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覚悟

本戦なのにバトルシーンを入れられなかったよ、バーニィ・・・


と言うことで始めますよ~

第9話 魔王軍戦本戦①


『分散した敵部隊の約半数を撃破!残りの半数の内、その半数に攻撃を仕掛けています!』

『こちら本部、了解した。デルタ1、デルタ3がピンチだから救援に向かって』

『デルタ3、了解』

 ダンジョン本部で聞いているのは、作戦行動を開始したゴーレム部隊とその本部との通信内容だった。

 その内容とリアルタイムで映し出されるデジタルマップの情報を統合すると、200の部隊に分かれた魔王軍は100の部隊が瞬く間に撃破されて残り5万の兵力にまで減少した。

 普通だったら自分の国に撤退するか、他の城に行ってそこを攻めるかの二択なんだろうが今の所、そういった動きの兆しは見られない。

 まるで、帰り道のない遠足にでも見ているかのようだ。

 それとも、俺達の意識をそっちに向けて他の作戦が遂行させたいのだろうか。

 それだったらこの作戦は余りにも愚策中の愚策であり、撤退の合図でも出せば良いのにと思ってしまう。

(このまま、何も起こらなければ良いがそう簡単に行かないよね~)

 俺がそう思っていると、新たな報告が上がった。

『南西部の纏まった部隊が西の門へ向かって侵攻を開始しました!注意してください!』

『南西部の砲兵隊は砲撃を開始します!それと同時に近接航空支援を!』

『ラジャー、A-10航空隊爆撃を開始する!GO!GO!』

 そんな報告を聞きながら、アスモダイは俺にこう言った。

「これならすぐに終わりそうだね」

「アスモダイにはそう見えるんですか~?」

「そうじゃないの?」

 それを聞いたパイモンに質問されたため、首をかしげながら聞き返した。

 そのため、俺は戦闘がこのまま終了しない理由を説明した。

「今回の戦闘で、出撃させているであろう魔王やその配下である七大悪魔達や上級魔族の死亡を確認できていない以上、現時点での判断はまずい。だから偵察機や観測機を飛ばしまくって発見を急いでいる」

「理屈はわかったけど、本当に来ているのかしら?実は魔族領に・・・」


 ヴィーッ!ヴィーッ!


 その時、アスモダイが言い切る前にサイレンが鳴った。

 それを確認した俺は、慌てずにヴィクターに状況説明をさせた。

「状況は?」

『魔族が第3の壁西門付近に突如として現れました!現在、ゴーレム部隊に攻撃をさせていますが効果は薄いようです!』

「わかった、1秒でも長く足止めしろ。すぐに対処する」

『了解!』

 ヴィクターとの通信を切ると、俺は合同作戦本部にいた全員に指示を出す。

「クロムは引き続き、ここで作戦の指示を出せ」

「わかりました」

「カレンはすぐに味方部隊の元に行って侵入してきた魔族の対処を頼む」

「あぁ、わかった」

「サトル達は装備を整えてすぐに向かってくれ。七大悪魔と戦うかもしれん」

「わかった、すぐに準備する」

「バエル達は魔王とはぐれた七大悪魔共を頼む。すぐに戦う羽目になるから万全の準備を整えてくれ」

「わかったわ」

「わかりました~」

「じゃあ、準備してくるかのぅ」

「久しぶりの実戦ですわ」

 指示を受けた皆はすぐさま、それぞれの準備場所に向かって動き出した。

 合同会議に参加していたメンバーは全員、俺とのやりとりやこれまでに上がってきた情報からこうなることをある程度、予想していたのだろう。すぐに行ってしまった。

「待ってハデス」

「なんだい、アスモダイ。腹痛でも引き起こしたか?」

「ううん、そうじゃないの。ちょっと気になることがあって・・・」

 そんな中、俺も魔族が現れた現場に行くために廊下を歩いていると、アスモダイに呼び止められて核心的なことを質問された。

「あのさ、あなたにとっての魔王って何なの?」

「それは・・・」

 アスモダイから発せられた質問に、俺は軽く驚きながら声を詰まらせる。

 正直な話、魔族領に潜入したゴーレムからの情報を見た時、どうしてこうも不幸が連続するのかと恨みたくなる内容のことが書かれていたからだ。

 その内容とは魔王に関する情報と写真が入っており、その情報と写真から推測できるのは俺の姉とよく似た人物が魔王となって行動しているということだった。

 日本で生きていた時の俺の家族構成は両親と姉で、事故に遭って転生する時はまだ普通に生きていたはずだ。だから、そこから考えられる仮説は2つ。

 仮説①は3つ年が離れているとはいえ、俺が事故死する日の朝にも姉とは顔を合わせているから俺が死んだ後に来たのか?とも疑ったが、その可能性はほぼゼロに近いだろう。

 理由としては、魔族の実力というものはかなり高いのと実力主義を重んじているため、たった数年で魔王にまで這い上がったという情報は俺達には上がってきていない。

 あるとするならば、数十年前に先代の魔王が今の魔王に打ち倒されたという情報がある限りで、それ以降に魔王が入れ替わったという話はないという。

 ならば仮説②というのは、別世界の俺の姉が何らかの理由や方法でこの世界に来たというものだ。

 これは平行世界(パラレルワールド)という概念から考えつくことで、実際に俺も知識として知っているだけで見たことがないため、確実性に欠けるが信憑性がある話だ。

 たが俺は異世界転生しているし、サトル達も召喚術で転移してきているため、可能性としては十分にあり得る話だ。

 その理由が大きいのか、または意外な出来事に慣れたのかはわからないが、サトル達との戦闘前程の動揺もないことからかなり落ち着いている。

「それでも、魔王である彼女は俺と同等かそれ以上の力を持っているかもしれないからあまり気乗りしないのは確かだけどね~」

「・・・」

 だから今回ばかりは死ぬかもしれない、と付け加えるとアスモダイは、

「そ、そんなこと・・・言わないでください!」

「!?」

 と急に叫んだため、俺はびっくりしてしまった。

 それまで俺の話を聞いてうつむいていたアスモダイは、長い赤髪に隠れていた顔を上げると目には涙が溜まり、今にも泣き出しそうな表情で俺を見ていた。

「ハデス様、我々異形の者達を心から愛してくれた(いと)しきマイマスター」

 普段の彼女とは思えない程、今にも押しつぶされそうな顔とか細い声で懇願するかのように言葉を紡ぐ。

「いつものように余裕の表情を浮かべながらも慢心しない声で敵を踏みつぶし、薙ぎ払えと指示をくださったあなた様だからこそ、(たみ)も信徒も我々もついて来れたのです。ですから・・・どうか!・・・どうか!」

 彼女はこれ以上の言葉を言わせるな、と言わなくても伝わるだろう、という強い想いを伝えるかのように俺の胸元に手を置いた。

「どうか、我々を残してこの地を去らないでください!」

 それを言い切る前に、(せき)を切ったように大粒の涙が彼女の顔を濡らす。

(やれやれ、女性を泣かせるのは嫌いなんだが、な)

 鳴かせる方は好きなんだがな、と脳内でぼやつきつつ、俺のポケットからハンカチを取り出して彼女の涙を拭き取る。

「許せ、アスモダイ」

「ハデス様ぁ!」

 だが、彼女は拭き取る以上の涙を出していて効果が薄いので俺はこう言った。

「魔王は強い。俺と同等の力を持っている上に相当の経験値まで蓄積されているため、単純な力比べとなると俺の方が圧倒的に不利だ。だが、俺達には絆というものがある」

「き、ずな、ですか?」

 普段の俺なら絶対に口にしないだろうという言葉に、泣いていたアスモダイはきょとんとした表情になってしまった。

 それも当然で、普通から使っているとそれが当たり前になってしまうからなるべく使わないようにしていたのだ。

 だから俺は、こうも続けた。

「恐らく、彼女は今の地位を得るためにそれ相応の代償を払わずにはいられなかっただろう。それが家族であれ、友人であれ、多くのものを犠牲にしてそれを積み上げて来たのだろう。

 その反面、俺達はこの4年間で多くはないがそれなりの戦闘をくぐり抜けつつも、誰一人として犠牲者を出さずに絆を深めながらやってきた。その差は絶大ではないものの、魔王軍との一定の差はあるはずだ」

「つ、つまり・・・どんな状況でも仲間達と協力すれば敵を倒せると?」

「あぁ、そうだ」

「どんなに強大な力を持つ相手でも一矢報いることが出来ると?」

「あぁ、そうだ」

「あの魔王ですら戦えると?」

「そして俺は彼女との一騎打ちを望んでいる」

「・・・っ!」

 俺がそう言うと、アスモダイの縋るような表情は怒るような表情に大きく変わる。

「それは余りにも矛盾過ぎます!いくらハデス様であろうとも魔王との一騎打ちは無謀すぎます!どうか、我々の戦いが終わるまで待ていてくださ「感じるのだよ」・・・え?」

 俺はアスモダイの言葉を遮ってそう言った。

「感じるのだ。壁にひびが入る音を、限界を超える力を、諦めて久しい進化の時を。だからこそ、俺は一騎打ちをしないといけないのだ。これを見逃せばいつ来るかわからないから・・・」

 俺は真剣な表情で、静かにこう続けた。

 すると、俺を引き留めようとしていたアスモダイもその言葉を聞いて覚悟を決めた表情で言った。

「ではハデス様、私と約束してください。必ず、ダンジョン本部に戻ってきてあなたの席に座ってくださると」

「あぁ、約束しよう。俺は魔王を倒して必ずこのダンジョンに戻ってくると」


~~~~~~


「ずいぶんと遅かったけど、何があったの?」

 先に行っていたバエル達とは、戦場になると予想される場所で会った。

「特に何もないわ」

「・・・そう、ならいいけど」

 私の表情を見たバエルは、それ以上のことを聞かずにパイモンに説明を促した。

「パイモン、ここにいるメンバーに状況の説明をお願い」

「はい~、お任せくださ~い」

 パイモンは相変わらず、気の抜ける口調ではあるが今はその口調は真剣さを帯びている。それだけ、彼女も本気になっているのであろう。

「現段階で魔王本人と七大悪魔は別行動を取っているため、私達は七大悪魔を全滅させることのみに集中します。これはハデスさんに許可を取ってゴーレム達に状況を整えてもらったため、すぐにでも戦うことが出来ます」

(さすがはこのダンジョンの知恵袋なだけはあるわ。そんなことをしていたなんて)

 私が感心している間に、パイモンは話を続ける。

「私達が七大悪魔と戦っている間に、魔王はハデスさんとの直接対決を行ってもらいます」

「なっ!?ちょっと待て!と言うことはテツ一人で魔王と戦うのか!?」

 その説明を聞いた勇者達の内、槍の勇者が声を上げる。

「そうですが~?何か意見でも?」

「魔王って奴は相当強いんだろ!?テツだけで大丈夫なのかよ!?」

 それを聞いたパイモンは、自信ありげに私に聞いてきた。

「大丈夫ですよね~?アスモダイちゃん~?」

「勿論、私が保証するわ」

 聞かれた私もすかさず、自信ありげな返事を返した。それだけ、彼の決意をこの身で感じてきたからね。彼がそう簡単に負けるものですか。

「お前、本当にそれでいいのかよ!?俺達は二度とテツを失いたくないんだぞ!?」

「落ち着け、異世界の勇者よ」

 しかし、納得できない表情で槍の勇者が私達に大きな声でたたみ掛けるとカレンが止めに入った。

「君達は彼の何を見てきたのだ?彼は、かつての君達が知るような彼ではないと言うことをよく知っているのではないのか?」

「しかし・・・!」

「カレンちゃんの言うとおりです~」

 槍の勇者が、カレンに反論しようとするのをパイモンが止めた。

「ハデスさんはこの国がダンジョンとして開業した当時よりも精神的に大幅に強くなっています~。国の頭首として、人間界で誰よりも強いと思いますよ~?」

「・・・わ~ったよ!話を続けてくれ!」

 槍の勇者が乱暴にそう言うと、パイモンは話を続ける。

「では、七大悪魔の担当を決めてもらいます~」

「担当、と言うと基本的には1対1のタイマンを張るということかのぅ?」

「そうです、ウィネさん。現状ではこれがベストだと思っているので」

「じゃが、ここにいるメンバーは相手方よりも多いように見えるのぉ・・・」

「それについては対応済みです~」

 パイモンの説明に疑問を持ったウィネが質問をすると、パイモンは待っていましたと言わんばかりに紙を広げる。

 その紙には、こう書いてあった。


『七大悪魔との対戦相手


 ルシファー   VS バエル

 リヴァイアサン VS ウィネ

 サタン     VS パイモン

 ベルフェゴール VS 勇者一行

 マモン     VS ズライグ、グイペル

 ベルゼブブ   VS サガン

 アスモデウス  VS アスモダイ』


「パイモンさんも戦いに出るんですか?」

「はい~、魔道士としての知識と才能には恵まれていましたからね~」

「は、初めて知った・・・」

 ズライグとグイペルが驚いているように、パイモンはこのダンジョンでは作戦を考えることがメインだったから直接的に戦うのは珍しい方だ。

 勇者達との戦いでも、前線には出ずに魔法を使って援護をしていたから魔法はある程度、使える魔神程度だと思われていた。

 そんなことがありつつも、私達はそれぞれの担当である悪魔の情報や性格、どの程度強いのかといった情報をパイモンから簡単に聞いて現場に向かった。


~~~~~~


(俺も馬鹿な戦法をとったものだ)

 俺は独りでにぼやつきながら、魔王との会合点に向かって足を運んでいた。

 今回の魔王軍の領内侵入に対して、ソロモン72柱全員で七大悪魔にたたみ掛ければ確実に仕留められる上、魔王との戦いでも圧倒的に有利だから。

(だが、仮にそうなったとしたら確実に誰かが死ぬ)

 まがいなりにも俺がダンマスであり、彼女達はその配下である。彼女達の中で誰かが死ねばダンジョンを再編しないといけなくなるし、その中にバエルやアスモダイなどの王の階級を持つ魔神がいれば間違いなく規模を縮小しないといけない。

 そうなれば国として混乱が起きるし、それに乗じて敵対組織が攻撃や色んなことをしてくるだろう。

 言わば、俺自身を危険に晒して進化するのと彼女達を失うことを天秤に掛けて、どちらの方が被害が大きくならないかというのを計った。

(だから俺は一騎打ちという戦法に出た)

 そう覚悟を決めたが、魔王である彼女に近づくにつれて逃げ出したい衝動も徐々に大きくなっていった。

 これは強い相手と対峙するのと同時に、別の世界とは言うものの今までなんの関わり合いもなかった姉と殺し合うことになるのだから。


『ハデス様、そろそろ会合点に到達します』

 俺は自分の思いに浸りながら、会合点に向けて歩みを進めているとヴィクターからの通信が入った。

「わかった。案内ご苦労だった、ヴィクター」

『いえいえ、お気遣いなく』

 俺がそう言った後も、彼女は不安を感じて名残惜しそうに通信を切らずにいた。

 そのため、俺はそんな彼女を安心させるためにこう言った。

「大丈夫だ、ヴィクター。俺は、俺達はそう簡単に倒れないだろう?」

『し、しかし・・・!』

「ハデス、アウト」

 それでも、ヴィクターは何かを言おうとしていたがそれを聞くこともなく、俺は通信を切った。

「手札の全ては鬼札(ジョーカー)だ。魔王、お前との戦いもこれで全てを終わらせよう」

 俺はそう言って、林を抜けた先にある草原にいる魔王に向かって歩いていった。

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