表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
起きたら名族[改訂版]  作者: Dearboy
孫家の人質編
10/10

第9話 「朋友にして盟友にして家族」

 あの後、本当に理解してるのか分からない位しつこくも一回言ってみとつきまとわれた。 流石に恥ずかしいのでそっぽ向いたり、聞こえない振りしてみたりしたのだが、未だにも一回っとこっちに迫ってくる。 言わなきゃよかった。


「そんなことよりも、鍛練しましょう炎蓮さん」

「そんなこと?? そんなこととはなんだ! オレは男の子が欲しかったんだっ!

 可愛がっている男の子にお母さんって言われたんだぞ! こうふ――もうダメだ、抱きしめさせろ」


 そういってガバッと抱きついてくる炎蓮さん。 その無駄に豊満な胸に顔を埋められる。

 男として嬉しい半面で、呼吸が出来なくて苦しい。 思わずタップして、苦しいと伝える。 流石に放してくれたが、結局あすなろ抱きの要領で、抱きしめられる。


「鍛練しましょうよ〜」

「もうちょっとだけ、いいだろ? それに、あれだけ出来るんだ、誘拐も出来んし、大丈夫だろう」

「武器がないんですって……だから他の武器も使えるようになりたいんですよ」


 その言葉にすこし思案した様子の炎蓮さん。 ふとこちらをみた。 が、すぐにまた考え事をしているようだった。


「武芸百般とまでいかなくていいですけど、短所位は消したいじゃないですか」

「短所ね〜。 そんなもんは全部時間がかかるもんしか残ってないだろ」


 確かにそうだ。 筋肉が足りない、はやさが足りない、何よりも経験が足りない。


「それを埋めるためにも鍛練が必要なんですよ。 今僕に必要なのは濃密な経験。

炎蓮さんと祭さんの2人が1番経験させてくれますから」

「女をか?」

「ち、違いますよ! そもそも大の大人が、3歳になんかに欲情しないで下さいよ。 鍛練の話ですよ」


 そう、祭さんと炎蓮さんと程普さんは俺を1人の男として扱っているらしく、度々誘惑されるのだが―――俺は3歳なので、欲情しても相手は出来ないという現実がある。 なので、精神的に結構きついところが有る。


「はっはっは、お前が相手だとつい歳を忘れてしまう。 許せ」

「別にいいですけどね。 もういいですよね? 鍛錬しましょう」


 そういって俺は名残惜しいが、炎蓮さんから離れた。 そしてくるりと振り返り、早く早くと急かした。


「ウチの娘共もこれ位真面目ならなぁ」

「何をいってるんですか、十分勤勉ですよ。 まぁ偏りはありますが」

「その偏りが困るんだっつーに」


 まぁ言いたいことはわかりますがね。 でも、若い内はそんなものだと思いますがね。

 俺も剣術ばかりに励んだことで、孤立してましたし。 それに勉強も平均よりもちょい上位しか取れなかったし。


「それを求めるのはすこし酷ですよ。 まだ十代ですらない少女達ですから、遊びたい盛りですよ」


 その言葉にため息がこぼれた。 その顔は実に憂鬱であったが、こちらを見つめる瞳は慈愛にあふれているように思える。


「そうはいっても、お前が出来るんだしと思ってしまうのが親心というか大人なんだ。 あぁ、本当になんでお前は俺の子じゃないんだろう」

「それは言わない約束だろおっかさん」

「よし、決めた。 俺の娘をお前にやる! どっちがいい?」


 何を言ってるんですかこの人は。

この時代の跡取りは、とても重要だ。 弓腰姫でもなければ嫁になど貰えないぞ。


「僕は長男なんで婿には行けませんし、本人の気持ち次第でしょう。 僕以前に」


呆れた表情されるのは心外だ。 俺は竹槍を取り出し、構える。


「なんで槍なんだよ。 剣の心得があるんなら、剣にしろよ」

「逆ですよ。 剣に自信があるから自信のない槍を鍛練するんです。 それに槍は今の僕にとっても有用ですよ」

「あん? 未熟なお前の槍なんか軽くいなしてとっ捕まえること位楽勝だぞ」

「いやだから鍛練するんですって。 槍の間合いの広さですよ。 長槍ならかなり稼げます。

突き以外は問題ないのは見ての通りですし、初撃に関しては問題ないはずです。 ようは平突きですしね。 後は―――」

「ようは引き手が問題なんだよ。 突き自体に問題はない。 ただ引く時にやり自体がぶれるために、2撃目が遅れるんだ。

なんつーんだ? 紐を引っ張るような感じでいいんだよ。 お前は下半身が生命線みたいだし、体全体で突いてみたらどうだ?」


 紐を引っ張るような感じ? 綱引きみたいな??

体全体でってことは、腰の回転を加えるってことだろう。 後は足の踏ん張り。 シフトウェイトってことなんだろう。


「お前はどうやって剣で突きを繰り出すんだ? お前の三段突きは中々見事だと思うんだが」


 剣で突きを繰り出す時? 俺はあえて左手で突いてたな。 そうすることによって予備動作を少しでも減らすようにしてたし。

 そもそも剣を扱う基本中の基本で、もっとも重要なのは左手―――左手? そうか!


「炎蓮さん分かりましたよ! 早速試してみたいので、お願いします」


 そう言って、左手で槍を持ち、右手は添えるだけの状態で構えた。 ようは右手が問題だったんだ。 右手で突いたことはあまりない。 それで感覚が分からなかったんだ。

 炎蓮さんが構えたのを確認して、俺は一気に間合いを詰めて三段突きの要領で突いた。 手応えがあった。 先程までの突きとは全く別物と言ってもいいだろう。

 腰の回転を加えた突きは、とてもスムースで、左手で持ち直した槍は素早い動きを見せつけた。

 三段突きから下段払い、中段払い、とくるりくるりと回りながら間合いを広げ、今度は突けるだけ突いた。


「おいおい、まるで別もんじゃねぇか。 これなら、少し苦労しそうだ」

「少しですか……でも、これなら鍛練していけばそこそこ使えそうですね」

「だな。 それに左構えはかなり少ない。 故に慣れるまでは先手を取ることが出来るだろう」


 左構えは少ない? サウスポーがあまりいないってことなのか?


「左で槍を持つ奴なんて、軍属ではいないだろうな。 そういうのは隊列を乱すし、武芸者にはいるかも知れないが、変わり者に違いない」

「痛い言葉ですね。 しかしこれで再確認させられました」

「ん? 何をだよ」

「僕が剣士である、ということです。 しかし左手の重要性に左右されるなど、武芸百般にはまだ程遠い」

「何言ってんだよ。 今ので戟や長物関係の問題点は殆ど解決したじゃないか。

後は弓の感覚を掴めば、お前の年代では間違いなく現状では武芸百般を名乗れるぜ。 後は時間をかけて鍛練してくしかないだろ」


 炎蓮さんが言うんだから間違いはないだろう。 確かに俺の年代なら呂布を除けば、こんなに手広く扱う物はいないだろう。 得物を選んでられない状況下でも戦う為にも、仕方が無いとはいえ中々厳しいか?

 これからのスケジュールは、私塾に通う。 徐庶をどうにか引き抜きたいから、司馬徽の私塾に通う必要がある。

 また、今の内に西涼に行って董卓を見極めることも重要だろう。 ついでに呂布も見ておきたいところだな。


「おい叶、聞いておるか?」

「すみません、考え事をしてました」

「そろそろ日も暮れる。 彼奴ら起こして飯にしよう」

「そうですね、あの2人が拗ねなきゃいいけどな……」


 その言葉にキョトンとして、首を傾げる。 本当にこの人の無意識の行動は可愛いな。 持って帰りたい位だ。

――ではなくて、さっき言ったのに愛情云々って。


「かわい――ではなくて、愛情云々って先程言ったでしょう。 どうせだったら早速甘やかしてみたらどうです?」

「甘やかす――どうすりゃいい? オレはその……そういうのはやったことがなくてだな。 夫に任せっきりだったからな」


 なんて不器用な人―――哀れな。

 すぐに出来る手っ取り早いのは、食堂まで肩車か? うん、それでいいか。


「手っ取り早いのは、食堂まで肩車でもしてみたらどうですか? 子供は高いのが好きですし。

高い景色というのは、簡単には見えないですし、肌と肌のふれあいは、安心感がありますし」

「そ、そうか。 よしっ! 早速来い叶」

「いや、僕じゃなくて。 蓮華にでもしてあげて下さいよ」

「お、おぅ。 そ、そうか。 分かった、行こう叶。 そ、その……ちと不安じゃから、ちとそこまででいいから手を握っててもいいか?」


 鼻血が出そうな位可愛いんですが。 俺がギャップ萌えだと知っててやってますか? いやそうとしか思えない。 べ、別に手位いつでも握ってあげるけどね。

 動揺を隠すように、数度瞬きをして、唾を飲み込んだ。 少し鼓動が早いが、許容範囲である。 おっと、笑顔笑顔。


「いいですよ。 それ位お安い御用です」

「す、すまん。 その……頼む」


 と、少し遠慮気味に手を差し出した。 少し震えていて、緊張しているのがよく分かる。

 恐怖―――とはまた違うのだろう。 不安を取り除けるように、あえて恋人繋ぎをして歩く。


「あー、そのなんだ。 少し、恥ずかしいもんだな」

「そうですか? 僕は嬉しいですけど。 炎蓮さんと手を繋いで歩くと安心できますし、僕は炎蓮さんのこと大好きですしね」

「〜〜〜っ! そう言うことを、サラッと言うでない、馬鹿者」


 そう言いつつも、僕の手を握る力はキュッと……というよりも、よりギュッとなった。


「逆にこういうのはサラッと言えないと恥ずかしいもんですよ。 大丈夫ですよ。 2人の所まで、手は放してあげませんから」

「お、おう。 しかし妙なものだな。 蓮華位の子に手玉にとれるなど」

「まぁまぁ、ほら着きますよ。 心の準備はどうですか?」


 顔と手に汗が滲んでる。 どんだけ緊張してんだこの人。 少し呆れてしまうな。

 まぁ、慣れないことをするんだから当然と言えば当然なのかもな。


「ずっとここにいても仕方ないでしょう。 行きますよ、炎蓮さん」

「う……うん、行く。 頑張る」


 え、幼児退行してる?? 大丈夫かなぁ。


「ほら、雪蓮。 起きろ〜。 もうご飯だぞ〜」

「れ、れんにゃ起きなさい。 そろそろお家に帰るわよ」

「なんでそんなに噛み噛みなんですか? しかも言葉使いが女らしくなってるし」

「う、うるさいわねっ! オレだって緊張位するわっ!」


 えぇ〜。 普段は男っぽいのに緊張すると女らしくなるって、何それ可愛い。 でも、今回はいらない。


「ほら、自分の子なんですから。 頭撫でて、抱っこして。 優しく起こしてあげて下さい」

「う、うん。 蓮華。 もうすぐご飯だから起きなさい」


 ん、良きかな良きかな。

 さて、こっちは寝坊助を起こさんとな。 雪蓮の頭を撫でて、耳元で囁く。


「起きないと炎蓮さんの大目玉が飛んで来るぞ」

「ひゃいっ! 起きます! 起きてますっ!!」

「おぉ、飛び起きた。 ほら、ご飯だからもう家に帰るよ」

「何を言ったんだお前は。 それよりも起きねえな、蓮華は」


 なんだもう取り乱してないのか。 可愛かったのに残念。

 炎蓮さんの言葉通り、蓮華は抱っこされて余計眠り込んでしまった。 安心したのだろう。

 今日は雪蓮と暴れまわったから疲れてるんだろう。


「なら寝かせておいてあげましょう。 まだ子供なんですし、仕方ないでしょう」

「ふん、そんなもんかぁ?」

「僕も、もうそろそろ眠いですし、しょうがないですよ。 今日は一緒に寝てあげたらどうです?」

「む、ならお前も一緒にどうだ?」

「遠慮しときます。 今日位、親子水入らずでどうぞ」


 手の平でひらひらと振ってお断りする。

 少し不満げな顔は、まるで少女を彷彿させた。 まだ眠りまなこの雪蓮を抱き起こし、声をかけ、手を引いて歩く。 逆の手に炎蓮さんの手を引いて家路へと向かう。


「ほ〜ら、雪蓮。 しゃんとしよ?」

「ん〜、まだ眠いよぉ」

「やれやれ、これではどっちが年上か分からんな」


 精神年齢は僕の方が上です。(キリッ

 まぁ、少し幼いとこがあるところが雪蓮の可愛いところでもあると思う。


 この手を離さなくてはならない時まではこの手をしっかりと握っていよう。 朋友と呼べる存在になれる日が来るとしたら、いつか俺の秘密も伝えよう。

 例えこの手を離すことになったしても、孫家の皆は“ボク” の家族なのだから。




 皆様緊急事態宣言中、不自由な思いでストレスを抱えている事と思います。 私もそうです。

 今、会社が1ヶ月休みで、絶賛ニート中です。 が、外では子供は元気よく、親も一緒に歓談してます。四六時中。いやいや、自粛やでと言いたいですが、まだ言わないであげています。

 そんな訳で、ゆっくりと今月は更新していきます。


それでは皆様、また来世。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ