勇者としてのノーマルエンド
勇者として普通のエンドにしました。
本来なら、バッドエンドにしたかったのですが、そうすると色々面倒になるのでこうなりました。
では、始まりますよ~
間章 とある勇者達の思い
「どうしてこうなった・・・」
俺は牢屋に入れられてから、何度目かわからない呟きを吐いた。
ここに来てから約2週間、何ら動きが感じ取れない。変化があるとするならばせいぜい、尋問ぐらいと三食の食事ぐらいか。しかし、それですらひどく単調でいい加減、気が狂いそうになる。
そんな中、俺はこの世界に召喚されたばかりのことを思い出していた。
~~~~~~
その日、俺達の友人であり、同級生のテツオが死んでから1年となった。
テツオは人見知りではあるが、面白い奴でいつも俺達を笑わせてくれた。だが俺達が高校1年に上がった年の夏に、テツオが交通事故に巻き込まれた。巻き込んだのはトラックの運転手で、理由は過労による居眠り運転だった。
その結果、彼はトラックの下敷きになって100メートル以上も引き摺られた上に、運転手は電柱にぶつかって止まったトラックに気を取られて気付かなかったそうだ。
そのため、彼はまだ助かる見込みがまだあったにも関わらず、救急車が間に合わずに死んでしまった。
俺らはとても悲しんだが、何よりも悲しみに包まれていたのは彼の家族だった。その日まで元気だったらあいつが突然、いなくなってしまったからな。
あいつは最後に何を思って死んだのだろう、どういう気持で最後の景色を見たのだろう。そればかりが頭をよぎる。
悲しみに包まれた中、四十九日の法要が終わってから俺達は近くの酒場でお酒を飲んで弔おうと集まった時に突然、魔法陣らしき円陣が俺達の回りに浮かび上がってそのまま飲み込んだ。
そして気が付くと、教会らしき場所に俺達4人はいた。
別室に呼ばれ、そこにいる偉い人達から魔王に侵略されていて助けてほしいと言われた。
最初は、断ってさっさと帰ろうとしたがその偉い人達との押し問答になって結局、引き受けることになってしまった。
その代わりに、勇者としての装備と仲間を持つことが許されて、教団内から選ばれた人達から好きなのを選んでパーティにした。
最初は戦いに不慣れでパーティメンバーに苦労かけていたが、しばらくするとやるべきことに慣れてきたので、その時に有名になったダンジョンに向かうことにした。
そのことを教団に伝えると、そのダンジョンは魔王の手先だから軍隊とともに戦ってほしいと言われた。そのため、早く行きたい気持ちを抑えてその年の秋まで待った。
そして秋になり、俺達4人の勇者とともに皇竜という強い竜も召集されて行軍を開始した。
だが、これが俺達の不幸だった。
軍の先頭が、ダンジョンから10キロの地点に到達して遠くに見えていたダンジョンの壁がだいぶ近くに見えたきた所で急に地面が噴火したのだ。
いや、噴火ではない。あれが砲撃だとわかるまでに数分を要したが、それでもまだ撤退には余裕があるとして指揮官に提案したが却下された。
理由を聞くと、段々と手柄を立てたいから留まっているのがわかってきた所で今度は、後方の軍からの報告が来た。それによると、空を飛ぶ鋼鉄の鳥が爆発物を投下しながら炸裂魔法を放ってくるらしい。
ここまで来ると、冷静な判断だと撤退をするものだがその指揮官は俺達、勇者や皇竜の意見を無視して突撃命令を下してあっさりと死んでしまった。
こうなったらヤケクソで砲弾を避けながら突撃すると砲弾の雨が突然、止んだ。調子に乗った俺達は、そのまま突っ込んでいくと次は地面全体が爆発した。
砲弾の場合は空気を切り裂く音が聞こえるため、ステータスが高い俺達にとっては避けやすいものだがこれその類ではない。つまりは地雷か。姑息なことをするため、多くない仲間が何人か死んだ。
そこをなんとか突破すると今度は、機関銃による鉛玉の嵐だった。
しかし、それもなんとか橋を渡りきって突破するが、皇竜は別ルートで行こうとしてダンジョンから来たドラゴン2頭との戦闘によって阻まれてしまった。
そのため、結局ダンジョンにたどり着いたのは俺達4人の勇者とそれに付き従った十数人の仲間達。
そこで目にしたのは、
「よくまぁ、あの砲弾と地雷の嵐を越えてきたもので」
死んだはずのテツオが数人の仲間を引き連れて目の前に立っていた。
「テツ、なのか?」
「・・・嘘、だろ?」
「マジかよ・・・」
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
そのため、俺達は呆然として動けなかった。そんな中、彼は自己紹介をする。
「今は、この巨大なダンジョンのマスターをしている冥皇竜のハデスだ。お見知りおきを」
そして俺達は、呆然としながら質問をするがそんなことはお構いなしに俺達の仲間は怒りを彼にぶつけ、彼の答えを否定する。
そして自分達と相容れないことがわかると、その仲間達は彼に攻撃しようとして防がれた。
「させない!」
「な!?」
「生憎、ウチラのダンジョンマスターを殺されたくないんでね」
「邪魔するなぁ!!」
そう言って俺達の仲間は、彼の仲間であろう奴らと戦いの戦端を切った。だが、俺達はテツオがダンジョンマスターであるという事実の衝撃から抜け切っていなかった。
「どうした?戦わねえのか?」
「戦うって!どうしてテツが生きてるんだ!」
俺がそう言うと、テツオは狂気の笑みを浮かべてこう言った。
「生きている?違うな、俺はこの世界に生まれ直したんだ」
それを見た俺達は、かつてのテツオはすでに死んだのだと理解した。理解したからこそ、例えそれがかつての友達の姿形をした存在でも戦わないといけない、という感情が高ぶった。
「テツ、俺達も行くぞ!」
「おう、とっとと来いよ」
お互いにそう言って、戦いを始めた。圧倒的なステータスの違いを見せつけられるまでは。
まず、一般的な戦いというのは弓兵を後ろに下げて戦うというやり方だ。この方が各自の間合いを取りやすい上、一番安定した戦いが出来るからだ。そのため、弓の勇者であるタカミツを後ろに下げて盾の勇者の俺と槍の勇者のマサヨシ、剣の勇者のトシヒロが前に出る陣形を取った。
だがその配置についた瞬間、ドゴン!という鈍い音とともにテツオの姿は消えた。その直後、彼の声が後ろから聞こえた。
「なんだ。勇者と言うからそれなりに強いのかと期待していたが、期待はずれだったなぁ」
その声が聞こえた方に、俺達は恐る恐る振り返ってみると彼の足元にはタカミツが倒れていた。
「どうした?そんな鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をして。あぁ、そうか。俺が強すぎるんだったな」
そう言われて、今更だが俺達は急いで彼のステータスを見た。すると、
「10億、だと・・・?」
「そんなバカな。限界値は1000万のはずだぞ!」
「こんなこと、ありえるのか!?」
「黙れ、ザコ勇者ども。貴様らがいくら騒いだ所で事実は変わらん」
動揺する俺達に対して、テツオは諭すようなな口調で言った。しかし、彼は挑戦的な口調でこう言った。
「圧倒的な力の差を見て、貴様らは逃げ出すのかな?それとも命乞いかな?」
「ふっ、ざけるなぁぁ!」
「ま、待て!」
そう言って彼の懐に突っ込んだのは、槍の勇者であるマサヨシだった。だが、すぐに足を蹴られて転ばされたの同時に脇腹を蹴られて10メートル以上も飛んだ。
「勇敢に戦うつもりならば、もう少し冷静にならねば蛮勇になってしまうぞ?」
彼はそう言いつつも、次の目標を残った俺達に定めた。
「さて、やろうか。この絶望的な力の差を体感しながらな」
そう言って、彼は俺達の自信やプライドを完全に打ち砕くまで戦いという名の殺戮を続けた。
~~~~~~
そうだった。俺達はテツオに負けたんだったな。圧倒的な実力の差を見せつけられて、何度も攻撃をしてもすぐに回復される上に攻撃自体も殆ど効かなかったっけ。
俺はそんな事を思い出して情けなく笑っていると、
「出ろ!」
牢獄の扉が開き、出るように促される。どうせ、同じような尋問だろうと思い、その場で動かずにいると二人の看守が入ってきて無理やり外に出される。
そして暫く歩いていると、目の前の部屋の扉が開いてマサヨシが出てきた。
「マサ!無事だったのか!」
「サトル、生きていたのか!?」
お互いに生きているということを確かめあった後、マサヨシが出てきた部屋に案内される。
「よぉ」
「テツ!?何故、お前が」
部屋には、テツオが1人でコーヒーブレイクしているだけだった。
「まぁ、座れよ。話はそれからだ」
「・・・」
部屋にはテツオしかおらず、隠し扉やそういった類の物も気配からは感じ取れない。
そのため、俺は怪しみつつもテツオと対面するように設置してある席に付いた。
「さて、先の戦闘では申し訳ないことをした」
「なっ・・・!」
そう言ってテツオは、頭を下げる。
その拍子抜けした行動に、思わず俺は変な声を出してしまった。だが、そこから感じ取れるテツオは昔と変わらない彼だった。
「顔を上げてくれ、テツ」
そう言ってテツは顔を上げる。
「仕方ないじゃん。テツにもテツの立場があって行動していたんだろう?だったら俺はそれを攻める気にはなれない」
「そう言ってもらえると助かる」
そう言って彼は、俺が知っている顔になった。
「それでテツ、話ってのは何だい?」
「あぁ、それは・・・」
話を聞くと、彼の国に協力してくれるのならある程度の生活の保証をするとのことだった。反対に、この国と敵対し続けるのなら斬首もやむなし、との事だった。
「それで、俺の仲間達はどうなっているんだ?」
「反応は半々だったな。信仰に対して献身的な態度を持っている奴らは従う気はないし、勇者達と行動したい奴らは聖光教団と敵対してもいいとのことだった」
「なるほど・・・」
俺のパーティでも宗教に熱心なやつはいた。だが、あまりにも過剰すぎて俺でも持て余していたところだったのだ。
「それで、従わない奴らはどうするつもりだ?」
「そのまま、処刑場に直行してもらい、処刑するつもりだ」
「生かして帰すつもりはないのか?」
「ないな。なんせ、ダンジョン内部に入ったからな」
俺が野暮なことを聞くと、テツオは普通に答えた。
となれば、俺の行動は決まっている。
「テツ、俺は聖光教団としての勇者を辞めてテツの所で働くよ」
「・・・いいんだな?それで」
テツオは、真面目な顔でそれを聞いてきた。
「構わない。元々、強制的に戦わされた身だからな」
「んじゃ、交渉成立で」
テツオがそう言うと、右手を出してきた。
俺も、右手を出して固い握手をした。これで交渉成立した証拠だ。
その後、他の勇者であるタカミツやトシヒロ、マサヨシも同じような考えを持って彼の所で働くことになった。
また、宗教に熱心なやつらは処刑台で処されたが、それ以外のメンバーは俺達と行動するため、それまでの肩書は捨てて一緒にこの国で働くことになった。
そうすることで、今まで見逃してきた出来事を見逃さずに済むかもしれない。
そう思って、俺達はこれからも生きていく。




