1-5
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
ドン!ドン!ドン!
カリュ―村から離れた森の中の開けた場所で、信也は64式7.62ミリ小銃の試射を行っていた。
3発発砲した後、安全装置をかけ、双眼鏡を覗き、的にした木を見た。
「いい感じだな」
さすがは64式7.62ミリ小銃と、言ったところだ。
もっとも伏せ撃ちの状態で、命中しないのは下手を通り越して才能がないと言わざるを得ないが。
信也は双眼鏡を置き、64式7.62ミリ小銃の安全装置を解除し、連発射撃に切り替えた。
64式7.62ミリ小銃を構え、ピープサイトを覗き、狙いを定める。
息を少し吸って、吐き、止める。そして、引き金を引く。
ドドドドド!
64式7.62ミリ小銃が火を噴き、7.62ミリライフル弾を撃ち出す。
7.62ミリライフル弾だけあって、反動はすさまじいものだった。
「やはり、89式、と比べると、かなり身体にくるな・・・」
89式とは、89式5.56ミリ小銃の事だ。
「今のうちに感覚を取り戻さないとな」
信也はそうつぶやきながら、連発射撃のまま、引き金を引き、残りの残弾を使いきる。
弾倉内の弾が尽きてから、いったん休憩にする事にした。
安全装置をかけ、身体を起こす。
空弾倉を外し、信也は7.62ミリ弾を空弾倉に装填していく。彼の傍らには、薬莢が20発散らばっている。
(これが終わったら、薬莢の回収をしなければな)
「シンヤさん。お昼、持ってきたわ」
射撃訓練が一段落した後、マリアがバスケットを持って、大きく手を振りながら、現れた。
「いつも、ありがとう」
64式7.62ミリ小銃を持ち、逆の手を振りながら、応じた。
「いいえ。夫のお弁当を持ってくるのも、妻の役目」
マリアは笑みを浮かべながら、本当に嬉しそうに答えた。
「お昼にしましょう」
彼女はそう言って、敷物を敷いた。
信也が敷物に上に座ると、マリアも座り、昼食のお弁当を渡した。
野菜と干し肉を挟んだサンドイッチだ。
信也とマリアは食事時のお祈りをし、サンドイッチにかぶりついた。
「今日の昼食も、おいしい」
信也はいつものように感想を述べた。
お世辞ではなく、本当に彼女が作る料理はすべておいしいのだ。自分でも、もったいない恋人だと、思う。
「ふふふ。シンヤさんの事を思って、作ったの」
マリアは幸せそうにつぶやいた。
一夜以降、マリアは信也と一緒にいる事が多くなった。もちろん、リハビリ中も一緒にいてくれたが、その意味は大きく違う。
「これからの予定は?」
「お昼から何もないわ。この村は平和だから、みんな怪我する事もないから」
マリアは村の治癒術士だ。
この村で10年も学び、ようやく術士として認められたのだ。
ちなみに、信也は村の自警団員だ。
昼食を終えた後、信也は64式7.62ミリ小銃の射撃の訓練を再開した。
今度は伏せ撃ちから、膝撃ちに変え、射撃を行った。
マリアは射撃訓練中、その音に顔をしかめて、耳を塞いだ。
「それ、すごい音よね」
マリアは64式7.62ミリ小銃の発砲音に耳を塞ぎながら、つぶやいた。
「銃器は、どうしても音がでるからな」
信也は苦笑しながら、答えた。
だからこそ、村から離れたところで、射撃訓練をしている。
「撃ってみる?」
信也は不思議そうに眺めているマリアに聞いた。
「え?」
マリアは少し驚いた。
「私につかえるかな」
「きちんと俺の指示に従って使えば、誰でも撃てるよ」
「そうなの。これは魔法じゃないの?」
マリアは目を丸くした。
「ああ。これは魔法じゃない。武器だ。だから、誰でも使う事ができる」
そう言いながら、信也は64式7.62ミリ小銃の2脚を立てた。
「伏せた状態で、小銃を構えるんだ」
マリアの手を引き、彼女を伏せさせて、64式7.62ミリ小銃を持たさせた。
「しっかり、銃床を肩につけて」
マリアは信也の指示に従って64式7.62ミリ小銃を構えた。
「よし、撃て」
信也の言葉で彼女は引き金を絞る。
ドン!
64式7.62ミリ小銃の銃口が火を噴き、1発の弾丸が射撃用の的にしている木に命中した。
「よく、できた」
信也はマリアの肩を軽く叩いた。
少女の悲鳴が聞こえたような気がした。
「?」
信也とマリアは顔を見合わせた。
「きゃあああ!」
今度ははっきりと少女の悲鳴が聞こえた。
「マリア」
「行くわよ」
2人は駆け出し、悲鳴が聞こえた方に向かった。
射撃場から、そんなに距離が離れてないところに少女がいた。
リズクだ。
いや、彼女だけではない。4人の少年少女がいた。
5人の少年少女を襲うとしている怪物を見て、マリアが絶叫した。
「ウガル!どうして、こんなところに?」
体長2メートル半の狼と熊を合体させたような怪物だった。
マリアは自分が見ているのが信じられないという感じだった。
後からわかった事だが、ウガルは人里近くの森に出てくる事は滅多にない。普段は人が近寄らない深い森にいるのだが・・・稀に人里近くに出現する事もあるらしい。
性格はかなり凶暴。
だが、今、そんな事を考えている暇はない。
信也は64式7.62ミリ小銃の安全装置を解除し、単発射撃にする。
彼は小銃を構え、ヒープサイトを覗き、ウガルの胸元に照準を合わせる。
引き金を3回絞り、3発の7.62ミリライフル弾が撃ち出され、ウガルの厚い皮膚を貫いた。
ウガルは断末魔の叫び声を上げて、絶命した。どうやら心臓を撃ち抜いたようだ。
「リズク、大丈夫か?」
信也が64式7.62ミリ小銃を倒れたウガルに向けたまま、リズクたちに問うた。
「大丈夫?怪我はない?」
マリアも彼女たちに尋ねた。
しかし、リズクたちは目の前で起きた事が信じられないのか、呆然とウガルを見つめていた。
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