表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑指の魔女  作者: 桐央琴巳
第十五章 「対決」
45/98

(15-1)

 春女神フレイアが『生命の女神』、秋女神フィオが『愛の女神』であるとするならば、夏男神サリュートの異名は『勝利の神』である。

 象徴となる花は【夏男神の百合】(サリュートキュリスト)。初夏から夏の盛りにかけて、高原で咲く気高い白百合だ。サリュートというのはまた、デレスを建国した英雄王の名前でもあり、この二つの理由からサリュートは、剣を持った勇壮な青年の姿で描かれるのが常であった。

 シュレイサ村教会の聖堂を飾る、ステンドグラスに表された青年神もまた、その例に漏れず剣を掲げ、清冽な白百合に囲まれていた。



*****



「いかなる理由がありましても、本当は争いを認めたくはありませんがの」

 エルフォンゾは少し悲しげに目を細めながら、手にした小瓶の蓋を開けた。

「あなたに、サリュートの御加護があらんことを、ランディ」

 祝福を与えながらエルフォンゾは、小瓶の中身である聖水を、祭壇の前に跪いたランディの頭上で振り撒いた。

「願わくは、あなたもエルアンリ様も、共に一筋の血も流されることの無きようにの」

「極力努力致しましょう。命を奪い合う為に交える剣ではない」

 老牧師にそう答えて、ランディは立ち上がった。

「ありがとうございます、牧師殿」

 殊勝に頭を下げながらも、その瞳は強く輝いている。身の内に炎を燃やしながら、ランディは驚くほどに落ち着き払って見えた。


 通常であれば聖堂は、子供たちの教室になっている時間だが、決闘騒ぎによる混乱で、今日の授業は取り止めになっていた。シュレイサ村教会の石造りの聖堂には、ヴェンシナとラグジュリエ、それに昨日結ばれたばかりのカリヴェルトとシャレル夫妻の他に、野次馬も大勢詰め掛けていたが、誰一人としてランディに声をかけようとはしなかった。

 ランディが生まれながらに持つ、侵しがたい存在感。見るものを圧倒するような近寄り難い雰囲気が、微笑まぬ彼の周囲を色濃く取り巻いていたからだ。


「そろそろ時間のようだ。失礼する」

 ランディは白いマントを捌いて、聖堂の外へと向かった。昨日喜びに溢れていた花嫁の道は、今日は闘いへ赴く騎士の、緊迫した勝負への道となっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ