことになるんだったら、もっとちゃんと勉強しておけばよかった。

横山三国志どころか、まともに読んだことがない。

ゲームの三國無双位のものだし。

精々黄巾の乱からの知識しかない。

呂布がモンゴル出身で丁原の義理の子とか、曹操の爺さんは宦官だったとか、友達から聞いた豆知識程度のものだ。

あと袁逢の死期も分かっていない。

分かっているのは、執金吾になってから死んだという事。

そしてそれは恐らく黄巾の乱以降という事。

これしか分からない。

その期間を引き延ばす為にも色々と動かなくてはいけない。


 さて今日はまず―――



「叶!」


呼ばれたので振り返ると蓮華がいた。


「やっ、おはよ。 どうかしたか?」

「ん、朝ごはん出来たから呼びに来たの」


朝食は出来るだけ家族みんなで取るみたい。

まぁそうだよね。

俺もそれが大切なことだって今は実感してるもの。


「わかった。 じゃぁ行こうか蓮華」

「うん!」


蓮華は俺の右手を握り、笑顔で歩く。

俺もそっと握り返し、微笑んだ。


「叶、朝ごはん食べたらお勉強しよう」

「あぁいいぞ。なら早く行って食べようか」

「駄目! ご飯はしっかりと噛んで味わうだって言ったのは叶なんだからね!」


 そういえば言ったな。

しっかり噛んで食べると、消化にいいし、お腹いっぱいになるって。

特にお米は甘味もでるから美味しくなるって。

それ以降孫家では、よく噛んで食べるが流行した。

そのおかげで、食費が少々浮いているとかなんとか。


「蓮華は本当にいい子だね」


 そう言って頭を撫でる。

頭を撫でるととってもいい笑顔になるので、最近ハマっている。

食堂に着くと、まだかと雪蓮が少々不機嫌気味。


「待たせたね雪蓮」

「遅いわよっ!もうお腹ぺっこぺこっ。 母様、早く食べよう!」

「分かった分かった。 それじゃ皆、食うぞ!」

『頂きます』


カチャカチャと食器と箸、レンゲの音が響く。

江東は大河がある影響で、魚が取れる。

俺のリクエストもあって、焼き魚が並ぶことが多い。


「今日の魚も美味いな」


魚の骨を箸で取り除く。

ふと視線に気付いた


「すごい綺麗に骨取るよね~。 やっぱそういうところが性格がでるよね」

「あぁ、喉に骨が引っかかったら嫌だしな。 それにこれ位は朝飯前だ」

「冥淋も几帳面というか、とにかく細かいのよね~」

「当然だ、雪蓮が気にしなさすぎなんだ。 周瑜とて言いたくて言っている訳でもあるまいて」


う~~~と唸り、箸を口に含みながらじと目でこっちを見る雪蓮。

こらやめなさい、はしたないですよ。

と視線を配ると、別方向から視線を投げられた。

炎蓮こと孫堅だ。


「叶、午後からオレに付き合え」

「というと??」

「雪蓮とチャンバラばっかりではつまらないだろう? オレが稽古してやる」

「ははっ、願ってもない。 でもよろしいんですか?」

「構わん構わん。 お前が気にすることではない」


 俺は本当に人質なんだろうかと不安になる時がある。

本当に忘れてないよね??

この人達フレンドリーすぎるだけだよね??

まぁ稽古つけてくれるし、身柄がほぼ自由なのはいい事だから、気にしないでおこう。


 そんなことより、江東の虎という人物は繊細さの中に豪快さがある。

面白い人物だ。

朝食は慎ましく、ゆっくりと丁寧とっていたが、今は食事を終え、朝から一献やっている。


「さて、ご馳走様です」

「ねぇ、叶はこの後どうするの??」


雪蓮がニコニコしながら喋りかけてくる。


「蓮華と勉強。終わったら炎蓮さんと鍛錬だよ。 雪蓮も一緒にどう?

逃げ回ってお小言より、少し勉強して褒められる方がマシじゃない?」


その言葉にうーんと唸りながら腕を組んで考える。

すると横から控えめにくいくいっと袖を引っ張られた。蓮華である。

蓮華を見つめると顔が若干赤い気がする。


「無理よ。姉さんは自分の興味があることしかやらないわ。 それに叶と2人きりの方が嬉しいし」

「最後の方は何言ったか分からないけど、じゃぁ興味を持ってもらった方がいいね。

鍛錬しながら座学しようか」


 一瞬雪蓮の目が輝いたが、表情は変わらず不満顔。

一方の蓮華は目のハイライトが消えた気がするし、何処と無く無表情だが、若干頬が膨れてる。

顔芸かツッコミを入れたいところだが、入れたら激しいツッコミが来るであろうと予想できる。


「雪蓮。 いつまでも馬鹿扱いされるのは嫌だろう?

 それに運動しながら勉強すると頭に入りやすいという特典付きだ。

 激しい運動ではなく、軽めの準備体操と思ってやればいいんだよ。

 何もずっとやれって言っているわけでは無いんだから」

「う〜ん」


もう一押しかな??

いや、ここは思いっきり引いてみよう。


「ならいいよ。 蓮華2人で勉強しようか。 雪蓮はどうも勉強が嫌いのようだ。

 放っておいてさっさと互いの親の役にたつ為にも勉強しよう2人で」


それを聞いた蓮華は顔を赤らめ、目は輝いていた。

一方の雪蓮は大慌て。

手をわたわたさせて、やるわよっ! やるから、仲間はずれにしないでっ! と懇願した。

始めからそう言えばいいのに。

あれか?素直になれないお年頃という奴か??

やはり女は成長が早いな。


「じゃぁ行こうか。 さっさと勉強してしまおう」

「うん。 でもたまには一緒に遊んだりしようよ~。 叶ってば、こっちに来てから一度も遊んでないでしょ?」


食器を流し台に運びながら話を聞く。

毎日遊んでるんだが……


「雪蓮と毎日遊んでるじゃないか、棒で」

「違うわよっ! というか遊びじゃないわっ、鍛錬よ、た・ん・れ・ん」


木剣でも刃をつぶした剣でも無いのに、鍛錬とは言えないのでは??

それに、雪蓮の動きはメチャクチャで、効率もクソもない。

あれは武道、いや武術の域に達していない。

いいとこ喧嘩殺法って所だ。

だが、ここは指摘するだけ無駄だ。

無難に聞いておくとしよう。


「そだね。 鍛錬だよね」

「何よ、感じ悪いわね。 いーわよ、もう付き合ってあげないんだから」


なんか余計に怒らせたみたいだ。

やはり女は難しい。


「そうかそれは困った。 炎蓮さん、雪蓮は鍛錬に参加しないみたいです」


こちらの意図を読み取ったのか、悪どいニヤリ笑い。

炎蓮さんがやると迫力があるよな~。

でもとても似合うのは何故??

もしかして普段から―――辞めよう。

何か背筋がぞわってした。


「そうか、ならばみっちり稽古つけてやれるな。 付きっ切りの稽古なんだし、技術の一つ位くれてやろう」

「やったっ! 絶対ですよ炎蓮さんっ」

「あぁ、いいぞ。 叶は飲み込みが早いから、直ぐに練度を高める鍛錬になるだろうよ」


雪蓮の様子をチラッと見た所、涙をいっぱい貯めて、こちらを見ていた。

うん、やり過ぎた。 鼻すすってるしガチだな。

しょうがないな、ここはフォローしておこう。

涙を耐える雪蓮の前まで行く。

膝の上で震えながら握り込む手をそっと握り、覗き込む。

そして胡散臭い位の満面の笑みで顔を近づけて囁く。


「雪蓮、雪蓮も一緒に鍛錬しよう。

雪蓮がいないと僕はやだよ。 張り合いがないし、つまらない。

ねっ、もっと素直になって。 もっと僕や炎蓮さんに迷惑かけていいから。

無理にお姉さんである必要はないんだよ」


ねっと微笑みかけると、いきなり号泣された。

その上抱きつかれた。

困ったな、よしよしと頭を撫でると向こうでしてやったりと笑う炎蓮さんがいた。

ちょっとだけイラっとする。

あれ?? 何で後ろからも泣き声が聞こえてくる訳??


「わたしもいっしょにたんれんする~~~っ!」


―――蓮華。

あぁもう。 こいつらほんっとに可愛いなぁ。

おじさんが絶対に守ってやるからな。

っと朝っぱらから濃い一日がスタートした。








ただ炎蓮さんが更ににやりと笑ったのを見逃した為に後々、厄介事に巻き込まれるのはまた別のお話。

大変お待たせしております。

申し訳ございません。

リアルの先輩にばれて、せっつかれて書いております。


ゆったりと書いてまいりますので、またよろしくお願いいたします。

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