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1人だと寂しんです。だから配下の者を呼びました

 第1話 ダンジョン構築


 さて、ダンジョンを作るにあたって地上に10階層分のダンジョンを作った訳だが、地下にも11階層分のダンジョンを作った。理由としては、強い獣以外は何もなかった森林に突然、ダンジョンができると普通は怪しむだろう。だから、地上部分はあくまで象徴的なもので本命は地下、という事にした。

 とはいえ、ダンジョンなのだからモンスターの1匹でもいないとそれはそれで問題なので、地上のダンジョンには一般的な魔物を、地下のダンジョンには地上のダンジョンよりも少し強い魔物を配置しようと思う。

 という事で、魔物の召喚をするためにダンジョンコアに向き合い、コアに内蔵されてあった説明書を開く。

「ふむ、えーっと」

 その説明書曰く、ダンジョンに魔物を配置するには、ダンジョンコアに蓄えられている魔力を使う必要があるらしい。つまり、魔物のランクによって消費する魔力が異なり、ゴブリンなら1匹5ポイント。ゴブリン・リーダーなら15ポイント、といった感じだ。

 そのため、高いランクの魔物を召喚するにはそれ相応の魔力が必要で、召喚した魔物によっては召喚した者の力量次第で襲い掛かってくる可能性があるという。ある意味、それは当然だと個人的には思う。

 なぜなら、明らかに無理をして召喚したやつや未熟な者の指示なんて従う理由がない。どうしても従わせたいなら、自分がその高みに登らないとアンバランスすぎてやってられなくなる。例外は、そいつの伸びしろが大きかったり、物好きで力が弱い者に従っているぐらいか。

 まぁ、俺の場合、よっぽどの偏食家やそれぞれの好みに合わなかった場合を除いては従ってくれると思う。だから、まずは地上の10階層と地下の10階層に中ボスを置こう。

 え?俺がボスなんじゃないかって?

 ご冗談を。俺はただ、ダンジョンでゆっくりと過ごしたいだけだよ~。


 1時間後。


 ふぅ。魔物のリストを見ていて悩んだが、地上のダンジョンには“エンシェント・デュラハンロード”という魔物(妖精)に中ボスになってもらい、地上のダンジョンを一任して彼女に管理させた。

 “エンシェント・デュラハンロード”というのはデュラハンの最上位互換で、命を狩りに出かけるだけではなく、魔法の無力化や治癒魔法などの多彩なスキルを有している。

 つまり、戦闘面では申し分なく、召喚したエンシェント・デュラハンロードは責任感も強いため、うまくやってくれるだろう。現に、彼女の配下にあるゴーストやアンデットなどを次々に出しているし。

 さて、次は地下のダンジョンの中ボスだが、こっちはかなりの魔力を使って召喚した。理由は今まで述べてきた通り、のんびりしたいからで多分こいつを従えるのはそうそういないと思う。

 そいつの名は“バエル”と言って、最上級の魔神である。元々は、ソロモンの72(ちゅう)の魔神の一人で、異形の怪物として描かれているが、この世界では可愛らしい少女として召喚できた。

 デュラハンならともかく、バエルの元ネタの方は精神的にも描写的にも色々ヤバそうだから、少女として出てきてくれた時には思わず、ホッとため息をついたものだ。

 それはともかく、召喚した2人の少女たちには不用意に森の外に出なければ好きにしていい、と言ってそれぞれ指定したエリアに行ってもらった。とはいえ、こんな森の奥まで来る物好きなんているのかね。

 俺はそう思いつつ、今日もダンジョン強化に励むのだった。


~~~~~~


 2週間後


「なに?森の様子がおかしい?」

「はい。近隣の農村に被害を出していた獣や魔物がいなくなったとの報告です」

 ここは、冥皇竜がダンジョンを作っている森を領地に入れている国の王都。その王国の長が執務する執務室で、ロンメル国王は部下であるエルヴィン国務長官の報告を受けていた。

「寧ろ、いい報告ではないか。それがどうしたのだね?」

「はい。実は・・・」

 報告では、害獣である獣や魔物がいなくなったのと同時に狩るための獲物もいなくなり、代わりに妙な集団を見かけるようになった、との事だった。

 その妙な集団というのが、冥皇竜が召喚したバエル達であるがこの時点で国王達がその事を知る(すべ)がなかった。

「わかった。調査する者を送らせるが、あまり多くは送れん。いいな」

「ありがとうございます、国王陛下」

 そう言ってエルヴィン国務長官が出ていった後、ロンメル国王は内心、不安な予感を感じていた。

(魔王が滅んでから早200年。200年周期で起きる魔王による災害がいつ起きてもおかしくない。今の内に打てる手は打っておくか)

 彼はそう思うと、執務室の机にあった鈴を鳴らし、人を呼んだ。


~~~~~~


「はーん、それで俺達に来た訳ね。その依頼が」

「えぇ。今朝、彼に会って挨拶したらすぐに拝み倒されたわ」

「只の調査だろ?すぐに終わらせようぜ」

「でも、ちゃんとした準備がないと成功できる依頼も成功できなくなるよ?」

「何はともあれ、いつもの様にやっていこう」

 冥皇竜が現れてから一週間後、王都にある酒場では5人の男女が今しがた受けた依頼について話し合っている。

 きっかけは、パーティの中でリーダーであるリンダが依頼を探していた所、ギルドマスターに呼び出されて今回の依頼を受けてくれ、と頼み込まれたからだ。

 依頼の内容は、森の探索という至極簡単な依頼なのだが、リンダにとっては苦手な依頼だった。

 理由は単純で、彼女の性格はどちらかと言うと戦闘向きであり、根気のいる捜索や特定の薬草の採取は彼女にとっては苦痛の時間でしかない。

 そのため、ギルドメンバーになった当初は無理な依頼を受けて重症を負い、他のメンバーに苦労をかけていたのだ。だが、そんな彼女も実力を重ねていくうちにギルド内でのランクが上がり、今ではAランクの冒険者パーティー『(シルバー)(ウイング)』のリーダーにまで成り上がった。

「しっかし、なんでまたこんな依頼を受けたんだ?」

 最初に疑問を持ったのは、盗賊タイプのグレイ。粗野な口使いをするが、受けた依頼は確実にやり抜くため、ギルド内からも信頼が高い。

 それと同時に疑問を持ったのは、リンダの性格を知り抜いているためであり、探索自体はそれほど苦労するものだとは思っていない。

「ギルドマスター曰く、王様からの勅命、だそうよ?」

「探索でか!?」

 グレイが驚くのも無理はなかった。

 何故なら、冥皇竜が住み着く前の森は比較的に安全な地域であり、ギルド内でその森に行くのは初心者か、薬草の採集をする者だけであった。そのため、驚いてしまったのだ。

「正直、私も驚いたわ。しかし、どうしても探索してほしいらしいわ」

 そう言って、リンダはやや呆れながら髪をたくし上げる。

 その仕草だけで色気を醸し出す彼女に、魔道士で冷静沈着なクノンが質問を投げかける。

「探索するにしても、何か細かい情報でもある?それによって持っていく装備が多少変わるんだけど」

「そうね・・・」

 そう言ってリンダは今朝、ギルドマスターに言われた事を思い出しながら言った。

「細かい事はわからなかったけど、獣や魔物がいなくなったそうよ」

「魔物はともかく、獣まで?」

「えぇ。特にこれといって、何かしらの被害を出さずにね」

「もしかしたらドラゴンが現れたりしてな!」

 そう冗談を言ったのは、盾役で大柄なウォルフだった。彼は、ギルドに入ったばかりのリンダの事を知っている数少ない人間で、彼女とは長い付き合いである。

「ウォルフ、冗談でもそんな事を言わないものよ?」

 嘘だとしても笑えない冗談を言ったウォルフに対して、そう窘めたのは弓使いのレベッカだ。口数は少ないが、リンダがリーダーを務める『銀の翼』の初期メンバーであり、2人が意気投合したから結成したとも言われている。

「おぉ、ワリィワリィ」

「全く・・・」

 反省の色が見られないウォルフに対し、レベッカは悪態をつきつつ、リーダーの判断を仰ぐ。『銀の翼』のメンバーは一見、悪ふざけしているようでパーティーでの上下関係はしっかりしている。そうする事で、生存の確率を1%でも上げる事につながるからだ。

 それに対してリンダの判断は、

「ま、探索の割には結構なお金が出るから、必要な装備を整えたら行きましょう」

「わかった」

「は~ぁ、俺に出番は無しか」

「まぁ、ウォルフの旦那はいつもの様にいてくれればいいよ」

「グレイ、それはどういう意味だ?」

「そのまんまの意味さ、旦那」

「コノヤロ~」

 真面目なウォルフとお調子者のグレイの間で喧嘩になりそうだったので、レベッカがそれを抑える。

「二人共?喧嘩をするんだったら、ちゃんと準備してからにして頂戴。途中でくたばっても知らないわよ?」

「「へいへい」」

 それを合図に彼女らは、それぞれが必要なものを買うために市場(いちば)などに出向いた。

 こうして、『銀の翼』のメンバーは通常の探索用の装備で、指定された森に行くのだった。その森は、彼女達の想像以上の森に変貌したのにもかかわらずに。


~~~~~~


 『銀の翼』が準備しているのと同時刻


「盛大にやらかした感じがある」

「まぁ、いいじゃん。こんぐらいして」

「そもそも、冥皇竜がこの世にいる事自体がイレギュラーですね~。このくらいしておかないと命の保証ができません」

「マスターが非常識なのは当たり前でしょ?私達を従えてるんだから」

 俺が異世界に転生(?)してきて2週間が経った。

 その間に、強力な魔物やらダンジョンを作っていたらとんでもない規模にまで発展してしまった。

 まず、魔神筆頭のバエルが召喚できたんだから他のソロモン72柱も召喚できるはず、という安直な考えで召喚したら全員召喚できてしまった。しかも俺が難なく召喚した事に彼女達は驚いていたが、俺の魔力値を見て妙に納得した顔で従ってくれている。

 それに伴い、地下ダンジョンを大幅に強化して1層あたり500m四方の迷宮を721層にまで増やした。そうしないと、上は王様から下は総裁までいる魔神達が勝手に自分の領地を主張して争いが起きてしまう。そのため、1人あたり10層を目安に分配した結果、とんでもなく分厚いダンジョンになってしまった。

 とはいえ、通常のダンジョンの場合、20~30層が普通で50層ものダンジョンは非常に稀であるとの事だそうだ。理由としては、ダンジョンというものは長いスパンでゆっくりと成長していくものらしい。そのため、成長途中で冒険者たちに見つかって攻略されると成長が止まってしまうのが大半らしい。

 そこで俺達が考えたのは、ダンジョンコアのあるエリアを121層にしで、残った600層を60層のダンジョンに分散して10個にする事で解決した。

 そして、召喚した魔神達を10層ごとに配置してボス部屋にした。

 一方、地上のダンジョンも大幅に拡大、ダンジョンコアを直下して直径300m、高さは200mもの城型ダンジョンにした。そして、その周囲には城下町とも言うべき街が広がっていて、その周囲を城壁で囲んでいる。膨大な魔力に物を言わせて色んな奴らを召喚したため、こうなった。

 また、ダンジョンの階層は40ほどで、最上階にはエンシェント・デュラハンロードとサブ・ダンジョンコアを設置、その間は通常のダンジョン形式にした。こうすることで、冒険者の実力を見るのと同時に長旅の疲れを癒やしたり、消耗品の補充のためにお金を使ってくれる寸法にした。

 何しろ、一番近いお城で100kmの距離がある。言わば、東京から直線距離で宇都宮とか伊豆とか行ける距離である。そんなところから来た冒険者が、万全な状態でダンジョン攻略ができる訳がない。また、城下町に来るまでの森も、今では難易度を1ランクから2ランク上にまで上げてしまったからな。

 命を守るためとは言え、最初はパエルを始めとする魔神達からは反対の声が上がったが、この事を懇切丁寧に説明したら納得してくれた。

 そのため、彼女達は特に争いもなく、それぞれ割り当てられた階層に向かった。ただ例外もあって、俺の付き人としているアスモダイという魔神は召喚と同時に、俺に腹パンをしてきた。

 防御スキル無効のパンチだったとは言え、HPが5000万ぐらい持って行かれた時は流石に驚いた。だがそれ以上に、彼女のパンチに耐えきった俺に感極まって泣き出しそうだったので、落ち着かせるのに一苦労した。

「非常識って言うなら、アスモダイの腹パンも非常識な痛みだったぞ?」

「あ、あれは・・・術者がどれぐらいの力量なのかを見たかったからで・・・」

「俺じゃなかったら速攻で粉微塵になってるレベルなんですが、それは」

「べ、別にいいじゃない。そのぐらい・・・」

 そう言って、アスモダイは頬を赤らめる。ふむ、直に見るツンデレって可愛いものだな。

 俺がそう思っていると、

「相変わらず、アスモダイはツンデレだな~」

「馬鹿力のせいで異性が逃げていったから仕方ないです」

「そこの2人、しゃらっぷ!」

 とまぁ、アスモダイの事をよく知っているバエルとパイモンが茶々を入れる。そんな2人にアスモダイはまんざらでも無いようだが、ツッコミを入れる。

 可愛いのう。

「しっかし、これで冒険者が本当に来てくれればいいんだが」

「その辺に関しては抜かりないありません」

「どゆこと?」

 ここまでハードなダンジョンに俺自身が仕立て上げたとはいえ、金のなる木、じゃなくて金づるがこんな辺境に来るのか心配しているとバエルが説明してくれた。

「マスターは元々いた魔物たちの生態系をぶっ壊して、新しい生態系にしたじゃん?」

「おう」

「その時に、わざと周辺にある村々の人達にわかるように行動させていたから」

「い、いつの間に・・・」

 俺がそう呆然としていると、

「パイモンは、そういった事に関して得意分野だから気にしない方がいいわ~」

「そうなのか?」

「はい」

「・・・」

「?」

 と、バエルが説明してくれたので納得する。だが、せめてやったんだったら報告ぐらいはしてほしかった。そのことをパイモンに言うと、

「聞かれなかったので言いませんでした~」

 と、のんびりとした口調で言われた。こいつ、かなりのマイペースな()だ。だがそれと同時に、頭の回転も速い奴だな、と感心もした。

「次からは、今回のことのように何かやったら報告してくれよ?パイモン」

「わかりました~」


 そんな訳で、かなりの大規模ダンジョンを構築した俺達は今後、人間を呼び寄せるにはどうするか、を検討するのだった。

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