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守るための選択

―とあるアプリで書かれていたのですが淫夢厨じゃないんです。信じてください!何でもしますから!

パイモン「ん?なんでもって言いましたよね~」

―いや、冗談で・・・

バエル「お前とりあえず、犬の真似しろよ」

―だから違うんで・・・

アスモダイ「犬だよ ヨツンヴァインになるんだよこの野郎」

―ワンワン(迫真)ワン(迫真)


というネタを思いついたが没ネタにしたのは内緒だ。

第7話 魔王軍戦序盤①


 風来の里 広場


「おや?珍しく領内見回りかい?」

「そうだが・・・特に変わりは無いか?」

「生産業の方が忙しいってさ」

「鬼人族では絹物(きぬもの)と薬草、それに刀剣(とうけん)だっけか?」

「あぁ、そうさ」

 ラミアの洞窟から出てきた俺はその足で、鬼人族の集落に来ていた。

 鬼人族は元々、鬼族であったが族長であるリクトに皇龍の加護を与えたら昇格して鬼人族になった訳だ。

 それによって、大柄だった鬼族は普通の人間族並みの身長になり、角が伸びた代わりに強力な力と今まで以上の知識を身につけた種族になった。

 その結果、絹物や薬草は一般的に流通しているものでかなり上質なものが市場に流れているし、彼らが作る刀剣も冒険者からは人気だ。

「だが、今まで敵だった相手に自分達の作ったものを売るのはけしからん、という奴らが現れて困っているんだ」

「やっぱりかー、難しいよねー」

 絹物や薬草は知識があれば容易に作れるが刀剣に至っては、ドワーフと同等の力を持つ鍛冶職人が少ないことも相まって刀剣一本でかなりの値がつく。

 理由は、人間の迫害を受けて数が減ってしまったことが大きい。

 この地を安住の地として住み始めてから4年、人口は他の種族と同様に増えつつはあるが一度、減ってしまったものはなかなか増えない。

 しかも、減らされた理由が人間の手によってだから人間への不信感と怒りは未だに消えていないし、これから減ることはあっても消えることはないだろう。


 それはともかく。


 彼ら、鬼人族が作る生産品は国として重要な収入源の一つであり、その売り上げが好調ともなればしばらくは安泰だろう。

「まぁ、それは仕方ないよ。俺だって身内であるバエル達が傷ついたらぶち切れるから、地道にやっていくしかないよ」

「そう言ってくれると助かる」

 俺とリクトが話し合っていると、

「あー、こうりゅうさまだー」

「皇龍さまー皇龍さまー」

「皇龍様、なでてなでて~」

「はいはい」

 鬼人の子供達が俺に存在に気が付いて近寄ってきたため、俺は順番に子供達の頭をなでていった。

「皇龍様はあまり時間が無いからな、加減しろよ~」

「「「はーい!」」」

 リクトの掛け声に、子供達は元気よく返事をした。


~~~~~~


「雪だるま式に集まってきて大変だった・・・」

 初めは数人程度だったが、撫でられた子供達がはしゃぐもんだから、その騒ぎを聞きつけた大人達も集まってきて1時間以上も立ち話をしてしまった。

「それは大変じゃったのぅ」

「それだけやってきた結果を実感できた瞬間でしたからね~」

「そう言ってくれると助かるぜ」

 俺達がいるのは、風来の里にあるリクトや彼の妻であるミスミが住んでいる屋敷の応接間だ。

 屋敷と言っても、日本の城のような外見をした5階建ての建物になっているため、応接間でもかなりの広さがある。

 俺が何でこんな所に招かれたかというと、ミスミが日頃にお礼を言いたかったとのことらしい。

「それにしても相変わらず、嫁達に敷かれている毎日なのか?」

「そうですねー、たま喧嘩なんかもしますけど基本的にこっちが負けますねー」

「ハデスの所は74人も嫁さんがいるからな、負けて当然か」

 お礼ついでに、家庭についての相談も受け付けてくれる。

 バエル達ほどではないがリクト達も初期の頃からいてくれるし、先日の魔王戦でも接近戦で彼らの一族は大活躍した。

 その上、長年連れ添った夫婦と言うことで家庭に関しての相談を、聞いてアドバイスをくれるからその方面では頭の上がらない存在だ。

 そのため、かなり話し込んで叱られたり、突っ込まれたりしながらも比較的楽しい時間が過ぎていった。


「じゃあ、また来るよ」

「おー、長居させて済まねーな」

「お気遣いなくー」

「せいぜい、裏切れないようにの。女は一度、何かを嫌いになると二度とそれには振り向かんからの」

「耳が痛い助言ですー」

 俺が帰る際に、ミスミからの手痛い助言があったものの、互いに笑いながら俺はその場を後にした。


~~~~~~


「よぉ、テツ」

「ん?」

 バエル達からの急な呼び出しで、ダンジョン本部に戻る途中で勇者であるサトルと遭遇した。

「珍しいな、テツが見回りをするなんて」

「あぁ、いつ状況が変化するからわからんからな。今のうちに市井(しせい)を見て状況を判断しようと思ってな」

「それにしては大きな騒ぎになっていない様だが?」

 仮にも神様である俺が市井に突然、現れても歓声が上がる訳でもなく、黄色い声も上がることもない。

「そりゃ、皆が気を遣ってくれているんだ。公的な現れでもないしな」

「そういうものか」

「そういうものです」

 そんな感じで会話をしていると、

「サトル様~、どこですか~」

「で、出てきてくださ~い」

 と、サトルと共にこの国に住んでいる勇者の仲間達の声が聞こえてきた。

「デートの途中だったんじゃないか?行ってやれよ」

「デートってお前・・・」

「あ、サトル様を見つけました~!」

「いきなり消えないでくださ~い!」

 俺がそんなことを言うと、サトルは盛大に吹き出したので彼の仲間達がそれに気が付いて、こっちに駆け寄ってきた。

「あらあら~」

「ひっ・・・!」

 その仲間達が俺の存在に気が付くと、1人は驚きながらも笑顔を向けてきて、もう1人は怯えて笑顔を向けてきた女性の背中に隠れてしまった。

「ははっ、嫌われているな」

「はい~、魔神達と戦ったことが未だにトラウマになっているそうです~」

 3年ぐらい前にサトル達が聖光教団の一員としてこの国に攻め込んだ時、勇者達と俺が戦ったがそれ以外のメンバーと戦ったのがバエル達だった。

 魔神1人に対して、数人ががりで戦ったのだが圧倒的なステータスの差で負けたらしい。

 その時、手酷くやられたためにトラウマになって終わった後はかなり苦しんだとのことだった。

「そいつはひどいことをした、すまねぇ」

「いいえ~、お構いなく~」

「・・・(コクコク」

 笑顔を向けてきた女性は本気でそう思っているらしく、背中に隠れた少女も怯えながらも頷いていた。

「あー、話は変わるんだが・・・」

「何ですか~?」

「この国の住み心地はどうだい?一応、市民に受け入れられるような町づくりを目指しているんだが」

 一通りの事業が終了して、情報の収集とシステムのバグの修正をしているが客観的な視点として目安箱を町の各地に設置、要望などがあれば可能な限り国としてやっていくことを目標としている。

 とは言え、要望が多いのはこの国に避難してきた亜人達からで、普通の人間達からの要望等はとても少ない。そのため、この機会に少しでも意見として聞いておきたい。

 すると、

「基本的には大丈夫なんですが、亜人ちゃん達とすれ違うとたまに冷たい目で見られるんですよ~」

「あー、それはなぁ」

 リクト達との話でも上がっていたが、亜人達の怒りの矛先は時には勇者達にも向けられる。

 勇者というのは一見、聞こえが良いが別の見方をすれば大量殺戮を行う奴になるため、俺個人としてはあまり好きではない。

 サトル達と話す時は勇者としてではなく、昔の友人やその仲間達として話しているため、怒りを持つ亜人達の気持ちがある程度わかってしまう。

「すまん、彼らに悪気はないんだが過去のことを考えるとなんとも言えんのよ」

「わかってますよ~、私達人間が亜人達を虐待したからですよね~」

「あぁ」

「・・・」

 彼女達に罪はないが、他の奴らがそう言った行動をしているため、的確なことが言えずにだんまりになってしまった。


 10分後


「まぁ、うん。貴重な意見、ありがとね」

「いえいえ、お気遣いなく~」

 あの後、適当に話をして俺はダンジョン本部に、サトル達は自分達の家に向かうため、お開きになった。


~~~~~~


 ダンジョン本部 ダンジョンコア・フロア


「ただいま~」

「見回りご苦労さん」

「やっと来ましたか~」

「ふん、遅かったじゃない」

「今日もずいぶんと見回りに時間を()いたのぉ」

「良いことですわ」

 アレマーニャ帝国で魔王軍との戦闘後、魔王軍の動きが気になるからホムンクルス・ゴーレムをどれだけ動かせるかを判断するため、市井(しせい)をよく見回るようになった。

 姿勢が安定しているように見えるのなら大量に動かせるし、不安定だったら治安維持のためにそっちに数を割いてしまうからな。

「市井の状況は素人目で判断するとまだ、亜人達と人間の混成部隊は出来なさそうだなぁ」

「となると・・・」

「部隊を別にすれば多くの人達が戦いに参加できるし、ホムンクルス・ゴーレムも多く動かせるだろう」

「今までの努力が実った形になりましたね~」

「まだ未熟だけどな」

 今までの政策は亜人や獣人達を優遇するようにしており、比率で言うならば6:4で亜人達が住みやすくして尚且つ、信徒になった人間達も逃げないようにしていた。

 そのためにダンジョンで得たポイントを資金にしてある程度寄付したり、ダンジョン自体を教団との共同運営という名義で回してきた。

 言うなればダンジョン城下町ならぬ、ダンジョン国家としてここまでやってきたし、国としてある程度の発展が進むまではそうするつもりだ。

「という訳で、急に呼び出した理由を知りたい」

「魔王軍が動き出したわ」

「ほぅ・・・」

「その数は540万という話じゃ。複数の偵察機からの観測したデータを精査した結果じゃからほぼ確実じゃのぅ」

「ほぼ全員出来た、という訳ね」

「勝率が低い中での全軍突撃は下策中の下策ですが・・・」

「それだけ、勝てる自信があるんだろう。もしくは飢えに耐えきれずに暴発したかのどっちかだな」

 現に、50万の魔王軍を圧倒的な火力でねじ伏せたことは相手側にもわかっているだろうから、1ヶ所に軍勢を集中させずに複数のルートでやってくるだろう。

 その事でバエルやパイモン、アスモダイ、ウィネ、サガン達と話し合っていると、ホムンクルス・ゴーレムから連絡があった。

『会議中に申し訳ありません!』

「どうした?」

『魔王軍、1ヶ所の出発地点から3つの侵攻ルートで進んできています!侵攻ルート上の町や村では大虐殺が行われているとこの事です!』

「手段を選ばず、人間達を襲い始めたのか」

『そのようです!アレマーニャ帝国では緊急事態宣言を発令して侵攻ルート上に存在している町や村から住民を避難させています!』

「わかった。他に報告することは?」

『この侵攻に対して突然、アレマーニャ帝国は支援を表明!3千の兵を送ると言ってそちらに向かわせました!』

「何かしらに兆候はなかったのか?」

『軍事演習として行動していたので甘く見ていました!』

「わかった、援軍に対してはこちらで対処する。引き続き、帝国との連絡に努めてくれ」

『了解!』

 俺がそう言うと、連絡をしてきたゴーレムから通信が終了した。

「という訳だ、諸君。盟友である帝国が支援してくれるらしい」

「支援という名の貸しの押し付け合いですね、わかります~」

宰相(さいしょう)となったあの少女のはそんなこと、しないでしょ?」

「どうだか、ね」

 宰相というのは、皇帝などを補佐するための最高責任者で内閣総理大臣と同じ役職と見て良いだろう。

 その役職に就いたのが、帝国の第一王女のテレサだった。

 彼女は男勝りな性格で、現国王を軟弱な国王と判断して率先して国の政策を取り仕切っている。

 そのため、この1年半の間に同盟国としての交流が活発になってきていて、現在では馬を使った伝令よりも通信機を使ったやりとりを行うようになった。

 とは言え、こうも勝手な行動をされると調子が狂ってしまうから困る。

「何はともあれ、援軍をよこしてくれるのはありがたいのぅ」

「そうですね、魔王軍を撃退できればより一層の絆が生まれるでしょうし」

「今のところ、悪いことはないんじゃない?」

「そうだな」

 だが今回の限っては、ありがたい援軍だ。

 虎の威を借る狐ではないが、今回の戦闘ではこっちも甚大な被害が出ると簡単に予測できるから、こう言った支援の手を借りることは人間界では有効な手になる。支援するのはアレマーニャ帝国だしね。

 ということで、俺達は魔核弾頭ミサイルの発射時間の打ち合わせをした。


~~~~~~


『弾道ミサイル、発射まであと5分!』

 魔王軍が侵攻を開始してから2日、3つに分かれた魔王軍が適度な距離にまで分散したのを確認した時、俺達は弾道ミサイルの発射を行うことにした。

 元の世界だったら、核弾頭ミサイルなんて行ったら核の報復で世界が崩壊するし、人類は全滅するだろう。

 この世界でも放射能汚染がないとは言え、その威力で周辺の住民に被害が出るなら使用に躊躇したが、幸いにも今回の目標は前線部隊ではなく、魔王軍の本陣や後衛部隊だからたいした被害は出ないだろう。

 それでもこのミサイルは元々、敵国の人間相手に撃つものだとするならば使うことにあまり気が進まない。

「状況が状況じゃなかったら、こんな兵器を引っ張ってくる必要はないんだよなぁ・・・」

「それでも使うことを選択したんじゃろう?」

「そうだ。これもウィネやバエル達、そしてこの国で暮らす家族や仲間達を守るための選択だ。現段階では他の選択肢はない」

 ミサイル発射の司令室で、俺のぼやつきに反応したウィネに対して俺はとあることに腹を括った。

 例え、人類がこの発射を評価しようとも大量殺戮兵器を開発してそれを使用した、という事実を背負って死んだ後も煉獄の釜の底を歩き続けることを。

 そして発射まで5分を切り、3分になり、1分を切って30秒になってカウントダウンが10秒になった。

『発射まで10秒!9・・・8・・・7・・・6・・・』

「全力で攻撃してくるお前達が悪いんだぞ。()ってやる、()られる・・・前に!」

 俺は覚悟を決めるようにそう言って目をつぶり、そして覚悟を決めて発射を見逃さないようにすぐに目を開けた。

『5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・発射!』

 その合図と共に、魔核弾頭ミサイルは地中に設けた発射装置から発射して真っ暗な夜空に白い雲を残して魔王軍がいる場所にまで向かっていった。


 何故、抵抗を感じながらも魔核弾頭ミサイルを発射したかというと、通常の砲弾や銃弾では魔王を初めとする上級魔族に対して有効打を打てないからだ。

 理由は、聖光教団との戦闘でサトル達勇者が砲弾の雨をなんとか躱して銃弾を弾いているため、それ以上の力を持つ上級魔族では余裕で城門から入ってきてしまう。

 そのため、バエル達やクロムを初めとする教団の信徒達、さらにはリクトやミレイ、ヒルダ達の亜人族を守るために抵抗を感じながらも発射に踏み切った。

 こうすることで、最低でもある程度のダメージを与えてあわよくばそのまま、壊滅して崩壊してくれれば万々歳だ。

 そして発射から1時間、そろそろ爆発ポイントまで行っているはずだ。

『魔核弾頭ミサイル、爆発まであと5秒!』

 もう、後には引けないな。

『5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・爆発しました』

 その報告と共に、3発の魔核弾頭ミサイルの爆発した映像が映し出された。

「これで、この世界で初めての核の炎が確認された、な」

「うーむ、すさまじいキノコ雲じゃのぅ」

 俺達が見ている映像は、赤外線を使ったカメラを望遠レンズで映してるもので、黒いキノコ雲が見て取れる。

 何故、黒いかというと人間の目に見える光を可視光といって赤から紫まで見えるが、赤外線は人間の目には見えない光であるため、それを見える形にするとモノクロ映像として映る。

 そこから確認できるのは、あのキノコ雲の下でどれだけの魔族を倒れたかだ。

 それによって作戦内容が変わってくる。


 その情報を待つため、仮眠を取って待つことにした。

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