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旧友との再開!?

第7話 宗教戦争 前哨戦


「な、何が起こっているのだぁ!?」

 そう叫んでいるのは、聖光教団の軍団の前衛で指揮をしていた騎馬隊の指揮官だった。彼らは、敵の城壁から5キロという地点から謎の攻撃を受けていた。

 それもそのはず、その謎の攻撃こそ冥皇竜が今の今まで設置してきた榴弾砲の攻撃なのだが、彼らにとってはそんなことは知る由もない。だが、その場に居続けたら死ぬことぐらいはわかる。

 そのため、

「て、撤退だー!てった・・・ぐわぁ!」

 指揮官が撤退命令を出そうとしたところで、近くに榴弾砲の砲弾が爆発して手足が四散しながら即死した。しかし、この騒ぎは部隊の前衛だけではなく、中衛や後衛でも起きていた。

 203ミリ榴弾砲の最大射程は20キロ強なので、その射程内にいた兵員の多くが標的になり、砲撃開始から2時間程度で損傷はすでに半分以上に及んでいた。されどそれは、軍全体の前衛部分にいた部隊に限ってのことなので中衛や後衛にいた約20万の兵力は唖然とするしかなかった。

 彼らが唖然としている中、格好の獲物とばかりに後衛から襲い掛かる空を飛ぶものがいた。

 それはサンダーボルトⅡで、近接航空支援のために上空から猛禽のごとく接近して爆撃をしていった。そのため、中衛にいた軍は前後の軍に押し潰される形になり、陣形を維持することが困難になっている。

 そんな中、前方での砲撃が終了したことで好機と思った中衛の指揮官は、

「突撃せよ!」

 自分の理解の超えた戦場で混乱し、感覚が麻痺したためにそんな無謀な作戦に出た。ただ単純に弾切れのため、給弾に勤しんでいるのにも拘らず。


~~~~~~


 第3の壁 北門前、前線司令部


「ここまで来るとかわいそうに見えてくるのぅ」

「マスターの前世では、戦争時になればこういうのが普通の光景なのでしょう?」

「というよりも技術力の違いから来てますね~。あんな鋼鉄の鳥が空を飛び、爆発物を落としつつも鉛玉の雨を降らせているんですから」

「何をせっせと召喚しているのかと思いきや、あんなのを作っていたなんて・・・」

 バエル達がいるのは前線司令室であり、防衛にあたっている兵器達の陣頭指揮を取っている。とは言え、榴弾砲や攻撃機のコントロールを彼女達が行っているのではなく、ホムンクルス・ゴーレム達が直接乗ったり、標準を合わせたりしている。

 何故、量産が効くワイトでやらないかというとワイトキングから出る単純な命令しか聞けないからだ。その分、ホムンクルス・ゴーレムはワイトに比べてかなりの魔力を使って召喚するが自分で学習して自分で行動できる大変優れたゴーレムである。

 しかも冥皇竜によって人型のゴーレムで召喚されるため、彼の前世にあった兵器とは相性がいい。弾薬や爆弾が切れたらダンジョンに向かって飛んで行き、空中に浮かぶ黒い穴のような所にそのまま入ると弾薬や爆弾が補充されているし、地上から受けたダメージも回復するし、ゴーレムだから基本は疲れを知らない。

 とは言え、動き続けたらその分の魔力が必要になるが黒い穴に入ればその魔力も自動的に回復するため、実質的には半永久的に飛び続けることが出来る。

 そのため、この戦いは冥皇竜たちの圧勝に思われた時、観測機からの連絡が入った。

「何?十数人の男女がこっちに向かってきてる?」

「んー?」

 4人が観測機から送られてくる画像を見ると、そこには巧みに砲撃を避ける人達がいた。敵の前衛はこの砲撃でほぼ壊滅したため、地面はかなりデコボコしているがそれをも介さずにこっちに向かってきている。

「むー、まずいですね。このままでは城門を突破されちゃいます」

「とは言え、このまま撃ち続けても意味は無いじゃろうのぅ」

「砲兵隊に連絡するー?」

「そうね、このままでは埒が明かないから一旦、地雷原まで進ませるよ?」

「あいあい~、よろしくです~」

 パイモンは、彼女のマスターである冥皇竜の言っていたのを思い出した。


『個人差はあるが、人間というのは基本的に弱い生き物だ。その人間が、他の生き物を圧倒できる道具といえば俺が生産しているこの兵器しかない。この兵器のいい所は射程が長く、音と光によって相手をびっくりさせるために道具でもある。

 逆に欠点と言えば、その射程の内側である発射口の横から所有して撃っているまでの距離だ。その距離に入られたら、基本的には只の重りになってしまう。だから、距離には気を付けてくれ』


(む~、彼の言っていたことはあながち間違いではありませんね~。大砲の弾が爆発する直前にはその爆発距離から出ていますし、地雷原でもどうにかなるものか・・・。こうなったら市街地戦に持ち込むしかないですね。彼は嫌がりますが)

 パイモンの考えていることは間違いではなかった。地雷というのは、地表や地中の浅い所に置かれている爆弾のことであり、爆発してその爆風などが届く距離はその地雷に入っている火薬の量で決まっている。

 そのため、対象となる物が高速で動いている状況で近くで爆発させるのには、前もって予測される進路に打ち込むしかないが常に進路変更して移動しているため、決定打がなかったのだ。

「仕方ないですね、マスター」

『はいよ、パイモン。状況はこっちでも把握している』

「なら話が早いです。実はですね・・・」

 軍師としてのパイモンは、ダンジョンの総大将である冥皇竜に自分の策を提案した。


 ダンジョンコア・フロア 執務室


「つまり、そいつらと戦いになるかもしれないから俺も前に出ろ、と?」

『はい~、どうでしょう?』

 俺は、観測機の映像とパイモンの進言を一緒にして考えてみた。

(敵は明らかに、爆発直前に避けるように爆発範囲から出ている。現在では砲撃をやめて一気に城門に向かわせているとなると、それほど時間は掛からない速度だ。パイモンの進言では一旦、城門を通らせてから後続の軍隊と切り離すために城門を潜らせると言うもの。正直言って、この作戦にはあまり乗り気じゃないが・・・)

「了承した。すぐに向かう」

『ありがとうございます~』

 お互いにそう言ってから通信を切って、片方は出撃準備に入り、もう片方は総大将を向かえ入れるための準備に入った。

「サガン、ズライグとグイベルに戦闘の準備をして北門に来いって言っておいて」

「わかりました」

 俺は脇に控えていたサガンに言うと、サガンはすぐに行動に移してくれた。

「あぁ、それと・・・」

「はい?」

 ズライグ達を呼びに行こうとするサガンを俺は呼び止めた。

「サガンにも来てもらいたい」

「そうしたらここの守りは薄くなのでは?」

 俺がそんなことを言うと、サガンは驚いた様子でそう言った。

「なぁに、そんな状況にまでなっていたらとっくに俺達は死んでいるよ。大丈夫だ」

「・・・」

 俺がそう言うと、サガンはとても心配そうな顔になった。

 え、何?そんなに心配されるようなこと言ったの?俺。


「来てくれましたか、マスター」

「そりゃあ、来るよ。一大事だもの」

 そんなやり取りをしながらも結局、サガンも一緒について来てくれた。

「それで件の高速人間はあれか」

「はい~、かなりの速さですよ~」

 そう言って送られてくる映像を確認すると、かなりの速さで向かってきているのがわかる。

「彼らの現在の距離は?」

「5キロ弱、といったところですね~。このまま行くと、後10分もしない内に到着する計算です」

 パイモンが言った通り、実際に気が付いたのが壁から10キロ以上の距離でそれから10分程度で俺は前線司令部に到着した。そのことから考えても10分も掛からないで城門に到着する。

「・・・地雷原に突っ込んだら周囲にある地雷を一斉に爆発させて。それである程度のダメージを当たる」

「わかりました~」

「ズライグとグイベルに連絡。ドラゴンの形態になって上空待機、彼ら以外で強力な敵が現れたら応戦をさせろ」

「はいは~い」

 これで打てる手は全て打った。後は、彼らが地雷原に突っ込んで勝手にくたばってくれることを祈るしかない。そう思いながら外に出ると、二頭の赤いドラゴンと白いドラゴンが来て上空を旋回し始めた。どうやら、ちゃんと報告を受けたらしいな。

 そうしていると、城門の方から連続した爆発音が聞こえた。

「状況報告!敵は地雷原に突っ込んだ様子!しかし・・・」

「しかし?」

「敵はなおも侵攻してきている模様!」

「・・・やっぱりか」

「は?」

「いや、こっちの話だ。引き続き観測を怠らないように」

「は!」

 報告を受けた俺は司令室に戻り、バエル達のそのことを伝えた。

「やっぱりですね~」

「敵もしぶといところがあるのぅ」

「となればやっぱり・・・」

「やっと実戦ね!腕がなるわ!」

「マスター、命令を」

 こうなることは彼女達にとっては驚くことのものでもないようで、逆に召喚されてから初めての戦闘で気分が高まっているようだ。こうなったら、俺も腹を括るしかないな。

「・・・全員、戦闘配置」

 俺がそう命令すると、彼女達は喜び勇んで司令室を出ていた。だが、バエルだけはみんなが出た後で扉を閉めて俺にこう聞いてきた。

「どうしたんです?マスター。そんな浮かない顔をして」

「やっぱり分かるんだろうか?」

「考えが表情に出やすいマスターですからね」

「ははっ、違いない」

 バエルに理由を聞くと、そんな答えが帰ってきた。どうやら、俺の思っていることが表情に出てやすいらしい。そんな答えが来るってことは、ちゃんと理由を言わねえと納得出来ないってことだな。

「今、地雷原を突っ切っている奴ら。あいつらは俺の友人だった」

「・・・」

「ここ数週間、教団によって勇者の召喚に成功したっていう噂を聞いた。だからゴーレム達に教団の本部を探らせてみたら案の定、どうしても彼らに行き着いてしまう。そして彼らは、魔王やその軍団を殲滅するために召喚されたと言うじゃないか。

 つまり、教団にとって俺達が魔王として都合のいいように認定されてしまったら、彼らとどうしても戦わないといけない。という事は、少なくとも1回は彼らと戦わなきゃいけないんだ。正直言って、俺は今の彼らと戦うことはあまり気乗りがしない」

 俺が心の中をバエルにぶつけると、彼女は何も言わずに聞いてくれた。そして彼女はこう言った。

「それでもマスターは戦いに出るでしょう」

「そうだな。それが俺の使命であり、責務でもある」

 俺の発言を聞くとバエルは満足そうに頷いて、

「なら、私はもう迷わない。マスター、もう一度、命令を」

 覚悟を決めた顔で俺にそう言ってきた。

「パエルに命令する。彼らを徹底的に無力化して殲滅せよ。これは最優先命令であり、そのためになら、かなりの手荒い洗礼を与えてもいい」

「それを聞いて安心したよ。マスター、貴方は優しい人だ」

 俺の命令に納得した様子のバエルは、俺の手を取って自分の頬に当てた。

「本当にお優しい方。私達のような、異形で化物と言われかねないほどの強力な魔神に愛というものを与えてくれた。そして、己の苦しみを人に擦り付けることもせず、ただ実直に任務を全うしようとしている。そんな貴方の下で働けることを光栄に思います」

 そんなことを言うバエルの顔は、とても優しく慈悲深かった。

「だから、その苦しみを共に背負って戦いましょう。そしてこのダンジョンを、私達の家を壊そうとする者達を殲滅しに行きましょう」

 そうか、これが仲間というものか。前世では、今の勇者とされている奴ら以外にはそういった感情が生まれてこなかった。寧ろ、友人とか仲間とかそういった言葉で相手の隙を狙って物を掠め取っていく奴らが、俺の周りには多かったから信用できなかった。

 だが、彼女達は違った。こんな俺を、(あるじ)と認めて共に歩んでくれる。それだけでとても嬉しい。

「あぁ、共に行こう。俺達の家を守りに行こう!」

「はい!」

 俺がそう言うよ、バエルは嬉しそうに返事をした。


~~~~~~


「5分遅れです~」

 俺とバエルが戦場になる北門前に到着すると、パイモンが不満げに言ってきた。

「すまんすまん、ちょいとばかし話し込んでいてよ」

「まぁ、初めての戦闘じゃし、それは致し方ないというものじゃ。だが、敵はもう目の前まで来ておるぞ」

「・・・」

 どうやら本当のようだ。事実、門の両脇に設置してある機関銃群の発砲音が続いて聞こえるが、あまり効果が見られないように聞こえる。

「城門突破は避けられませんね」

「ええ、実際に縄文の前の橋を半分は渡りきってるしね」

「それは本当かい?アスモダイ」

「ええ、見てて」

 俺が城門を見ていると、派手な爆発音とともに上下に移動する城門が町の方に吹っ飛んで行った。あれは修理するのに大変そうだ、と思いつつ、突破された城門の方を見ると勇者を含めた10人ほどの集団が現れた。

「あれがそうか」

「そうみたいですね」

 バエルと会話をしつつ、彼らの様子を見るとかなりボロボロになった装備が見える。どうやら、砲弾の爆発には対応できたが地雷による爆発までは避けれなかったようだ。それだけ、大量の地雷を城門の周囲には設置しておいたのでそれを全部避けるのは不可能なものだ。

「砲撃による攻撃よりも、地雷による面攻撃のほうが効果的だったようだな」

「砲弾は発射した後、次の装填にある程度の時間がかかりますからね~」

「後はあいつらを潰せば大丈夫ってことね」

「そうだな」

 そう言って俺達は、彼らの目の前に姿を表した。

「よくまぁ、あの砲弾と地雷の嵐を越えてきたもので」

「テツ、なのか?」

「・・・嘘、だろ?」

「マジかよ・・・」

「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」

 四者四様な反応が帰ってきたがそれは置いておき、話を進める。

「今は、この巨大なダンジョンのマスターをしている冥皇竜のハデスだ。お見知りおきを」

 俺がそんなことを言うと、4人の勇者は呆然としながらも質問をしてきた。

「じ、じゃあ。諸悪の根源たるダンジョンを作って、魔王とも繋がりがあるっていうのは本当か?」

 魔王との繋がり、ねぇ。俺がパイモンに目線を向けると、彼女は首を横に振った。

「魔王との繋がりについては全くの冤罪だが、ダンジョンを構築して防衛に当たらせているのは本当だ」

「嘘だ!」

 俺がそう言うと、槍を持った勇者の近くにいた女性が叫んだ。

「だったら何故、我々の教義に従わないのか!」

 どうやら彼女は、熱心な信者のようだ。そんな彼女に対抗するには・・・。

「そこにいる勇者達と同じように、俺も異世界から来たものだからねぇ。従う理由がない。と言っても、彼らと違う点はこの世界に転生したって部分かな」

「・・・っ!」

 俺がそう言ったら、その女性はぐぅの音も出ない様子だった。一方、剣の勇者の側にいた女性が高質問した。

「で、では、教義に反するとして我々がまた攻めに来たら・・・」

「その時は今日のような出来事が起きると思っていただきたい」

「なっ!?」

 それは、こちらからは攻めることはないが攻めてきたらそれ相応の反撃をする、という俺からの意思表示だった。それを聞いた勇者以外のメンバーは、こう言った。

「つまり、戦うしかない、ということですね」

「まぁ、そうなるな」

 俺がそう言うのと同時に、そのメンバーは一斉に動き出して俺に攻撃を加えようとすると、

「させない!」

 後ろに控えていたバエル達がそれを阻止した。


 こうして、勇者対冥皇竜との戦いは幕を開けるのだった。

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