敵勢力を排除して、学園に向かう
第2章の始まりですよー。
全くもって始まった気合がないですが始まったんです、ハイ
それと、暫くの間は投稿ペースを週2に落とそうと思います。
理由としては、新しい章になったためにその構想とかがまだはっきりとは決まってないからです。
それでも、構想がしっかりとできたら週2とかになりますのでご容赦を。
第1話 国の維持は難しい
「いや~、この1年の間に色々とあったな」
「そうね。戦闘とは別の意味で疲れたわ」
俺とバエルがいうこの1年というのは、聖光教団との戦闘後の締結されたアレマーニャ帝国との安全保障条約からのことを指している。つまり、俺が転生してきてから2年が経ったということだ。
その間に色んなことがあって、フィレンツェ王国との同盟が結ばれたり、魔王軍の精鋭部隊の1つがここまで出張ってきて応戦したり、聖光教団がテロまがいのことをしようとしたためにその組織を強襲してぶっ潰して世間に晒したりもした。
その中でも一番大きかったのは、教皇であるアレク達の裏切りであった。
「アレク達が裏切った理由が自分の国を作りたいから、だっけか?」
「えぇ。どうしても作りたいから、と言って行動に移したみたい」
「全く。前もって言ってくれたら、別の場所に作ってやったのによ。ツレない奴らだぜ」
俺はそう言って、彼らが捕まったときのことを思い出す。
~~~~~~
「ぐっ!な、何故、分かった」
「そうよ!私達の作戦は完璧だったはずなのに!」
アレクとソフィアは、ゴーレムに牢屋にぶち込まれなからも俺達にそう反論した。その表情からは、驚きとこれからのことを考えているのか恐怖で染まっていた。
そんな彼らの疑問に俺は、
「なぁに。前々からそういう兆しが見えていたんでね。いざという時に動けるように、目を光らせていたんだ。そしたら、今回の件でうまく引っかかってくれて一挙に大勢の奴らを逮捕できた」
そういう風に答えた。何も裏切り者が確定した今となっては、こいつらに事の真相をすべて話す必要はない。そういう判断の元で発言している。
と言っても、ヴィクターの報告によって一般市民や関係者に化けさせていたゴーレムの秘密警察によって尾行していただけなんだがな。
それと、彼らが備考を気にして毎回のように集まる部屋を変えてたが、ダンジョン内のすべての部屋に盗聴器が仕掛けられていたため、建物に入った所を確認すればすぐに特定できる。
つまり、最初からただ漏れだった訳だ。
「それとな。お前らを除いた反乱を起こそうとした奴らは全員、通常とは別の牢屋に入っていい実験台になってもらった。彼らは今頃、それ相応の刑罰を受けているはずだ」
「なっ・・・!」
「なんて卑劣な・・・!」
「卑劣だと?」
俺が言ったことに対して、ウィネが反応して怒りを露わにする。
「卑劣なのはお主らのほうじゃ!お館様に自分らの要求が通らねば駄々をこね、温情をかけられれば裏切りよってからに!お館様がいなかったらこの手で粉々に引き裂いてやるからに!」
「「ひっ!」」
その怒りの度合が凄まじいものがあり、俺も軽くすくんでしまった。とは言え、それを表情に表すこともなく、こう言った。
「あー、ウィネ?俺を思ってくれる気持ちはわかるがこいつらにはこいつらなりに地獄、というよりも精神的に苦しくさせようと思うから手出しは不要だ」
「し、しかしのぉ・・・!」
「大丈夫だ。何もしないで解放とかしないから」
「わかった。ただし、情けは不要じゃぞ?」
「無論だ」
こいつらに情けなんかする必要はない。何故なら、神聖ハデス教会の幹部ら6人とその配下である信徒40名余りを使って、俺を偽物だとでっち上げて殺そうとした奴らだ。
そんな奴らに情けなんかかけたら、今後もアレクとソフィアのように俺の暗殺計画を立てる輩が大量に出てくることになる。
俺が作った国でそんなことはさせないし、それを許した時点でプライド的にも対外的にも負けだと思っている。
この国は出来たばかりの国であり、他国からすればダンジョン以外に信用価値が無いと言っていいほど孤立無援だ。
そんな状況下で、こいつらが虫のように湧き出てくるとか国を動かしている立場の人間からすれば悪夢でしかないし、他国も信用できないからにっちもさっちも行かなくなってしまう。
(だから、こいつらで民衆の見せしめにしておかないとダメだ)
そう思い、俺は次の行動に移す前に1つだけ聞いておく。
「お前らは何故、俺達の国に対して反乱を起こす前に俺達に相談しなかった?」
俺達の一番の疑問はそこだ。
普通なら、何らかの提案なり意見なりのアクションをしてもいいはずなのに、最初から反乱を起こすのに躊躇なく行動していた。
すると彼らは、
「この国が、あらゆる組織や国に対して圧倒的優位に立っている今こそが世界征服が可能な時期だ。それをお前らが台無しにしたんだ!」
「そうよ!そうすれば、いなくなったエルフたちが戻ってくる!彼らの安住の地が個々にあるのよ!」
とほざいていた。
なるほどな。結局は、こいつらも大航海時代の西洋人の如く、他者からものを奪うことしか考えが及ばない訳だ。
もはや呆れて物が言えないばかりか、こいつらに政治を任せていてよくまぁ、ここまでやってこれたな、と感心したくなるレベルだ。
それはともかく、裏切り者のこいつらに用はない。
「これより、アレクから皇竜の能力を、ソフィアからは聖女の能力を失ってもらう」
「何、だと・・・?」
「ふ、ふざけないで頂戴!」
俺がそんなことを平然と言ってのけたため、彼らは呆気にとられた顔で俺を見ていた。だが、すぐに俺に対して楯突いたため、俺はこう反論しつつ、合図を送った。
「ふざけるな?ふざけているのはお前達の方だ。だから、すぐに刑罰を執り行うことにした。クロム、入っていいぞ」
「はい、ハデス様」
すると一人の女性が入ってきた。その女性は、如何にもシスター風の服装をまとっていて、片手にはその女性の身長以上のロッドがあった。
その女性はクロムと言い、ヴィクターが探してきてくれた人物だ。
クロムは以前、聖光教団のシスターの中でも異例中の異例で司教にまで上り詰めた女性である。そのため、一般の市民からは女性司教と言えば10人中10人が彼女のことを指すだろう。
だが、そんな彼女も聖光教会の不正を目の当たりにしてひどく失望したそうだ。
そのため、自分が担当していた地区を他の人に譲って放浪の旅をしながら人々に教会の教えを施していた所に、俺達の噂を聞いてここまでやって来て半年以上前に入信した。
その後、俺に対する信仰心からかハデス教の教えを一晩で飲み込んで、その教えを信者達に教えながら政治の分野でも活躍をし始めた。
その結果、瞬く間に結果を残していって、今では彼女をハデス教初めての女性教皇にしようとする声が多く、聞かれるようになった。
そして今回、彼女に教皇になってこの国を俺の代わりに引っ張ってくれないか?と聞いた所、2つの返事をもらったために反乱を素早く抑えることが出来た。
彼女がいなかったらもう少し、手間取っていたかもしれない。
そして俺はまず、牢屋にいるソフィアを固定するために何人かのゴーレム達に命令をして牢屋に入ってもらい、ソフィアとアレクを引き離し、無理矢理に彼女を鉄柵の前で膝を付かせる。
一方のクロムも、俺の隣に来て恭しく膝を付いた。
こうすることによって、ソフィアからクロムに聖女の力の継承を行いやすくするのだ。
「・・・!・・・!」
「・・・!?・・・!!」
聖女の能力が失うことに危機感を覚えたソフィアとアレクは、何かを叫ぶような声で俺に言ってきたがあまりの大声のため、理解のしようがない。
クロムも、そのことを理解しているのか目を閉じて膝を付いた状態で微動だにしない。
そして、まずはクロムの頭に手を置き、呪文を唱えて能力を受け入れる準備をする。そうしないと、失敗した時に彼女の精神が汚染されて大変なことになりかねないからだ。
そして、さっきから騒いでいるソフィアの頭に手を置こうとしてた。
だが、頭を横に振って必死の抵抗をして拒もうとするソフィアに、もう1人のゴーレムが加わって頭をガッチリと押さえ込んで逃げれなくする。
そして、能力継承の呪文を完成させると俺を中心に幾何学的な魔法陣が浮き出して強力な光を放った。
その光が収まった時、ソフィアはぐったりとして動こうとせずにゴーレムが手を離すとその場に倒れ込んだ。
「おい!ソフィア、返事をしろ!」
アレクは心配のあまり、ソフィアに駆け寄ろうとするがゴーレムの力によってびくともしないことに苛立ちを覚えている。
そんな中、俺はクロムに聞いた。すると、
「クロム、調子はどうだ?」
「はい。とても調子がよく、力が湧き出るように感じます」
クロムは立ち上がり、笑顔で俺に答えてくれた。
そして、気が付いたら習得していた鑑定スキルで彼女の状態を確認する。
「ふむ、状態異常もなし。精神的な汚染も確認できないし、無事に成功したようだね。もう行っていいよ」
「はい。ありがとうございます、ハデス様」
クロムがそう言って、恭しくお辞儀をして俺達がいる部屋から出ていった。
そのことを確認した俺は、もう1人の方であるアレクを見てゴーレムに指示を出してソフィアと同じような体勢を取らせた。
「お前と戦った時、もう少し冷静なやつかと思っていたが失望したよ」
「はん、てめえなんかに失望されても嬉しくねーよ」
もはや、お互いの立場なんてものは関係ないかのようにアレクの柄が変わってしまった。それでも俺は、これだけは聞きたかった。
「やり直すことは出来ないのか?お互いの道は違いすぎて、本当に交わることはないのか!?」
「ない!でなきゃ、こんなことはしねーよ」
彼の表情を見る限り、お互いに助け合うという道は無さそうだ。
「残念だ。とても残念だ。だから、ここでさよならだ。とても楽しかったよ、アレク」
俺がそう言うと彼は笑ったため、彼の能力を俺に継承した。
その後、気を失った彼らの性別を逆転させて奴隷商に引き渡した。
こうすることによって、奴隷となった2人は自分で死ぬことができなくなり、女性となったアレクは男性の性処理用に回され、男性になったソフィアの方は過酷な環境下での重労働をする羽目になった。
一方、アレク達以外のメンバーはそのまま処刑台に直行してもらい、斬首の刑に処してもらった。
それと同時に、アレク達を含めた反乱を起こそうとした彼らの財産は没収となり、その金額は必要経費を差し引いて国庫に回されることになった。
残酷で卑劣かもしれないが、こうしないと後々で面倒くさいことになるからそうせざるを得なかった。
~~~~~~
「俺の判断は間違っていなかったよな?」
アレク達の末路を思い出して、俺はそう呟いた。すると、バエルは当然のような口調でこう言った。
「あーなって当然の仕打ちを受けているだけじゃん。それとも何?ハデスは、彼らに同情しちゃった訳?」
「いや、それはない。ただ単純に疑問に思ったから聞いたまでだ」
「そう、ならいいわ」
バエルはそう言うと、俺の左腕に抱きついてきた。
「大丈夫。クロムは裏切り者達達とは違って、そう簡単にはハデスを裏切らないわ」
「そう、だな。そうだ。じゃないと何で入れ替えたのかがわからなくなっちまうからな」
俺はそう言って、彼女によって握られた左手に力を込める。
そうすると、バエルは嬉しそうに笑った。そんな彼女と、このダンジョンで生きるメンバーを守ろうと俺は再び決意した。
「マスター、時間です~」
「はいよ、パイモン」
俺がそう思っていると、後ろからパイモンが声を掛けてきた。
振り返るとパイモンが不貞腐れた顔で俺を見ていて、その後ろにはアスモダイやウィネ、サガンや大勢の民衆とともにハンヴィーと呼ばれる経汎用車が2台が置かれている。
民間用では、ハマーと呼ばれているようだがこの車はれっきとした軍用車であり、装甲強化型のM1114を使用して敵からの強襲に備えている。
今や俺は一国の主として行動するため、いつ何時に敵対する者達から襲われてもおかしくはない。
そのため、一定の防御力を持ちつつも機動性を確保している車両となるとハンヴィーぐらいしかなかった。
本来ならば、航空機を使用したかったがアレマーニャ帝国の帝都付近には滑走路がないため、何日も掛かる車両を使うしかなかった。
それでも徒歩よりかはマシかな、と思いつつ、パイモンに頭を撫でる。彼女の頭がちょうど俺の腰辺りに来るため、とても撫でやすい。
「これで機嫌を直してくれるかい?」
「あとで褒美をくれないといたずらしますよー?」
「い、いたずらってどういう風にいたずらするのか、聞いてもいいのかな?」
「夜になったら夜這いでヒャッハーするんですよ?」
「そいつは困った悪魔ちゃんだな」
「あとで褒美をくれたらいいんです」
(やれやれ。あとでちゃんと構え、って事か)
俺はそう思いつつ、みんなにしばしのお別れをする。
「ハデス様。帝都に言っても連絡をください」「ちゃんと学園で学んでこいよ!」「これ、お守りです。どうかご無事で」「無事な帰還をお祈りします」
そんなことを言われつつ、俺はこう言った。
「んじゃ、まぁ!世界について学びに行くからちょっとここから離れるけど、みんなは普段通りに元気にやってくれればこれ以上に元気になることはない!
だから俺らは、さくっと行って帰ってくるからみんなも元気にしててくれ!」
そうすると民衆から大きな歓声が上がり、見送られることになった。
そしてバエル達とともにこれから行く所に向かうため、運転手であるホムンクルス・ゴーレムが操るハンヴィーに分乗して城門に向かう。
その城門の前の街には俺の顔を一目見ようと集まった民衆がいるため、車両上面に設置してあるハッチから顔と体を出してみんなに手を振る。
すると、ここでも大きな歓声が上がって本当に出発するんだなぁ、という気持ちにさせる。
そして、城門に着く頃には大勢の民衆は集めリ、かなりの熱気になっていた。そのため、城門から外に出る時まで大きな歓声が上がりっぱなしであった。
~~~~~~
今から向かう場所は、アレマーニャ帝国一の学園であるアレマーニャ学園であり、そのための前準備はし尽したと思えるほどにしてきた。
まずは、そこに向かうために付いてくるメンバーの選別。
まぁ、これは単純にバエル、パイモン、アスモダイ、ウィネ、サガンの5人にした。
彼女達とは公私ともに長く生活してきたために、俺の長所や短所を知り尽くしているのでこのメンバーに自然となった。
次に、帝都に持っていくための荷物。
流石に手ブラで行く訳にもいかないため、学園生活で必要な教科書やノート一式に学園指定の制服が数着、そして日常生活で必要な備品だ。
向こうでは衛生に気を使われているらしく、風呂や歯磨きなどの週間が身に付いているため、これらに必要な道具や普段着、下着などの道具や服もそれなりに持ってきた。
後は、ダンジョンとの通信を行えるようにできる通信機器一式に本を何冊か持ってきている。
それだけでかなりの量になるのだが、幸いにも空間魔法が使えるようになったため、俺も含めたみんなの持ち物は鞄1つにまとまった。
寧ろ、ハンヴィーの荷台を圧迫しているのは帝都までに必要な食料や水、寝るための道具などであり、これらが荷台の大半を占めている。
それもそのはずで、俺達のダンジョンから帝都までは車で2週間あまり掛かるので、6人分の食料と水が必要になる。
それはともかく、何で学園に俺自身が行くのかというと人材の発掘だな。
現在の神聖ハデス教国周辺は比較的に安定しているし、最悪の場合でも自分の国だけで生きていける程度には発展させて、商業ギルドによって国外への物流は確保できている。
だが、それはあくまでも最悪の場合を想定しているため、今は即戦力になる人材がほしい。
即戦力を確保するということは、俺自身が采配をして動かす必要があってもミスが起きにくくなるため、俺自身がのんびり出来るのである。
だったら、ダンジョンコアで召喚すればいいだろうと思うかもしれないが生憎、そこまで高性能な代物ではない。
あれはダンジョンに必要なモンスターを召喚するものであって、国を動かすための優秀な人材を召喚するというのは想定外なのだ。
虎穴に入らずんば虎子を得ず、という諺があるように、俺自身が出向かないとわからないような人材が学園には集まっている可能性がある。
全くの徒労に終わるかもしれないが、駄目でも友、じゃなくて駄目で元々な行動なため、あまり気張らずに行こうと思う。
そう思いつつ、俺達が乗っている車両はアレマーニャ帝国の学園に向かっていった。




