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ダンジョンは安全地帯じゃないんだけど・・・?

週2回ではなく週3回に挑戦します

これで生活面で支障をきたしたら週2回に戻しますのでご容赦下さい

第4話 安全地帯を求めて


「では、ゴーム将軍とその副官達は敵の攻撃と思われる魔法で殺された、と?」

「その通りでございます、陛下」

 フィレンツェ王国の王都にある集会場では、ロンメル国王と内政や軍事などを司っている大臣達が集まって帰還した騎士団の報告を受けていた。

 その報告によると、弓矢では届かない距離から目にも見えない速さで魔法を撃ち込まれたため、ゴーム将軍を始めとする騎兵部隊のトップが即死。結果、騎兵部隊の部隊長である彼が報告することになった。

「その魔法はパン、パン、と音を立てると同時に、対象になった人物の眉間に穴を開ける魔法のようです」

 それを聞いた一同にはざわめきが起きた。

 銃というのは鉛玉を火薬の爆発力によって撃ち出す道具なのだが、そんなことを知らない彼らにとっては魔法の類である、という考えの方がしっくりくる。

 そしてそれは、対象になった人間を確実に殺せる魔法として認識され、只のダンジョンから恐怖のダンジョンに認識が変わろうとした時、国王が発言した。

「それで、その魔法を封じ込めることができない限りは攻撃は厳禁だということだな?」

「は、ははっ!」

 事実、撃たれた場所からそれほど遠くない場所に魔力を帯びた鉛玉が転がっており、それも先程の報告とともに国王に見せていた。

「それでは以降、あのダンジョンには攻撃を仕掛けずに撹乱させることとす」

 本来ならば、各大臣には言いたいことがたくさんあったが国王の判断を覆すにはそれ相応の根拠が必要になるため、この場では言えなかった。そのため、渋々ではあるがこの場はお開きとなった。

 冷たいかもしれないが、ゴーム将軍とその副官達は大臣の間では厄介者とされていた。何故なら、ゴーム将軍はいわゆる脳筋という部類に入る。猪突猛進で果敢に敵陣に突っ込んでいくがそのくせ、手柄を独り占めするような奴なので大臣の間だけではなく、騎士団の間でも煙たがれていたのである。


 そのため、死んで清々したとの声が多く上げられていた。


 ともあれ、これでフィレンツェ王国からはそう簡単に攻撃を受けることはなくなったが、それは他の勢力からの攻撃を受けることになったのだ。


~~~~~~


 ダンジョンコア・フロア ゲストルーム


「つまり、人間との共存のために奔走していたがその人間に裏切られて故郷を捨てることになったと?」

「ええ、そうよ」

 供物として捧げられた少女2人は、実はドラゴンであり、その名をア・ズライグ・ゴッホとグイベルと名乗った。彼女達はイギリスの伝説に出てくる赤い竜と白い竜で、一時は軍旗にも乗せるほどの有名だった。

 だが、この世界ではそんな伝説などお構いなしに、彼女達が暮らしていた地域の人間達は2つに分かれて争いが続いていた。そんな中、彼女達はその間で交渉を続けていたが次第に人間達は彼女達を邪魔だと思い始めたそうだ。

 理由は単純で、土地を巡る争いで自分たちの家族やら一族やらを養うために行動しているのにそれを邪魔する少女達、と言った価値観だった、と後から聞いたらしい。

 理由はともあれ、この地域はは緯度が低いのか温暖な気候のため、食料の生産には苦労しないが緯度が高い北の大地では、農作物を中心とした生産には向かない地域が多い。その理由は、年の平均気温が低いからだ。

 気温が低いと小麦などの食料は生産しにくく、出来るとするなら果物が中心になるだろう。そのため、不足しがちな食料を補うためにどうしても広大な土地が必要になる。結果、他の民族と遭遇した場合はその所有権を巡って争いに発展する、というテンプレに陥ってしまう。

 その結果、彼女達は人間達に裏切られ、襲われて命からがら逃げてきたという所だ。

「でもわからねぇな」

「なにが?」

「どうしてあの司祭風の青年が冥皇竜がこんな所にいるのがわかったのか、だ」

 一神教の教団だったら、その神様以外の神を邪神だったり魔王呼ばわりして人々に喧伝するだろうしな。余程の事がない限り、ドラゴンを崇拝することは無いだろうに。

「それについては簡単よ」

「何?」

「彼らにタレコミをしたからよ」

「タレコミ・・・だと・・・?どういうことだ?」

 話を聞くと彼らは、一神教の内部で蔓延っている不正の数々を知ったために愛想を尽かしたり、絶望して嫌気が差していたそうだ。そんな彼らに集まりに彼女達が参加して、このダンジョンにドラゴンがいる。このドラゴンを冥皇竜といい、冥界の皇竜だ、と言ったらしい。

 なんでわかったかと言うと、ドラゴンの気配がこのダンジョンからしたそうだ。そのため、気配を辿ってここに来てみると、その気配が冥皇竜であり、このダンジョンの中心にいることまで把握したそうだ。

 結果、彼らを先導し、ここまで来たとのことだ。

「ここに来た理由はわかった。だが、かなり分の悪い掛けだったな。あのまま、刺されていたらどうする気だったんだ?」

「その時はその時よ。回復してまた逃亡の日々だわ」

「・・・」

 俺との受け答えをしていた赤毛のズライグは、平然と言いのけた。もう1人のグイグルも特に目立った反応は見せずに、俺のことを見ていた。人助けをしようとして祭り上げた人間達に刃を向けられたことに絶望して、感覚が麻痺しているのかもしれない。

 だがそんなことより、これからどうするか、だ。

 サバドをしていた連中には、俺が彼女達を食べたことになっているし、そう簡単には外に出すことはできない。それに彼女達はかなりの実力だ、ステータス画面で確認すると、HPやMPなどの数値がどれも10万越えとかなり高い。

 その上、スキルの方も豊富で属性魔法耐性や物理耐性などの耐性スキルは勿論、通常スキルも色々とある。俺にはなかった聖属性の魔法が使えるのも強みだ。今度、ダンジョンコアに聖属性の魔力を注いでもらうのもよしだな。召喚できる魔物のバリュエーションが増える。

 色々と考えているが、この少女達を利用するからにはこちらも色々と条件を提示しないと妙に落ち着かない。どういう性分かもしれないが、ここはギブアンドテイクの考えで行くか。

「もし、君らが良かったらの話だが、このダンジョンに住んでみるか?」

「・・・え?」

 突然の俺の発言にズライグは、呆けた声を出した。

 どうやら、どうせ、追い出されるんだろうな、とか思っていたんだろうな。だが、俺はそこまで鬼畜にはなれない。俺たちに敵対するんだったら話は別だがドラゴンが2体、安住の地を求めてくるんだったらそれを余裕で受け入れられるほどの土地は余っているんだ。

 なんせ、中心から60キロ圏内はダンジョンを除いて俺達以外は暮らしていないんだからな。

 そう考えていると、

「どうして?」

「ん?」

「どうして、そんな簡単に安住の地を与えようとするの?私たちはあなた達を利用するかもしれないのよ?それなのに貴方は私達の話を疑いもせずに、なんで受け入れてくれるの?」

 そういう事か。なら答えは決まっている。

「君らの目が悲しみに包まれているかだ」

「え?」

「君らは多くの努力をした結果、多くの悲しみに包まれて生きていた。その悲しみに涙が枯れても生きていたんだろう?よく頑張ったな」

 俺がそう言うと、ズライグは多少の驚きとともに目に涙を溜めて泣き出した。そんな彼女につられて、グイグルもまた泣き始めた。ずっと感情を抑えていた何かが外れたのだろう。声を抑えつつも、その目からは涙が止まらない。

 そんな彼女から、

「ありがとう、ございます」

 その言葉を聞いた俺は、頷いて静かに部屋を出た。


「あれでよかったんですか?」

「あれ以上の事は俺にはできんよ」

「確かに、ぶっきらぼうで臆病なマスターにとってはあれが一番いい行為でしょう」

「・・・つくづく思うのは、パイモンが物凄い毒舌なんだが?」

「いつものことです、お気遣いなく~」

「気遣うつもりはないんだがなぁ」

 パイモンのツッコミに俺が困ったように頭をかくと、バエル達から笑い声が漏れる。全く、こういった気の抜ける会話ができるのもこいつらのおかげだな。1人でやってもつまらないからな。

 そんな事より、俺を神だかなんだかで讃えようとする教団ができたことに思考を巡らせていくのだった。


 翌朝


「あの、昨日はお世話になりました」

「はいよ」

 俺達は朝食を食べた後、執務室にいる時にズライグとグイグルがノックをしたので入らせた。

 すると、ズライグは昨日の話にお礼を言いに来たのだと言う。

「さて。一応、確認するが暫く、君達はこのダンジョンに住むつもりでいいんだよね?」

「はい。ダメでしょうか?」

「いいや、そんなことはねぇよ。好きなだけ居てくれ」

 俺が即答すると、二人はホッと一安心した様子だ。だが、話はこれだけじゃないんだ。

「ただ、君達が住むとなるとそれぞれの役目を持たなきゃいけない」

「役目、ですか?」

 俺がそう言うと、2人は疑問を表情に浮かべた。

「君らも知っての通り、このダンジョンは直径100キロの内側に複数のダンジョンが連なっている巨大な複合ダンジョンだ。ここまではいいね?」

 俺が聞くと、2人は頷いた。

「そのダンジョンにはそれぞれ1人ずつ、ダンジョンリーダーがいてその上に俺がいる。ここにいる5人も、そのダンジョンリーダーとして独自のダンジョンを築いている。そのため、多種多様なモンスターと出会える冒険者にとっても、商売をする者にとっても楽しいダンジョン経営をしているつもりだ」

 そう、現在のこのダンジョンは11個のダンジョンがあり、中心に3つ、1つ目と2つ目の壁の間に4つ、2つ目と3つ目の壁の間に4つのダンジョンがある。

 その内、外側の8つのダンジョンにはそれぞれ王の爵位を持つ彼女達がリーダーとして、様々なダンジョンに変化させている。ここにいる5人の内、バエル以外の4人がそれぞれを担っていて、残りの外側の4つは他の4人に任せているのだった。

 そして中心の3つのダンジョンで、地上のダンジョンを任せているのはデュラハンロードのセルティ、地下1階層から60階層までをバエルに任せ、その下にある61階層から120階層までを俺の担当にしている。

 理由は以前にも言ったかもしれないが、そうしないとソロモン72柱の間で争いが起きるため、それを防ぐ意味合いでそういう風にした。それで今の所、うまくやれているので暫くは変更はないだろう。変更するなら配置換えをするぐらいなものだ。

「ここにいる俺達は形はどうであれ、ダンジョンで働いているので君達だけが働かずにタダ飯食らいにさせるつもりはない。わかるね?」

「・・・はい」

 俺がそう言うと、2人は落ち着きを失くしていく。当然だ。みんな、ダラダラとやっているように見えてちゃんと自分の仕事をしていたのだから。

「とは言え、すぐにダンジョンを作って欲しい、なんて言うつもりはない。そこで暫くは、ワイトキングの下でダンジョンの城下町を見て回って、ここがどういう所なのかを知ってほしい」

「と言うと?」

「単純に言うと、直せる所があったらどんどん発言してほしい。そういう事ですよね?マスター」

「あぁ」

 ズライグが質問すると、パイモンがわかりやすく説明してくれた。

「魔神である私達ならともかく、マスターは一歩も外に出た事がありません。ですので外部の人の意見、というのはとても貴重です。お願いできますか~?」

 パイモンは、俺の言いたいことをわかりやすく言ってくれる。そこにシビれる、憧れるぅ!・・・じゃなかった。ありがとう、パイモン。

「それなら任せて!私達の専門分野だもんね、グイグル!」

「はい、おまかせください」

 ズライグが言うと、グイグルが喋った。

「おぉ、グイグルが喋った・・・」

「初めて喋りましたね~」

「か、かわいいじゃない・・・」

「喋ってくれてありがたいのぅ」

「可愛い娘ができたみたいです」

 人見知りな性格なのか、みんなが感嘆を上げると照れたように顔が赤くなった。やっぱり、子供は可愛くないとダメなものなんだねぇ。


 その後、ズライグとグイグルはワイトキングの下でダンジョンの周りにできた町を幻視の術を使って変装して視察。より円滑に町を動かすように、いろんな指示をしてきてくれた。

 そのため、町の環境は改善されてより一層、ダンジョンに冒険者たちが入るようになったのであった。


~~~~~~


 それから1ヶ月。ダンジョンとして軌道に乗っている俺達の所に話をしたい、という一団が現れた。

「本当に行くのですか?」

「ご指名は俺だ。俺が行かないと話が進まない」

 サガンが心配してくれているが、相手は頑として動こうとしないので仕方がない。それに今は、バエル達はそれぞれの商談を結ぶために動けない。そのため、俺が自ら行くしかないのだ。

「一応、護衛のために伯爵クラスのやつを二人、連れて行く。何かあったら、サガンが取り合ってくれ」

「・・・わかりました。行ってらっしゃいませ」

 いろいろと言いたげではあったが、護衛を連れて行くということで引いてくれた。全く、どういう内容なのか、さっぱりわからんな。


 ダンジョン・外側、東地区 ウィネが管理するダンジョン近くの事務所


 この事務所はダンジョンに関しての情報をまとめてある場所で、冒険者ギルドや商業ギルドの役員がここに来て情報や意見交換などを行うことを目的とした場所でもある。

 その一室で、その一団のリーダと思われる人物と俺は向き合って座っていた。

「まぁ、話したいことは山ほどあるんでしょうが、まずはそのフードを外してもらいましょうか」

 そう。その人物が被っているフードが大きすぎて顔の全体像が見えない。これでは話しづらくて仕方がない。

「ここで見たことを誰にも喋らないでくださるなら、フードを外します」

 声の感じからして多分、女性だ。それもかなり地位の高い貴族か何かの女性だろう。

「ええ、ここに来たお客様の情報は一切、漏らしません。ここで聞いた情報も、その分のお金を支払えば黙っているつもりです」

 俺がそう言うと、その人はフードを外した。

 すると、その人の顔には角が2つ、おでこから生えていた。

「オーガ。いや、鬼ですかね?」

「はい。東方の地から遠路はるばる、このダンジョンに一族を連れてまいりました」

 あぁ、そういう事か。そりゃあ、俺じゃないといけねぇわな。

「グラシア、ビフロンス。すまんが席を外してくれ」

「え?でも・・・」

「頼む、こいつは少しばかり、重たい話だ」

 俺が声のトーンを落とし、後ろに控えている2人に頼んだ。一族郎党が、遠くから故郷を捨ててここに来た理由なんざ、1つしかない。

 それは、安全な土地を探して命がけの流浪の旅だ。

 一度のミスで、全滅することだってあり得る危険すぎる賭けだ。寧ろ、失敗する可能性の方が圧倒的に多い旅である。

「・・・わかりました」

「何かあったら、呼んでくれ」

「はいよ」

 そんな俺の暗い気配を悟ってか、2人は出ていった。

 出ていったことを確認した俺は、単刀直入に聞くことにした。

「あなた方が探しているのは、安全な土地、ですよね?」

「はい、そうです」

 どうやら、のんびりしたいがために作ったこのダンジョンは、いろんなことを運んでくる刺激的なダンジョンになってしまったようだ。

 面白いといえば面白いが、のんびり出来るのはもう少し先のようだ。


 俺はそう思いつつも、その女性と話を進めていった。

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