縁の下の力持ち
普段、あまり物語に出てこない元ワイトキングに焦点を当てて見ました。
どうでしたか?
間章 とあるワイトエンペラーの忠誠
ドーモドーモ、ワイトエンペラーです。え?あんたは誰だって?ご冗談を。我が主で、冥皇竜でもあるハデス様が管理していらっしゃるダンジョンのシステムを維持、管理しているワイト軍団の元ワイトキングでございます。
ハデス様は、その優しさから召喚してから暫くして私に加護を与えてくださって強化してくれました。
おかげで、今では無数のアンデット系のモンスターを無数に召喚することが出来るようになりましたし、それまでは同等だったバンパイアロードなどを召喚することが出来ました。
しかしながら、基本的にワイト軍団はその姿形から人々から恐れられる存在であるため、昼間は人前には出ず、深夜になって人々が寝静まった時間帯が我々の仕事でございます。
その仕事内容は、ダンジョン間で走っている列車のメンテナンスから線路のチェック、ダンジョンとその城下町ごとにある上下水道のチェックなどなど、技術が必要な上に人々が嫌がる仕事を積極的にこなしています。
何故、この仕事をやり始めたかというと、ハデス様に召喚されたばかりの頃まで時計の針を戻さなければなりません。
~~~~~~
「む?」
召喚術によって有なる無から引っ張られる感じを受けた私は、久方振りの楽しみを感じた。以前、召喚された時は宮廷魔導士によってだが、あまりの弱さに逆に眷属になってもらった。願わくば、召喚したものが私よりも強大な存在であることだ。
私は王であるぞ。数多の眷属を従えるワイトの王。王は小物に対しては膝はつかぬ。それが例え、召喚主であろうと浅はかに眷属にしようとする小物は逆に眷属にしてもらうまでだ。
膨大な魔力とともに私の体は実体化していく。・・・なるほど、これほどの魔力の行使を無理もなく、寧ろ余裕を持って使用する者であれば多少の実力を持っているのだろう。
そして私は、その世界で顕在化させられた。
眼球のない眼窩に立つのは、1人の青年―!?・・・あぁ、なるほど。この建物の何処かにある部屋の光景も、青年の隣にある巨大な水晶玉も、全てはその青年のためだけに作られた調度品ばかりである。
不死身の体になった私の心の臓腑の鼓動はとうの昔に消えており、代わりに空洞があるだけだがそれでも高鳴る感覚がした。
圧倒的な力、圧倒的な魔力、圧倒的な気配。その全てが禍々しく、そして美しい。その美しさは下賤な娼婦が纏う美しさではなく、神々しさがあふれる美しさである。例えるならば、朝焼けの美しい景色が見える山々とその下に広がる大自然のようなものだ。
その青年こそ、かつて若かりし頃の私が追い求めてついぞ相まみえることがなかった神と呼べる存在。
そして私は、膝を折りながらこう言った。
「我が崇高なる神よ。如何なる命令をも身をもって完遂する覚悟があります。ご命令を」
私がそう言うと青年は、
「俺はハデス。貴様に命じるのはダンジョンのシステム管理とその維持だ」
「システム、ですか?」
「そうだ。今、その記憶を渡す」
そのように言ってから、呪文を唱えると私の記憶に新たな知識が備わった。
「・・・なるほど。承知しました」
それは、この広大なダンジョンの構造とそのダンジョンを便利に移動できるの乗り物の設計図などであった。私はその乗り物を初めて知ることになるが、図面の方は非常に簡単かつシンプルに纏まっているため、分かりやすかったのだ。
「この仕事、命に変えても完遂するように努力します」
「期待しているよ」
ハデス様は、骸骨頭である私に微笑みかけてそう言って下さった。
~~~~~~
それから数ヶ月。多くの人がダンジョンからダンジョンへ移動するのなかで、消費して摩耗する部品を変える作業を続けていた。その中でわかったのは、摩耗しやすい部品としにくい部品があるということだ。
摩耗しやすい部品は、足回りである車輪や動力を車輪に伝える部分だ。逆に摩耗しにくい部品は、人々が座る座席などだ。これらは、分解がしやすいようになってはいるがそれでも部品交換に強い力が必要だ、と思ってハデス様に具申した所、力があるホムンクルス・ゴーレムを複数人、用意して下さった。
そのゴーレム達は人の形をしてはいるが鎧や兜をフル装備できている騎士に近く、僭越ながら理由を聞いてみると「そういう仕様だ」と普通に言われてしまった。そこから考えるに、どうやら深い理由はないらしい。
ともあれ、これで非力なワイトたちでは出来ない仕事もゴーレム達によって順調に進んでいる時、侵入者を知らせるブザーが鳴った。それは進入が禁止されている地下鉄の路線を歩いているブザーで、ワイトの軍団を出せば追い返せるだろうと思っていた。
しかし、一般人が迷い込んだのではなく、ハデス様に用があって押しかけた連中だったのです。
そのため、光や聖属性の魔法に弱いワイト軍団では太刀打ちできずにあっさりと突破され、ダンジョンコアがある本陣にまで侵入を許してしまった。
ハデス様はそのことを気になさっていませんでしたが、システム面を預かっている私にとっては屈辱の極みであり、そのことでハデス様に嘆願をした所、強力な加護を与えてくださったのです。
それにより、私はワイトキングからワイトエンペラーにランクアップを果たし、今に至るわけです。
ついでに、ランクアップする前の私のステータスですがこうでした。
種族:ワイトキング
状態:正常
レベル:25/60
HP:5800
MP:7000
攻撃力:286
防御力:174
魔法力:918
素早さ:379
固有スキル
『死霊術:Lv--』『眷属化:Lv6』『鑑定:Lv7』『宮廷作法:Lv8』『指揮:Lv8』『気配察知:Lv4』
耐性スキル
『魔法耐性:Lv--』『状態異常耐性:Lv6』『闇属性耐性:Lv5』
通常スキル
『闇属性魔法:Lv--』『炎属性魔法:Lv8』『土属性魔法:Lv5』『毒魔法:Lv9』『トラップ:Lv5』
称号
『不死王:Lv--』『眷属の王:Lv--』
そして、ハデス様の加護が加わった後のステータスです。
種族:ワイとエンペラー
状態:正常
レベル:54/80
HP:16390
MP:37260
攻撃力:1560
防御力:690
魔法力:6470
素早さ:1800
固有スキル
『死霊術:Lv--』『眷属化:Lv--』『鑑定:Lv--』『指揮:Lv--』『気配察知:Lv--』『HP自動回復:Lv5』『MP自動回復:Lv6』『暗視:Lv4』『高速並行処理:Lv--』
耐性スキル
『魔法耐性:Lv--』『物理耐性:Lv--』『状態異常耐性:Lv--』『属性魔法耐性:Lv--』
通常スキル
『闇属性魔法:Lv--』『炎属性魔法:Lv--』『土属性魔法:Lv--』『毒魔法:Lv--』『召喚魔法:Lv--』『時空魔法:Lv--』
称号
『不死王:Lv--』『眷属の王:Lv--』『冥皇竜の眷属:Lv--』
ステータスはかなり強化されていますし、スキルの方もどんなに頑張っても覚えられなかった物がありますのでハデス様には感謝の極み以外の気持ちが湧きません。
そんな私の一日はというと、夕方から始まります。
何故、夕方からかというと先程も言いましたように人々に私達の姿を見せないためであり、その日に消耗した部分や破損した部分の報告を担当のゴーレムから受けるためです。
そして、深夜の修理時間の前に配下のワイトキングやエリートワイトなどと事前にチェックしあってから、現場に向かいます。その後、夜明け前の人々が目覚める時間前にすべての修理や交換作業を終わらせてしまいます。それによって、システム上のエラーを極力無くすことが出来ます。
そして朝になり、ハデス様が起床してから朝食を取られた後に結果報告を書類にして提出します。
ハデス様は、報告を口頭ではなされるよりも書類として目を通される方が楽なお方ですから、それまでにその日にあったことをタイプライターで報告書にまとめておきます。そうすれば、報告漏れなどを事前に防ぎつつ、自分でもあったことを整理できるという訳です。
そうして、ハデス様とのやり取りの後で私も就寝につきます。
この場合、肉体的な疲れというよりもMPの回復がメインとなります。
通常のワイトの場合、召喚すれば消耗することのない個体として活動することが出来ますが、私の場合、複数のワイトキングやエリートワイトなどの報告を同時に受けますので物凄く精神的に消耗します。
そのため、消耗した精神を癒やすための就寝を取ります。
本来、ワイトというのは召喚主にとっては使い捨ての道具でしかないのですが、ハデス様はそんな私達を労るかのように休養を取ってくださるのです。
私はそのことに凄い感服をしたため、どこにでもついていきますよ~、ハデス様