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エッセイなんて書いられるか!

親愛なる友人Aへ。

 いつかのワークショップで、私がポニーにお尻を噛まれているとき、横で大爆笑していた君を私は決して忘れないだろう。

 同日。君はラマに鎖骨の上を甘噛みされて、まるでキスマークみたいになっていたね。後に恋人に誤解され、大喧嘩になってるのを横目に、私は君を内心で指差して笑っていました。

 浮気相手がラマ(♂)なんて業が深すぎると思うんです。やはり君は天才だった。

 そんなケモナーな君にこのエッセイを捧げます。

 ただ、最後に一言だけ謝罪させてください。


 後書きへ続く。

 エッセイを書いてくれ。

 と、数少ない友人の一人から依頼があった。

 何故急に。と、私が問えば、お前のエッセイが見たいから。とのこと。酷い理由があったものである。

 友人……ここではAとしよう。Aは本サイトには登録せず、ひたすら色々な作品を漁っては、携帯のブックマーク機能に保存して読む。という人である。

 本サイトにてチマチマ作品を書いている私からすれば、そんなステルス読者がいるという事に感動半分驚き半分だったわけだが、ここではそんな私の感性など果てしなくどうでもいいので、捨て置こう。

 ともかく、一読者として私を応援してくれている人からの頼みだ。いい機会でもあるし、実は誰かに依頼されて書く。何てシチュエーションは初めてなので、少しワクワクしてたりもした。


 という訳で、この度は拙いながら筆を執らせて頂いた次第である。

 が。そこで私は、致命的な壁にぶち当たった。


 ……エッセイって何だ?


 恥ずかしながら、ほにゃらら年生きておいて、私はエッセイが何かを知らないという、わりと恥ずかしい事実を掘り出してしまったのである。

 知らぬは恥。聞かぬはもっと恥。

 そんなニュアンスの言葉を何処かで聞いたことがあった気がするので、誰かに聞く。もとい答えを得るべく、私は猪口才にも文明の利器を利用した。鵜呑みにしない程度であれば、インターネットこそ神であると私は思う。

 という訳で、早速エッセイと入力し、検索をかけてみた。


 随筆ずいひつとは、文学における一形式で、筆者の体験や読書などから得た知識をもとに、それに対する感想・思索・思想をまとめた散文である。随想ずいそう、エッセイ、エッセー。


 出典、Wikipedia。



 成る程。わかるようでわからん。

 ようは何を書いてもいいということだろうか。散文とか書いてるし。(〝まとめた〟という部分は目に入っていないらしいです)


 読書や体験。これは、今から本を読むのは面倒なので、僭越ながら私自身の体験談で書く事にする。


 一応奇妙な体験ならば結構な数のネタがあったりするのである。

 さて。何について書こうか。



 部屋に泊まりにきた友人が、「助けてくれ、金縛りにあってる」と、言いながら、ベッドと壁に挟まれて動けなくなっていた話か。


 座敷で従兄弟とカードゲームをしていたら、誰もいない筈な襖の向こう側に女の人の影が映り、二人で震え上がった話か。


 かまくらを作ったら崩れてきて生き埋めになり、ガチで凍死しかけた話か。


 家の前に雑巾が捨てられていると思ったら、腹ペコで動けなくなった犬だった話か。(後に飼い犬になる)


 飼っていたオタマジャクシが皆蛙になり、家中を跳ね回って心がピョンピョンした話か。


 飼っていたオウムが奇想天外な言葉ばかり覚えて困った話か。


 山に入った時、目も眩む程に真っ白な熊を遠目で目撃した話か。


 リアルモンスターマスターな祖父の話か。


 山で遭難した時の話か。


 誘拐された時の話か。


 長年付き合った恋人に突然別れを告げられた話か。


 また別の恋人が、目の前で別の人とまぐわっているのを見てしまった時の話か。


 既婚者の不倫相手にされかけた話か。


 家出少女と意気投合し、語り明かした話か。


 失望した話か。


 絶望した話か。


 骨を拾った話か。


 何十個という頭蓋骨を見てしまった話か。


 指先を貪り喰われた時の話か。


 狂っていく人を見ていた。見ていることしか出来なかった話か。


 殺してくださいと頼まれた時の話か。


 生きた屍達の話か。それとも……私が自身が生ける屍なのか。


 あ、帰り道で揚げパンかじってたら一緒にトンボも食べてしまった秋の夕暮れの話も悪くない。


 大嫌いな女教師に自前のゲロをぶっかけて興奮を覚えていた、旧友Bの話でもいいかもしれない。


 

 

 


 さぁ、何を書こうか……。

 そこまで考えて、私はふと、電撃を浴びせられたかのような衝撃を受けた。

 人は時に、全てが終わってから悟ったかのように何かに気づく場合がある。今の私が、まさにそれだった。


 ここまでの文字数。約1500少し越え。

 何ということだろう。何ということだろう。


 こんな散文書いてる暇があったら、連載中の自分の小説を進めるべきではないか。

 何をトチ狂ったか、現在進行する連載は長編二つ。書きたいのもいっぱい。


 なんてこった。エッセイなんて書いてられるか!


~fin~

ごめん。

やっぱり、エッセイとか無理だったよ。

でももう少しだけ頑張ってみるよ。

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