一話 覚醒
それから、ギルドに行き、外に出ると
「西門は獲物の取り合いか、これじゃあ駄目だな。森の中に行くか」
森の中に入ると、プレイヤーは全く居なく、どうやら外で追い掛け回しているのが殆どの様だ。
森の中は少し薄暗く木々が生い茂っているため日があまり入ってこない様だ。
少し歩いていると、目の前に狼が三頭同時に襲い掛かって来た。
それを両手で剣を持ち、タイミング良く横振りをして、三頭の攻撃にカウンターを決めた。
それにより、狼達は横に投げ飛ばされた。そこに、追撃し三頭を処理する。
このゲームは、行動によりステータスが上がりレベルアップでは、スキルポイントが手に入る。
スキルポイントをステータスに振る際にも各ステータスの数字は見れない。
なので、上げたいステータスを上げる事になるのだ。ちなみに、βでは数字等は従来のゲームと同じだったが、終わった後に公式がβテスト限定だと言っており、変わらない点は、敵の攻撃パターンと
各武器の感覚だけと、言ったのだ。
その際、騒ぎが出たが結果収まりちゃんとゲームが発売されたのだった。
「敵が出てきたならこの辺りを中心に狩りをしよう」
そうして、敵を求め移動を開始した。
「狼が飛び出してきた、茂みの方から行くか」
開始してすぐに、角が頭と頬の両側にある敵と遭遇した。角兎の頭の角は長く、他の角は少し生えている
程度だった。ちなみに、このゲームはリアル重視なためこの様なゲームで倒したモンスターは解体を
しなければ、素材は手に入らず、解体も下手ならば素材として使えない物になる。
先程の狼三頭は、ちゃんと傷を付けた場所から開始し剥ぎ取ったのだった。
兎はこちらに気が付くと走って勢いを付けた状態で飛び、回転しながら直線状に飛んできた。
その際に、耳が光を反射したため耳にも何かあると分かった。
咄嗟の判断で横の平たい箇所にし、斜めに向け衝撃を逃がしつつ、そのまま叩き落とした。
追撃で、口から剣を刺し留めを刺した。
「さて、耳はどうなっている」
解体する前に、耳がどうして光ったのかを調べる事にした。
「なるほど、耳の先が金属の様になっているのか」
兎が飛んだ場所を見てみると、草が切断されていた。更に、兎を叩き落とした際、
耳が当たった際の感触も金属の様な硬い物を叩いたかのような感じだった。
「さて、一旦戻るとするか」
アイテムがこれ以上入れれないのでは捨てるか戻って処理するしなければならないからだ。
アイテムが入れれるのは十枠で一枠99まで入るし、匂いや重量を気にしなくていいのだ。
これは、別のゲームならばあり得ない事だが、リアル重視なこの作品が多少妥協した部分だと思った。
あまりに現実に近づけると、ゲームが進まなくなるからだ。
それでも、レベル10になると、アイテムボックスは使えなくなる、代わりにバッグになる。
それまでに、マネーを貯めるか課金してそれぞれの袋を買うかのどちらかになる。それと一週間はゲーム性が強いが、それを過ぎれば本格的にこのゲームが現実味を増す。
まず、現在は現住人の事をNPCと呼んでも、固定の言葉を言わない限り同じ言葉を繰り返しているが、
これが撤去され、住人が本当に生活を始め、NPCと呼ぶとすぐに嫌われるようになる。
更に、物流や生態系も追加されるので、狩り過ぎれば他のモンスターが増え大変なことになったり、
ダンジョンやモンスター達の群れでの移動やモンスター同士の戦いを始めたりもする。
なので、最初の一週間が大事な時なのだ。
マネーとは、このゲームの通貨の事だ。運営は、名前を捻る事はしなかったらしい。
そうして、街に戻り、食事休憩をして居ると、「隣いいですか?」と聞かれた。
「どうぞ」
そして、食事を続けようとした所に横に来た女性が喋り掛けてきた。
「ねぇ、貴方、深層意識を見てみない?」
「興味ない」
食事を再開しようとすると
「私から見れば貴方は才能の塊に見えて、深層意識を見れば凄い事になると思うのだけど?」
とこの様に話しかけられたが
「言ったはずだ興味無い」
今度は、強めに言った。それでも彼女は
「一回でいいからお願い」
と横で手を合わせて目を瞑ってお願いして来た。今度は、無視する事にした。
「分かったわ。私も本気だと分かって貰うために、意思を示すわ」
彼女はそんな事を言ってきたので、仕方なく彼女の方を見る
「全裸土下座するから、貴方がやらないと言わない限り」
そんな脅しをされた。流石に、他の人の視線がある為、ここは素直に折れた。
「そんな事をされたら自分が掲示板で叩かれる、そうならない為に聞いてやる」
彼女は脱ごうとしたのを止め、座った。
「良かった、流石に恥ずかしいからやりたくは無かったから。それじゃあ改めて言うわ。
私から見て貴方は才能の塊に見えるの、だから、それを開花させるために、
深層意識に潜って貰って、そこで本当の自分を手に入れるの。私はやったから才能の塊に、
見えるとか言ってるの」
なるほど、どうやら彼女はなぜか必死な様だ。その結果がさっきの発言なのだろう。
「分かった。どうせ断ればさっきの続きをするのだろう?」
「ええ、そうよ」
「なら、受けるしか残って居ない」
彼女は笑顔でお礼を言って、説明を始める。
「私の場合はリアルでお金でやったけど、貴方は私の指を見てて、針みたいに行ったり来たりすれば、
お金と一緒の効果を得られるだろうから」
そう言って、彼女は開始した。こういうのは試させてそこを突けば大人しくなるため素直に従う。
「成功ね。目が虚ろな状態だし、貴方は眠り、もう一人の自分に合いに行きます。さあ、行ってきなさい」
真っ暗で何もない場所に居た。だが、なぜだかこの先を知っているような感覚に陥った。
それでも進み、進んだ先にはもう一人の自分が居た。
「まさか本当になるとは」
「お前からすればそうだろう。お前は、無意識に自分を抑え込んでいた。
そして、俺はそれを知っていた。あの女には感謝物だ。
さて、俺を受け入れろ、そうすればあの女のお願いは終わりだ」
差し出された手を握れば何かが終わると感じたが、あれの方が面倒だと思い手を取った。
「どれぐらい掛かるのかな?」
そう思いつつ食事をして居ると、横から感じたオーラによって自分は動けなくなっていた。
咄嗟に距離を取ろうとしたのにだ。まるでそれを拒否する様な、
「違う、圧倒的な者を前にして体が動かなくなる奴だ。だとすれば」
恐る恐る顔を上げると彼、いや私が使えるのもおこがましい存在が目を開けた
「お前が目覚めさせた物はどうだ?」
彼のオーラによって言葉を発する事も出来ず、息をする事も出来ない、逆に締め上げられている様な感覚だった。
「素の状態では強すぎて、息をする事も出来んか」
圧倒的存在がオーラを大分引っ込めたので息苦しいが呼吸ができるぐらいまでは抑えて下さったようだ。
「私は、深層意識を見て、誰かに使えたいと知り、それ以降それが強く増すばかりでした。
周りの者は使えるに相応しくなく、貴方様を目覚めさせていだきました」
彼は目を閉じ、オーラが薄っすら感じるぐらいまでに下がった。
「お前には、本当の俺を目覚めさせた業績がある、故に許し使える事を許可しよう。
そして、俺の為にな」
「っは。有りがたきお言葉です。貴方様の事をなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「プレイヤー名でよい。お前の事もその名で呼ぶからな」
彼女は体制を崩さずに、返事をする。ちなみに、騎士が王にする体制です。
「承知いたしました」
ちなみに、二人以外には客は居ない。彼が目を閉じて居る間に食べ終え、ここを出て行っていた。