第2話 「真名ってなんですか??」
やぁ僕の名前は袁術。真名はまだ無い。
ていうか真名って何??と思う今日この頃。
限定的ではあるけれど、喋れるようになってからもう1年が過ぎた。
普通にしゃべれるよになって、ヨタヨタと歩くようになった位で、特に何も起きなかった。
あと最近の張勲さんがガチでやばい。 私好みに育てて見せるとか言ってる。
そのためか知らないが、よく俺にかまってくる。 特にスキンシップが激しい。
あと張熾さんが俺にお乳を飲ませようと必死すぎる。
恥ずかしいので嫌なのだが、やっ!!て言うと泣きそうな顔でこちらを見るので、仕方なく最近飲むようになった。
その時の嬉しそうな顔は今まで見たこともないと思える程。
そんなこともあったので、よく張親子に追いかけられるようになった。
張熾さん仕事して下さい。
そのため毎日、母、袁逢の後ろに隠れる日々が始まった。
最近、母、袁逢は多忙らしい。
聞き耳を立てたところによると、司空の地位に昇進したようだ。
司空とは三公の一つで、中国の大臣の最高位。
物凄く噛み砕いて言うと、確か警察庁長官で、水道局局長だ。
主に刑罰と水回りを仕切るトップらしい。俺の友達がそう言ってたし、張勲さんが張熾さんに聞いてた内容からして間違いがない……はず。
そう言われてもイマイチ分かりづらいと友達に言ったところ、ようは内閣の大臣仕事を一人二役やっているとの事。
俺には無理だね、絶対に頭がパンクする。帰って速攻バタンキューさね。
そんなは母と言うと、全力ではないだろうかと思う速度で走って来て、必ず俺を抱き上げる。
頬ずりを気が済むまでやった後はキスのラッシュ。
言い忘れていたが、俺は前世で20歳の誕生日が過ぎた後にここにいたわけだ。羞恥心と言うものがこみ上げるわけだ。
だって、金髪巨乳美女で美しいエメラルドグリーンの瞳だぞ!!
俺がもし年相応なら、据え膳は頂きますよ!
とまぁそんな感じなのだが、ある時かたそんなことも無くなった。
なぜって??この人俺の母親じゃん。
流石に母親には欲情しません、出来ません。
と言うわけで母の気が済むまでなされるがままな訳だ。
で、そのまま母の後ろに隠れて2人をやり過ごす。
母がいる時は2人共大人しいからだ。
さて、俺の身の回りの話は置いておこう。
とりあえず、この世界は三国志であるのは分かった。
が、幾つか違う点がある。
一つ、有力者は皆女性が多い。
二つ、宦官や十常侍のような腐った者共は男が多い。が、何進や何太后は女性。
三つ、帝も女性であるが、妻も女性。 なんでそんな非生産的なことをするのか分からない。
四つ、とりあえず武将は漫画の人物ばりに強い。有名武将(一般将校)はヤムチ⚪︎。以降、クリ○ン、天さん、ピ⚪︎コロとなりベジー○が恐らくカンスト。悟空クラスがいたら地球が滅亡する。
五つ、とりあえず皆若すぎて、露出が多いので目に毒。あと服が時代に追いついてない。
とまぁこんなところかな。
あと真名というシステムがある。 これは今のところまだ分からない。
ただかなり重要視されてるみたい。
張勲さんがよく“ななの”と呼ぶように言ってくるのだが何となくやな予感がするので呼んでいない。勲姉とかちょーくんって呼んでる。
でもあまり近づかないよ怖いから。
張勲さんに近づく位なら、張熾さん抱っこをせがむよ。
とそんなことばかりしていたら、流石に察したらしく、今後は今よりは近づいてあげようと思った。
娘より母の方がいいと分かった張熾さんのドヤ顔素敵です。
実際に綺麗なんだけどね。
あ、その時に張勲さんが何で~!!と言いながら床ドンしてたので若干引いた。
しかもそこで空気の読めない母が帰って来て、何やってるの??って言いながら俺を奪い取り、笑顔の俺を見て涙流してる張親子はどんだけ俺のことが好きなんだろう。ちょっと疑問だ。
そろそろ流石に赤ちゃんプレイが本気でキツイので、張勲さんにお願いして、勉強することにする。
「勲姉様、真名ってなあに??」
いきなり話しかけられた事に驚いたのか、キョトンとする張勲さん。
そしてきゃーっと言って抱きついて来た。
「何ですか!? なぁに!? お姉ちゃんが手取り足取り全部教えて」
張勲さんの後ろから幽鬼が忍び寄り、そしてありない速度でハリセンで叩かれた。
すっごい音したけど大丈夫かな??
だってハリセンといえば、ぱこーんでしょ?べこっていってたよ。
そんなピクピクしている娘を尻目に俺を抱き上げる張熾さん。
「大丈夫ですか公路様。 怖いお姉さんは私が追い払いますからね~」
倒れてる娘の首根っこ掴んで外に追い出そうとするので、慌てて止める。
「違うの、張熾母様。 勲姉様に質問しただけなの」
と顔を見上げると、鼻から血が?! 顔は満面の笑みだから余計に怖い。
母も時々こうなるのだが、一体なんなんだろう。 立川に住んでいる聖さんと親戚か何かですか??
まるで猫のように首根っこを掴まれていた張勲さんが復活した。
「痛いじゃないですか!! 袁術様の言う通りですし。 私何も悪いことしてませんっ」
つーんだと頬っぺたをぷくーっと膨らませて拗ねている。
こういうところは年相応で可愛いのだ。
だが、張熾さんは笑顔で手をパッと離す。そしてドスンとお尻から落ちて、またのたうち回る張勲さん。
先程可愛いって言ったの撤回していい??
「事実だとしても、抱きついて手取り足取り教えてあげる必要はありません。 質問された内容のみを簡潔に教えなさい!! 必要とされたら詳細を教えてあげればいいでしょ」
そうです、そうなのですよ張熾さんっ! 俺が望んでるんですよっ!
「だってぇ、袁術様が可愛いですもん。 勲姉様だよっ! 今まで言われたこともないし、寧ろ近づいてくれなかったんだもんっ!」
頭をふりふりしながらきゃーっと先程の出来事を思い出しているようだ。
「それはあなたが追い回すからでしょうに。 それに可愛いからといってなんでもして言い訳ではありません……よっ」
デコピンってさ、ぺちっだよね。 ぴしゃんって何??
鞭が当たる時にそんな音がするけど……まさかねぇ??
「痛い痛い痛いよぉ~!袁術様慰めて~」
と急速接近してキス顔で迫ってくる張勲さんをてで押さえつける張熾さん。
「まだお仕置きが足りないのかしら。 な・な・の??」
ふと周りの温度が一気に下がった感じがした。
これ以上痛めつけられて、怪我をしたら可哀想なので、助けてあげることにした。
「張熾母様、真名ってなあに??」
服をくいくいと軽く引っ張る。
キョトンとした顔を直ぐに笑顔に変え、質問に答えてくれた。
「本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前であり、本人の許可無く“真名”で呼びかけることは、問答無用で斬られても文句は言えないほどの失礼に当たるんです。
ですから例え我が愚娘でも勝手に呼んでは行けません。きっと責任を取れと言って犯されます」
な―――なんて恐ろしいシステムなんだ。つうか犯されますって、ショタコンなのか。 というか赤子に欲情するなよ。
「ちなみに私の真名は八重ですので、今度から張熾ではなく、八重とお呼び下さい袁術様」
「八重母様??」
あー、鼻血鼻血。ダバダバ出てるって。絶対やばいよそれ。
「ずっるーい!!袁術様、袁術様っ!前々から言ってたように、私の真名は七乃ですから!」
八重さんでそれなんだから自重しよう。
「勲姉様??」
まるでこの世の終わりでも見たかのような見事なorzからの床ドン。
「何で~っ!! 母様は真名でなんで私は愛称なの!?」
「ふふん。これが信頼の差だ」
とドヤ顔が素敵な八重さん。 もう血が止まってる。 驚異的な回復力だ。
俺もいずれはこんな風に驚異的な身体能力(ギャグ補正)を手に入れるのかなぁ??
激しく不安だ。
「む~~~っ。 絶対に呼ばせてみせるんだから~~~!」
彼女は風になった。 そして風はもう一度吹いた。
「袁術~~~~~っ! たっだいま~~~っ! あ~もう袁術ってば可愛い~~~!!」
母が帰って来た。 直ぐに激しい愛情表現をすると、八重さんに向き直った。
「そう言えば八重、七乃が泣きながら走ってたけど何かあったの??」
すると困った子ねぇという感じに眉をひそめている。
「えぇ、ちょっとね。大したことではないわ」
「そうなの」
「えぇ、馬鹿なのよあの子」
「そうなの……」
同じそうなのでも言葉の重みが違う。 そして2人とも顔が残念そうだ。
「母様、母様。 八重さん、張勲虐めてた」
「八重あんたねぇ……袁術、今なんて言ったの??」
「張勲虐めてた」
「その前」
「母様??」
目を細めている。 少々イラついてる。 あれ?? 俺なんか地雷踏んだっけ。
「琴音、私が許したのよ。真名について疑問に思っていたみたいで、尋ねられたから教えたの。七乃は呼んでもらえなかったんで拗ねてるのよ」
「成る程ね~。袁術、妾の真名は琴音じゃぞ。覚えておくのじゃ」
「琴音母様!」
また鼻血が―――出たけど踏ん張った。 流石に慣れてらっしゃる。
「あ、でも袁術の真名はまだないわ」
それがオチなんですね、わかります。