第2章、完。第3章へ
ちょっと早い気がしますが、第2章は終わらせてもらいます
理由はまぁ、学園モノが本当に苦手なのとこのままではダンジョンとは無関係な話が続くばかりなので、魔王軍の侵攻ということで一区切りさせてもらいます
それと、今回から週1での投稿にペーシダウンしますのでご容赦を
後は、感想やら評価などをしてくださるとありがたいです
第7話 魔王軍、侵攻開始
「やっぱり現れたようだな。魔族ってやつは、よ」
俺は、飛び退いた魔族に対して着実に歩を進める。
魔族の出現によって、会場は我先に逃げようとしている観客で大混乱に陥っていた。それだけで、魔族という奴がどういう存在なのかがわかる。
確かに、並大抵の人間にとっては脅威であることは確実なことではあるがステータスがイカれている俺やバエル達にとっては赤子同然だ。
そんな悠然と歩いている俺を見て、相対している魔族は警戒心が最高レベルにまで上がっている。
それも当然で、魔族の攻撃を受けそうになったカリンのステータスの数倍以上も上にある魔族の力を余裕で受け止めた上に逃げようともしないのだから。
「貴様・・・何者ダ・・・?」
「さっきも言ったろう?名乗るほどではない、と」
魔族は数分前に言ったことをもう一回言ったため、俺も繰り返してそう言った。
そんなやり取りをした俺は、あることに気が付いた。それは、
「お前、お漏らし王子か?」
「!!・・・ソレデ、言ウナァ!」
俺が付けたあだ名にキレた魔族が猛スピードで突進してきたが、俺は風魔法を展開してから衝撃波を作り出して魔族に当てた。
すると魔族は、思いっ切って吹き飛ばされて走り出した場所よりも遠くで倒れた。
魔族自体は、体長が数メートルもあってかなり重そうだがそれを物ともしない勢いで倒れたのでそれなりの地響きが起きた。それだけ、衝撃波が強かったということを示しているがそんなことはどうでもいい。
それよりも、どうして魔族に成り下がったのかが聞きたい。
「ぶっ倒れている最中にすまないが、どうして魔族になったかを聞きたい」
遠回しの言い方をせず、端的に疑問を口にする。
すると、
「ソレハ、オ前ガ・・・」
「そうだ。俺がお前さんを貶めたからだよな?そこから先の話が聞きたい」
どうやら、入学当初の俺が盛大に威嚇したことが起因するらしい。そのため、そこから先の話を聞くとこういうことらしい。
そいつは王族の中でも比較的有能であり、容姿端麗で王様の直系の第三王子という事もあって将来が有望であったそうだ。
だがそれは、あくまで王族の中という限られた範囲であり、世間知らずもいい所だったらしい。
そのため、学園に入学させることで世間がどういった世界なのか、というものを知る機会にしたらしい。
しかし、運が悪く俺と同時期に同じような学年で入学したため、王族として人脈を作ろうとした矢先に俺と出会ったため、お漏らし王子として噂になってしまった。
更に運の悪さが裏目に出てしまい、その噂はすぐに王様の耳に入ることになってカンカンに怒ってしまったのだ。
散々に怒られた挙句、それが兄弟姉妹に伝わってしまったためにそいつらからも恥知らずだの何だのと言われたため、プライドが傷ついたとの事だった。
「あ~、遠回しに盛大にやらかしたって感じだな」
「ソウダ。貴様ノセイデ俺ノ人生ハ、メチャクチャダ」
一般人だったら笑い話で済むが、王族とかだったら向こう10年はその名に傷が付いたという事だ。そりゃあ、魔族になった奴だけの問題じゃなくなるわな。
「それに関してはすまなかった。だが分からねぇな。どこで、魔族になる道具かそれに類する物を手に入れたんだ?」
「ソレハ・・・」
俺は、魔族になったきっかけに関しては謝罪した。
だが1つだけ、腑に落ちない点があったので聞いてみた。
すると魔族が言うには元々、この国を作った初代国王が他の国々に対して優位性を保つためにそういった秘宝と称して多数、開発して保有していたとの事だった。
その宝具を悪用されないように、開発工程の記録は残っていないが宝具自体は今でも殆どが残っていて、周りの人達を見返そうとその内の1つをこっそりと盗んで使用した所、魔族になってしまったという事だ。
「そいつは災難だったな。だが魔族になってしまった以上、人間との共存はできないぞ?」
「・・・」
人間が魔族に対して、どう思っているのかは今までに色んな所で聞いてきた。
その中で共通しているのは、魔族は人間の敵であり、相容れる存在ではないという事だった。学園での授業もそうだし、学生同士でのやり取りや城内での色んな人達の会話でもそうだった。
その事に関しては、魔族になった王子がよく知っている事だろう。
そのため、
「ナラバ、暴レルマデダ」
「そうか。なら俺も、守りたいもののために戦うまでだ」
彼は魔族として行動し、俺は人間として魔族を討伐する事を選択した。
~~~~~~
「という事で、魔族に堕ちた第3王子とその取り巻き2人を電撃1つで灰にした訳だ」
舞踏会から数日後、俺はバエル達との打ち合わせでグループが使っている訓練場のすぐ近くにある小部屋の一室を陣取っていた。
この数日の間、舞踏会などのお祭り騒ぎとしての明るい雰囲気は一転して魔族がいつ、どこから襲ってくるかわからない恐怖が街の中を覆っていた。
それも当然で、今までは他国で魔王軍が魔族を率いて襲われてもあくまで他人事として受け止めていたのが急に、身近な事に感じたのだからな。恐怖を感じない方がおかしい。
それはともかく、魔族に堕ちた王子とその取り巻き2人は会場にいた観客や、カノン達に影響が出ないように出力を抑えた電撃魔法の1発で全滅させた。
ただ、出力を抑えたと言ってもそれは俺達の判断基準であって一般的な判断基準からすればかなりの威力だったらしく、その1発で3体の魔族は灰になったレベルである。化け物じみたステータスを持っていると、加減がしにくくて仕方ないね。
魔族が現れた結果、舞踏会は中止になってカレンとアルベルトのチームは大会で1位になった。
俺個人としてはあのまま、戦いが続いていけばアルベルト達の持久力によってカレン達のチームは負けていたと判断するが、国としてはそれどころではないのだろう。
何故なら、国のトップである王様の息子が舞踏会の最終日に魔族に堕ちたからな。あの日は、周辺の国の主要人物がたくさん来ていたからかなりの非難を浴びているはずだ。
大会の後日、魔族との戦闘に関して王宮に呼ばれて色んな事を聞かれたが王宮内部はかなり慌ただしかった様に見えた。
それも当然で、王族の秘宝が魔族になると聞けば大会の対外的にもそうだが国内でも不安を煽ることになりかねず、暴動やら反乱やらがいつどこで起こってもおかしくはない。
そんな中、
「それにしても傑作だったのは魔族が現れた瞬間、王様以外の王妃やら王子、王女に至るまでの全員が逃げ出した瞬間だったね」
「そうだったの?バエル」
「そうですよ~。それまでの体裁やらプライドなんかは殴り捨てる勢いで逃げ出していました~」
「王族としては当然の行為をしたまでだろうけど、あそこまでみっともなく見えるとは思っていなかったわ」
「王族の威厳やらが吹っ飛んだ瞬間だな」
王族のメンバーが当主である国王を残して逃げる、という話を聞いて笑ってしまった。
国の将来を担う人物達の命は重要ではあるが、無様に逃げる姿を想像しただけでニヤけてしまうのはステータス的に余裕があるからだろうか。
しかし、そんな状況下であっても王様だけは逃げずに最後まで残っていて魔族が消滅した後で労いの言葉をかけてくれたのでまぁ、良しとする。
そんな事よりも問題なのは、秘宝についてだ。
舞踏会の次の日に、王宮に呼ばれた時に秘宝に関してのあれこれを聞かされたのは秘宝の内、調査でわかっているのは全体の1割ほどであり、それ以外のものは用途不明なものだという。
そのため、秘宝が収められている部屋に入ってみると色々あったな。
デジタル時計からカメラ、電力を使ったライトに各種リモコンは勿論、携帯電話、ゲーム機まであったのには驚いたがこれはこの世界の人間には分からなくて当然だな、と思ってしまった。
「ほぅ?となるとハデスにとってはよく知っているものであると?」
「そもそも、この世界の魔法を使わない純粋な技術力では作れない代物ばかりだったよ」
「では、開発した人物は何らかの方法でそれらの仕組みを知っていた、という事でしょうか」
「その可能性が高いな」
と言っても、開発者自体が前世の記憶を持って転生したか、召喚術で呼び出された可能性のほうが高いけどな。
だが、それらの装備は使用者の身体機能の強化や魔力の増強に重点が置かれているせいで、魔族に堕ちた人物がいるのは確かだ。
その反動をいかに抑えるのかが、王族の腕の見せ所だろう。
え?俺がやらないのか、だって?。やだよ、依頼でもないのに無償でやるのは。
何はともあれ、現状では授業はいつも通りのペースであるのだが学園にいる殆どの人の心情は不安でいっぱいなのだろう。
その事を配慮して、今日の訓練は自由参加とする事をグループの皆には伝えているので訓練場はとても静かだ。
という訳で、俺はバエル達と小部屋でだらけていたのだがドアをノックする音がした。
「はーい」
『カレンだが入ってもいいか?』
「はい、どうぞー」
俺がそう言うと、カレン達がやって来た。2,3人ではなく、グループ全員でだ。
「・・・」
「皆、どうしたんだい?そんなに真面目な顔をして」
今日は休みかなぁ、と思っていたためにかなりだらしない顔をしていたが、カレン達から真面目な顔と雰囲気が伝わってきたため、俺も気を引き締めて聞いてみた。
「ハデスよ、私達を強くしてくれないか?」
「はい?」
「私達を強くしてくれ」
「どゆこと?」
話を聞くと、先日の俺と魔族との戦いを見ていたメンバーが魔族を物ともしない戦いをした俺の身振りを見て、震えていた自分達を恥じたそうだ。
しかも魔族を倒した俺は王宮に呼ばれたにも関わらず、その内容に関して何も言わないともなれば多少の興味も湧くとの事だった。
「現状では魔力値や魔法の威力が上がっているし、体力面でも余裕が生まれてきたからそう言えるようになった、という事か」
「そうですね~。でなきゃ、こんな事をいう必要はないですし」
「どうする?この辺りで適当なダンジョンはないと思うけど?」
「彼女たちの欲求を満たすためのダンジョンと言えば・・・」
「ふむ、あそこしかないのぅ」
「しかし、あそこだと皆が・・・」
俺達が話し合っているのを見て、カレン達は首を傾げる。
それもそのはずで、この国には学生の身で危険なダンジョンや場所に入ってはいけない、という法律があるらしいので申請してから許可が降りるまでに時間が掛かりそうだ。
そのため、俺達がイメージしているのは自分達の国にある一般人からすると地獄のようなダンジョンであり、攻略不可なダンジョンとして有名になりつつある。
そんなダンジョンが合計9個あり、それらを攻略ができなくても実力を図るという意味では最適な場所かもしれない。
「なぁ、皆」
「?」
「地獄に行く気はあるかい?」
後日、彼女達の実家の方に連絡して夏の長期休暇をダンジョンで修行できるようにした。こうする事によって後腐れすることなく、修行と銘打った地獄の特訓が1週間も続くのであった。
~~~~~~
そんな感じであっという間に夏が終わり、秋になると帝国にとっても俺達にとっても重要な情報が入ってきたのだ。
それは、帝国軍10万の兵が魔王軍との戦闘で壊滅して敗走したとの情報だった。
これで、俺達の努力は水の泡になってしまった。と言っても、駄目で元々の行動だったためにあまり期待はしていなかったんですがね。




