(13-4)
夕闇に紛れて、ランディとヴェンシナは、村長の家にフレイアシュテュアを送り届けた。
幾分残念そうに見えるサリエットと共に、三人を出迎えた村長は、ランディに疑るような眼差しを向けた。
「フレイアを無事に連れ帰って下さったことには礼を申し上げる。しかし……もしやこの娘に、何か不埒な振る舞いをなさっておいでではなかろうな?」
村長の言葉に、フレイアシュテュアがふと頬を赤らめた。それは思いがけないことを聞かれた初心な娘の恥じらいにも、何か事があった示唆のようにも見えた。ランディは意地悪な気持ちを抱いた。
「した、と言えばどうする? エルアンリではなく私に、フレイアをくれるというのか?」
「ランディ!?」
ヴェンシナが非難の声を上げた。一体何をしたのだと問い詰めんばかりの勢いだ。
「それは……」
堂々とした答えに、口ごもる村長に満足して、ランディはフレイアシュテュアの背中をそっと彼らの方へと押し出した。
「冗談だ、今日のところはあなた方にお預けする」
そうして彼女の身柄を受け取った、村長の娘の名前を呼ぶ。
「サリエット」
「なあに? ランディ?」
「フレイアを頼む。君の家にいる間、村長の言う『不埒な振る舞い』とやらに、エルアンリが及ばないようしっかりと見張っておいてくれ」
フレイアシュテュアの頬が羞恥でさらに紅潮した。サリエットは肩をすくめた。
「仕様がないわね、高くつくわよ」
「代価は何がいい?」
「そうね、明日、エスコートして頂戴。ランディと一緒ならみんなに自慢できるわ。本当はヴェンにお願いしたかったんだけど、ヴェンはシャレルの介添えで忙しいものねえ」
ワクワクする気分を抑えきれずに、サリエットは楽しげに答えた。
妙に落ち着き払ったランディ、逆にそわそわとしているヴェンシナ、頬を紅く燃やし続けているフレイアシュテュア――。その三者三様の姿に、サリエットは波乱の香りを嗅ぎ付けていた。明日はきっと、何かが起こるに違いない。嵐の目となるのは、おそらく彼――ランディだろう。
「承知した。式の前に迎えに行こう」
苦笑するランディに、サリエットは高飛車に答えた。
「結構よ。朝からエルアンリ様と鉢合わせして欲しくないし、フレイアの代わりにシャレルの支度を手伝ってあげるつもりだから、あたしから教会に行ってあげるわ。感謝しなさいよね」
「ああ、感謝する、サリエット」
ランディの笑いが、人を魅する温かな微笑みに変わった。見る者の心をふわりと包み込むような、ヴェンシナがどうしても抗えない、大らかな笑顔である。
「やあねえ……、それはちょっと、ずるいわね」
どきりとしながらサリエットは、潤んだ瞳で一途にランディを見つめているフレイアシュテュアが、彼に惹かれてやまぬ気持ちをどうしようもなく理解した。フレイアシュテュアのような幸薄い娘に、この笑顔を向けるのは、はっきり言って罪というものだろう。




