1-8
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
マリアたちと合流した信也は、アムルタートと名乗った王子から話を伺っていた。
アムルタートと信也の2人を見たマリア、リズワーン、リズクの3人は驚愕した。
「似ているというものじゃないわね」
マリアが2人を交互に見ながら、第一印象を口にする。
「はい。双子と言われても納得します」
リズワーンも納得する。
「シンヤさんの方が1番です」
リズクが断言する。
「王子の方が1番です!」
黒髪の少女が声を上げる。
「シンヤさんが1番です。だって、優しくて思いやりがあって、こんな優しい人大陸中どこを探してもいません!」
リズクが咆える。
「それは王子です!こんな優しい人、世界中どこにもいません!」
黒髪の少女が負けじと言い返す。
「シンヤさんです!」
「王子です!」
リズクと黒髪の少女が火花を散らす。
「あ、あの、シリン。もういいから」
「リズク。嬉しいけど、張り合うところじゃないから」
信也とアムルタートが2人の少女を落ち着かせる。
ちなみに、大人連中はこの光景を見て、ため息を吐く。
「シリン。主を思う気持ちはわかるが、それでは、子供の喧嘩だぞ」
20代後半の騎士が窘める。
シリンと呼ばれた黒髪の少女は、そこで、はっとなり、頭を下げた。
「申し訳ございません。王子、クルオド様」
「それでお前たちはどこに向かっている?」
20代後半の騎士、クルオドが信也たちに問う。
「俺たちは南に向かっています。南部の集落群が盗賊の被害が甚大で、討伐依頼が来ましたから」
「そうか」
クルオドは腕を組んだ。
「僕たちと同じだね」
アムルタートが言う。
「そうなのですか?」
信也が少し驚いた表情で尋ねる。
「詳しい事は話せないけど、目的地は一緒だよ」
「そうでしょうね」
アムルタートの言葉に信也は納得したようにうなずいた。
(おおかた、身内の人間が盗賊で、その調査か抹殺のどちらかだろう)
そんな事を推測しながら、信也は1つ疑問に思った。
なぜ、騎士は理解できるが、王族の人間が来る意味がわからない。
「貴公は先ほど王子だと言いましたね?」
信也はダメ元で聞いてみた。
「言ったよ」
「なぜ、このようなところに王族ともあろう方が、いらしゃるのですか?」
信也の質問にクルオドは苦笑した。
「僕は王宮にいるのが、あまり好きじゃないんだ。だから、こうして、護衛を連れて旅をしたり調査したりするんだ」
「おい!呑気に話している暇はなさそうだぞ!」
クルオドが剣の柄を握り、いつでも抜剣できる姿勢をした。
「王子!」
クルオドに遅れてシリンが抜剣する。
信也も64式7.62ミリ小銃を構える。
彼らの視線の先には、いつの間に現れたのだろう、体長5メートルぐらいのカメレオンが数匹いた。
「シンヤ。その魔法はまだ使えるか?」
「まだまだ余裕です」
クルオドの問いに信也は即答した。
「行くぞ!」
信也は1匹のカメレオンの怪物の頭部に照準を合わせて、引き金を引く。
64式7.62ミリ小銃の銃口が火を噴き、7.62ミリ弾が飛び出す。
怪物の頭部を貫き、破壊する。
「まず、1匹」
信也が1匹を仕留めると、2匹目に照準を合わせる。
引き金を引き、乱射する。
体長5メートルだけあって、急所にでも当てないかぎり、仕留めるのは難しい。
「まったく、普通のサイズのカメレオンは何とも思わないが、ここまででかいと、さすがに気持ちわるいな・・・」
信也がそうぼやきながら、冷静に頭部に照準を合わせて、弾丸を撃ち込む。
2匹目も仕留めた。
「その魔法、すごいな」
クルオドが感心しながら、剣を怪物の口の中に突き刺した。
皮膚が固いため、剣や弓では貫く事はできない。このため、巨大カメレオンを倒すには、口の中に矢を打ち込むか剣を口の中に入れ、そのまま突き刺すしかない。
熟練の騎士でなければ、できない芸当だ。
クルオドは1匹の巨大カメレオンを倒す。
信也は3匹目の巨大カメレオンを倒しているところだった。
4匹の巨大カメレオンが絶命した後、残った巨大カメレオンが不可解な行動をとった。
まるで、誰かに呼ばれているかのように顔を上げ、その後、駆け出し、どこかに行った。
「終わったの?」
後ろに控えていたマリアがつぶやく。
「・・・なるほど」
信也たちがいる馬車からある程度の距離に黒いフードを被った2人がその光景を眺めていた。
1人は剣を2本吊るしていて、もう1人の肩にはどういう訳かHK416をかけている。
「あの男、お前と同じ飛び道具を使っているが、知っている奴か?」
剣を吊るした男が問う。
「腐れ縁だ」
「そうか」
HK416を装備する男の言葉に剣を吊るした男がうなずいた。
「どうする。仕掛けるか?」
剣を吊るした男が言う。
「クラウド。奴がいる以上、俺たちだけでは骨が折れるぞ。暗殺はまたの機会だ」
「ちっ、相変わらず貴殿は慎重だな。だが、今回は俺もそう思う」
クラウドと呼ばれた男はフードを脱ぎ、傷の跡がある顔を見せた。
「出直すぞ」
クラウドと同じく、フードを脱いだ青年は木の枝から飛び降りた。
2人はそのまま踵を返し、森の奥へと姿を消した。
青年は1度振り返った。
「お前も、この世界に来たんだな・・・」
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